人生を変える力くれる希望に満ちた道しるべ。映画「ある少年の告白」から読み解く現在も深刻なテーマとなっている社会問題とは?

全米で大きな反響を呼んだ衝撃の実話が原作。人はなぜ、幸せを願うほどにすれ違ってしまうのかー。
本当の自分、あるがままの相手を見つめた先に、誰にも奪うことはできない真実の愛が浮かび上がる。一筋の希望が胸を震わせる、圧倒的な人間ドラマー。

存在感の演技力でゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネートされたルーカス・ヘッジズ(左)。インタビューでは、「完全にはストレートではないし、ゲイでもないし、かといって必ずしもバイセクシャルとも言えない」と答えている。

現在もアメリカの一部の地域で行われている性的指向やジェンダー・アイディンティティを治療によって変更させようとする矯正治療。この実話は当時19歳だった作者の受けた経験を綴った回想録だが、その中身は信じられないほど衝撃的で、社会問題にもなっている深刻なテーマを題材としている。

作品内では実在した矯正治療(コンバージョン・セラピー)の施設の実態が明らかになっており、LIA(Love In Action)も実在した団体となっている。

舞台は2004年の保守的で宗教色の強い米国南部地域。父親が信仰深い牧師だったこともあり、同性愛者の息子・ジャレッドを治すために矯正セラピーに参加させるのだが、その治療の実態が無残で仕方ない。
同性愛=罪、男らしさはこうあるべきなど、現在のあり方や世相などを鑑みることなく、宗教的価値観に基づく間違った解釈で「誤ったセクシュアリティの選択」を治すというのだ。

しかし、本作の恐ろしさがまさにこの部分なのです。 ジャレッドに対峙する人々は誰一人悪い人物というわけではなく、それぞれが自分の信念のもとに正しいことをしようとしていたのです。息子を思って、患者を思っての間違った観念と行動は、この映画で伝えたいメッセージのひとつだと監督自身コメントを残しています。

家族と向き合うシーン。この作品では揺れ動く家族愛も軸に展開される。社会、宗教、存在感、絶望感、戸惑い…など19歳に襲いかかる様々な恐怖と弊害が見どころ。

シリアスな人間ドラマを描きながらもこの作品は希望に満ちた最後を届けてくれます。
一部、観ているだけで辛くなってしまう場面が多々登場しますが、ジャレッドはアイディンティティと未来を見つけ出そうと懸命に闘い、彼のことを理解をしようともがく両親に涙するシーンもあります。間違いに気づき、途中からでもやり直すことができる、変わることができることを伝えてくれるのです。

この作品には数多くのゲイのキャストやスタッフが関わり、さらにニコール・キッドマンとラッセル・クロウもサポート。

セクシュアリティは選択する問題ではないし、治すものでも学ぶものでもないー。 この作品は、まさに変わりゆく時代の中で根強く残っている偏見に警鐘を促すと共に、「受け入れる」ことの大切さを教えてくれます。だからこそLGBT当事者だけでなく、子を持つ親やその周りの方々にもぜひ観てほしい作品です。

映画:ある少年の告白
全国ロードショー中

ストーリー / アメリカの田舎町。牧師の父と母の一人息子として愛情を受けながら、輝くような青春を送るジャレッド。しかし、“自分は男性のことが好きだ”と気づいたとき、両親に勧められたのは、同性愛を“治す”という危険な矯正セラピーだった。自らを偽り、別人のように生きることを強いる〈口外禁止〉だというプログラム。施設に疑問を抱いたジャレッドは、遂にある行動を起こす…。

監督・脚本 / ジョエル・エドガートン
キャスト / ルーカス・ヘッジズ、ニコール・キッドマン、ラッセル・クロウ、ジョエル・エドガートン、グザヴィエ・ドラン、トロイ・シヴァン
上映時間 / 115分 製作国 / アメリカ 配給会社 / ビターズ・エンド / パルコ
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