担任するクラスの教え子や保護者にもオープンに生きる! FTM教師・拓舞さんご家族4人がインスタグラムで #LGBTsファミリーの日常 をオシャレに発信し続ける理由。

LGBTs当事者にとって自身のセクシュアリティをオープンにして生きていくという選択は容易ではない。周囲に自分の本質を100パーセント受け入れてもらえる保証はどこにもないからだ。例えひとつのコミュニティで受け入れてもらえたとしても、別のコミュニティでは受け入れてもらえないかもしれない。LGBTs当事者の中には、本当の自分で接するか否か線引きのようなものをして、各コミュニティで「自分」を使い分けているという人も少なくないであろう。

LGBTs当事者の存在がまだまだ身近であるとは言い難いの世の中であるが小学校教諭でFTMの拓舞(たくま)さんは、自身の家族や学生時代の友人、職場である小学校の教え子や保護者、娘たちが通う学校関係者、そしてインスタグラムなど自分を取り巻く全ての環境における人たちに自身のセクシュアリティを隠すことなく生きている。無論、パートナーのあいさんと娘さん2人も同様だ。あいさんの性的指向はストレートに近い場所にあるという。そんな2人に育てられた娘さんたちは、ごくごく普通に拓舞さんを「おとう」と呼び、会話の端々にはセクシュアリティに対して偏見がないことが垣間見える。4人が茨城で生活をスタートしてから、今年で4年目。

今回は拓舞さんとあいさんに、全てのコミュニティでオープンにした理由や現在の生活についてをうかがった。

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・・・・・・ 「30歳まで生きれれば良いと本気で思っていた」と話すFTMの拓舞さんの人生観がガラリと変わったのは、パートナー・あいさんとの出会い。

拓舞さん:僕がFTMだと気づいたのは大学1年生の時。通っていた大学におつき合いしているのを公言している同性カップルがいたのですが、2人の存在が自分の性について知ろうと思った最初のきっかけですね。今までの人生で好きな女の子ができたり、スカートが嫌だったりということは経験していましたが、まさか自分の心の性が男性というFTMであるとは思っていませんでした。それからはフェミニンな雰囲気のファッションはやめて、カッコいいテイストのものを好んで着るようになったかな。そのカップル2人とレズビアンの女の子、合わせて3人には間も無くカミングアウトしましたが、その他の友人には大学卒業間際に話しました。これから始まる大学生活において関係性が変わってしまうことが怖かったんでしょうね。反応は「知ってたよ(笑)」「やっぱり~!」など温かく受け入れてくれるような反応ばかり。ネガティブな反応は一切なく、お世話になった教授も「ええやん!ええやん!」と笑顔で話を聞いてくださいました。卒業後には教授が作ったチャットグループ「男子会」なるものに僕も招待してくれて、本当に理解がある方だなとありがたい気持ちでいっぱいになりました。

大学卒業してから2017年度までは地元・岐阜県で小学校教諭として働いていたのですが、その頃の私生活はとにかく遊びたい放題(笑)。その日暮らしと言っても過言ではないくらいで「大切な誰かにお金を残す訳じゃあるまいし。30歳まで生きれたらそれで良いや」というスタンス。生命保険や貯金といった将来を見据えたような行動は全くしていませんでした。

そんな生活が一変したのは、パートナー・あいちゃんとの出会い。大好きなアーティストの曲をライブ配信で弾き語りしているのを目にしてファンとして応援するように。それからちょっとしてから、僕がSNS上でFTMであることをカミングアウトしたのですが、一方的にファンだったあいちゃんから「良いんだよ、そのままで」とダイレクトメッセージが来たんです。驚いたけど、それをきっかけにお互いのことを話すようになりました。その過程で彼女がFTMの人とお付き合いしたことがあったこと、そしてシングルマザーで娘が2人いることも知りました。恋愛関係になる上で子供の存在は全然気にしなかったし、むしろビデオ通話で娘たちも交えて4人で話したりすることも。岐阜県と茨城県という遠距離ではありましたが、そういった日々のコミュニケーションで少しずつ心の距離を縮めていきました。

彼女は子育ての傍ら、シンガーソングライターを目指して東京でのオーディションを受けるために上京することが度々あったのですが「オーディションの結果発表会場に一人で行けるかな?」と僕に何度も相談してくる日があって。「何回も東京に行ってるはずなのにいけない訳ないじゃん」と思っていましたが、後々「あ、これは来て欲しいという合図だな」と気づき、翌日の仕事に関してはさほど考えることなく東京行きの新幹線に飛び乗りました。

あいさん:その日が2016年8月2日。東京で初めて会った日が2人の記念日となりました。当時、幼稚園生と小学2年生だった娘たちも初対面にも関わらず、彼とすぐ打ち解けてホッとしました。お付き合いする人は大前提として娘2人と良好な関係を築いてくれる人と決めていましたし、そう言った面でも小学校教諭というのも安心できる一つの要素ではあったかもしれません。私のセクシュアリティはストレートにかなり近いところにあるのですが、拓ちゃんには惹かれるポイントがたくさんありました。それから4人での生活をスタートさせるのは早かったと思います。学校の先生は年度が変わるタイミングでないと原則として退職することができませんので、翌年の3月までに引越しや諸々の手続きを終えて2017年の3月に彼が茨城県に移住する形で家族4人の生活が始まりました。

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・・・・・・ 誰かがLGBTsの存在を発信しないと何も変わらない。「誰か」になるためにインスタグラムアカウントを開設して、LGBTsファミリーのひとつの在り方を発信中!

あいさん:4人で生活する上で、彼との関係性について娘たちが分かる言葉で伝えるのが義務だと感じ、彼のセクシュアリティについて隠すことなく話しました。思春期になれば、自分たちの家族が定型的な家族ではないことも分かってくる。子供たちが自分たちで調べて知る前に親から話すことが、本当の意味での愛情かなと思ったんです。

その判断が良かったのか、娘たちからはセクシュアルに関して偏った見方をするような発言は全くと言って良いほど聞いたことがありません。結婚式をした時も同性同士の2人が婚姻関係を結ぶ「同性婚」が日本ではできないということも伝えたのですが、ごく自然に「なんで結婚できないの?」という反応が返ってきて。「男」「女」というものの見方はしていないのだなと誇らしくもあり、微笑ましくもありました(笑)。

インスタグラムで家族の日常を発信し始めたのは、この「同性婚」というのが大きく関わっています。というのも、場所や人を選ばずたくさんの目に触れるインスタグラムにて、普通の家族と何ら変わりないLGBTsファミリーの日々を継続的に投稿すれば、いつしかLGBTs当事者を代表するようなカップルとして周知される日が来るかもしれない。そうなした時に、同性婚法制化の署名活動に大きく貢献できると考えたのが始まりだったからです。今はその前段階として、SNSを通して私たちのような存在が身近にいるということを当事者間だけでなく、ストレートの方たちにも認知してもらえるような世の中を目指して発信しています。

拓舞さん:もちろん自分たちが「こうしたい!」という気持ちが大前提での行動ですが、「いばらきパートナーシップ宣誓制度」を利用したのも発信のコンテンツとして考えている側面は少なからずありました。自治体やLGBTsフレンドリーな企業のサービスがあったとしても、誰も利用しなければ必ず廃れていく。LGBTs当事者が身近にいることを実際に制度を利用している人たちの存在を通して、知ってもらえたらと思っています。こういった活動が高じて、今では茨城県庁が定期的に行うLGBTs当事者へのアンケート調査回答者として、日々の生活の中で県内で取り組んでほしいことなどを直接お話しする機会がいただけていますし、インスタグラムでは全国のLGBTsファミリーから子育て相談などを始め、DMもたくさんお送りいただけるようになりました。当事者がより良い環境で暮らすためにサポートをする立場でいられるのは嬉しいです。

また、世の中への発信という意味や自分たちの家族のあり方を決める上でも結婚式は一番といって良いほど意義のあるものになりました。僕は当初、家族だけで挙式を上げる形で良いんじゃないかなと思っていたのですが、あいちゃんに「普通に結婚式を挙げて、普通に大切な人たちに囲まれてお祝いしてもらいんですけど?」と言われて(笑)。彼女は曲がった生き方が出来ない人で、本当に真っ直ぐ。それで学生時代の友人や家族はもちろん、インスタグラムでつながったLGBTs当事者、職場である小学校の教員の方たちも招待して結婚式を挙げることに。

あいさん:拓ちゃんの職場の人たちに私たち家族のことを曖昧にしたまま生きていって欲しくはなかったし、セクシュアルマイノリティであるが故に一般的なカップルが感じることができる幸せな瞬間を諦めたくはなかったんです。それに娘たちが通う小学校や所属するスポーツ少年団の保護者には自分たちの家族については正直に話していたけど、これといって偏った見方をされたことは全くなかったもんですから。振り返ってみるとこの生活が始まって以来、幸せなことにそういう経験をしたことがなかったというのもポジティブであり続けられる一つの要因かもしれないですね。

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・・・・・・ 本来の自分に近づきたい…。ホルモン治療をスタートさせるために設けた、教え子と保護者へのカミングアウトの場。

拓舞さん:あいちゃんの一押しもあって結果的に一生の思い出になる結婚式になりました。その様子は招待した方たちが自らのSNSで発信してくれておかげで、より多くの人たちに僕たちのような存在が身近にいることが広まったと思うと、感謝の気持ちでいっぱいになります。

そして職場でFTMであることを公言したことで、ホルモン治療という本来の性に近づくための選択も現実味を帯びてきました。ただ、その選択をするにあたって伝えなくてはいけないと思ったのが僕が担任をしているクラスの子供たちと保護者の方々。何の説明もなしに僕の声や容姿が変化していき、名前もいつの間にか改名されたらとても戸惑ってしまいますよね。そこは私たちの娘2人と同じように、ちゃんと説明しなくちゃと思いました。

それから校長を始め教育委員会と話し合い、2020年2月に保護者の方々に自らのセクシュアリティを話す場を設けていただきました。当日は緊張して何を話したのかほとんど覚えていないのですが、話を終えると自然と拍手が沸き起こって、みなさん受け入れてくれたんです。想像していた反応とは全く異なる景色が目の前に広がってびっくりしましたが、中には「これからの社会において多様な選択、生き方があるのは当たり前。そのことをぜひ子供たちにも話してほしい」と温かいお言葉をかけてくださる方もいました。

そういった言葉もあって翌日、学年集会でも子供たちに話をすると「それがどうしたの?」というなんてことない反応が返ってきました。よくよく考えてみると、今はTVやインターネットを舞台に多くのLGBTs当事者がご活躍されていますし、当たり前に日常生活にいる人という捉え方なんですよね。

こうして僕たち、家族4人は属する全てのコミュニティでオープンに生きれるようになりましたが、周りの方々の暖かい支援があってこその今があると日々感じています。オープンに生きることによって変に噂をたてられることもないし、セクシュアルマイノリティであることを自身たちの弱みであると考えないことが家族を守る上で、一番大切なことなんじゃないかなと思っています。

家族として生活を始めて4年目に入りますが、何気ない幸せの日々をインスタグラムを通じて発信していき、これからもLGBTs当事者の人生の選択を後押しできるような存在になっていければ良いなと思っています。

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プロフィール
(左)拓舞さん/1991年生まれ。岐阜県出身。2017年より茨城県に移住、パートナーのあいさんと娘2人との生活をスタートさせる。いばらきパートナーシップ宣誓制度の利用や改名など、自分らしく生きる姿をSNSで発信中。2020年2月に小学校教諭として担任をするクラスの子どもたちや保護者へ自身がFTMであることをカミングアウト。現在は本来の自分により近づくためにホルモン治療を行っている。

(右)あいさん/1989年生まれ。茨城県出身。拓舞さんのパートナー。「自分に嘘偽りなくオープンに生きる」をモットーにセクシュアルに捉われない家族の在り方を世の中に知ってもらうため、SNSで家族4人の日常を中心に発信している。

Instagram@aimiya82
Twitter@aimiya082

取材・撮影・記事作成/芳賀たかし(newTOKYO)

※この記事は、「自分らしく生きるプロジェクト」の一環によって制作されました。「自分らしく生きるプロジェクト」は、テレビでの番組放送やYouTubeでのライブ配信、インタビュー記事などを通じてLGBTへの理解を深め、すべての人が当たり前に自然体で生きていけるような社会創生に向けた活動を行っております。
https://jibun-rashiku.jp