ドラッグに堕ちていく息子と父親の愛と再生の記録。ティモシー・シャラメ・映画「ビューティフル・ボーイ」

ゲイの間でもドラッグ依存症に苦しむ人は少なくない。そしてこれからもそのきっかけは訪れるかもしれない。だからこそ、本作をぜひ観てほしい。
映画「ビューティフル・ボーイ」はNetflixドラマ「13の理由」の脚本家ニック・シェフの実話をもとにしており、長年ドラッグ依存症に苦しむ息子と彼を支え続けた父の愛と再生の物語となっている。

世界が最も期待する俳優「君の名前で僕を呼んで」ティモシー・シャラメと堕ちていく息子を8年間支えた父親役のスティーヴ・カレル。

息子・ニックを演じたのは、「君の名前で僕を呼んで」で大注目を集めたティモシー・シャラメ。ゲイのひと夏のラブストーリーを描いた作品の中ではピュアで甘酸っぱい青年像を演じていたのに対し、本作では青白く痩せこけ豹変していく変化が凄まじく、演技とは思えないほどリアルな描写が心を鷲掴みにする。

エモーショナルな演技で人間の表と裏の顔を表現し、懸命に薬物から克服しようとする人間の生き様を演じるティモシー・シャラメが美しい。

そもそもニックが薬物に手を出したきっかけが、両親の求める「いい息子・兄」を演じなければいけないという責任感や重荷からだった。ここに感情移入してしまう人や、ゲイというセクシュアリティを隠さなければ生きづらいと感じ、日々ストレスを感じている人にとっても同等と言えるだろう。そんな現実から逃げ場を求めて、つい手を出してしまったのが事の始まり。

息子を信じ続ける父親役のスティーヴ・カレルが、苦悩と葛藤を滲ませながら熱演。無償の愛と慈しみを与える姿に胸をつかれる。

ドラッグにより次第に堕ちていくニック。罪悪感と恐怖感に襲われていく中で、常に彼の側にいたのが父親・デヴィッドでした。
デヴィッドは自分の知っていた息子ではなく、目の前にいる別人に混乱します。それでも息子に愛情を注ぐのことを諦めない姿勢が胸に突き刺さります。
この親子のシーンは度々登場するのですが、どの場面も強く印象に残ります。息子を思って父親がくだす決断、別れ、拒絶シーンなど、どれも痛ましくて人間くさくも、胸に刺さるものがあります。父親として、一人の人間として、一人の人間と向き合っていく生き方に親子の愛が散りばめられているのが分かります。ぜひ親子の強い絆を感じ取ってみてください。

ちなみに本作のタイトル「ビューティフル・ボーイ」は、ジョン・レノンが息子に向けて作った同名曲から取られており、劇中では様々な名曲が織り込まれいます。音楽から伝わるメッセージにもぜひ耳を傾けてみてください。

Christian Convery and TimothŽe Chalamet star in BEAUTIFUL BOY

映画:ビューティフル・ボーイ
全国ロードショー中

ストーリー/成績優秀でスポーツ万能、将来を期待されていた学生ニックは、ふとしたきっかけで手を出したドラッグに次第にのめり込んでいく。更生施設を抜け出したり、再発を繰り返すニックの更正を、大きな愛と献身で見守り包み込む父親デヴィッド。何度裏切られても、息子を信じ続けることができたのは、すべてをこえて愛している存在だから。父デヴィッドと、ドラッグ依存症だった息子ニックがそれぞれの視点で書いた2冊のベストセラーノンフィクションを原作とした実話に基づく愛と再生の物語。

監督・脚本/フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン
キャスト/スティーヴ・カレル、ティモシー・シャラメ
上映時間/120分 製作国/アメリカ 配給会社/ファントム・フィルム
提供/ファントム・フィルム、カルチュア・パブリッシャーズ、朝日新聞社
https://beautifulboy-movie.jp
© 2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC.