AIDSを発症し、39歳で逝去した平田豊さん。是枝裕和監督が録った30年前のテレビドキュメンタリー「彼のいない八月が」を、10/26(土)・27(日)に特別上映

ーー今や世界的映画監督・是枝裕和氏が30年前に追い続けたのは、HIV感染を公表した一人の男性だった。

ドキュメンタリー『彼のいない八月が』が、横浜市の劇場「シネマ・ジャック&ベティ」にて10月26日と27日の2日間限定で特別上映される。本作品を監督したのは、今や世界的にも知られる映画監督の是枝裕和氏。

1992年、性行為によってHIVに感染したことをメディアを通して日本で初めて公表した男性がいた。詩人の平田豊さんだ。現在とは違い、ウィルスを抑える効果的な治療薬もなく、死のイメージが強かったHIVとAIDS。同性とのセックスによる感染は、当時そこにさらなる差別と偏見を招いた。その状況下で当時37歳だった平田さんはHIVに感染していることを顔と名前を出して公表し、大きな注目を集めた。

当時テレビマンユニオンに所属していた是枝裕和さんは、闘病しながらも力を振り絞りながら詩をつくり、公演を行う平田さんを「取材」。その姿をカメラとともに追い、やがて彼に寄り添うようになる。その映像には、AIDSを発症し闘病しながらも、明るくちょっといい加減に、そして一生懸命に生きた平田さんの姿が記録されている。

本作がフジテレビ「NONFIX」で放送された1994年の8月には、横浜でアジアで初となる国際エイズ会議が開催されたが、依然としてHIVの有効な治療法が見つからないまま、感染者や死者数は増えていき医療従事者や活動家にも疲れが見えていた。

しかしその一方、東京ではプライドパレード/マーチも開催された。本作は将来への不安と希望が入り混じった、そんな時代の空気を感じさせる。

本作放送からちょうど30年。今、その映像は何を伝え、私たちはそれをどのように受け止めるのだろうか。

◆彼のいない八月が(1994年|77分|日本|日本語|カラー|DVD|制作:テレビマンユニオン)
日時:2024年10月26日(土)、27日(日) 上映開始時間:午前11:45
場所:シネマ・ジャック&ベティ(横浜市中区若葉町3-51)京浜急行線 黄金町駅下車 徒歩5分
特別上映(資料代:1,500円) *入場時に資料をお渡しします。(鑑賞料はいただきません)
上映後ゲスト:10月26日の回 上映後トーク:関根信一さん(演出家、劇作家、俳優。1992年よりカミングアウトしているゲイの劇団フライングステージ代表。)
共催:シネマ・ジャック&ベティ|ノーマルスクリーン
助成:横浜市地域文化サポート事業・ヨコハマアートサイト2024
協力:飛田ニケ|勝部美星|分福|テレビマンユニオン

◆平田豊
ひらたゆたか(ペンネーム)。1992年10月、性的接触によりHIVに感染していることを日本で初めて公表。セクシュアリティが同性であることについてもオープンにし、ゲイ男性やエイズ患者の可視化に貢献した。10代の頃から短歌をつくりはじめ、93年には和歌集を発表した。「それじゃあグッドバイ: 平田豊・最後のメッセージ」では、暴走族に関わったり、ゲイバーやパチンコ店で働いていた若い頃のエピソードが語られている。1994年5月29日に39歳で逝去。

◆各種相談窓口・HIV検査所サイト
>>>東京都HIV検査情報Web
>>>HIVマップ
>>>HIV検査・相談マップ

記事制作/newTOKYO

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