350種類のバイブから至高の1本を。「バイブバー」のYさんに聞いた、アダルトグッズと女性のカンケイ。

バイブバーのインタビュー

東京・渋谷ハチ公口から徒歩3分。とある雑居ビルの3階にある扉を開ければ、エロ×アートのコンセプチュアルが過ぎる「バイブバー」へと辿り着く。
バーカウンターやバックバーをはじめ、店内には350種類以上のバイブがディスプレイされ、訪れた人は思い思いにバイブを手に取り、至高の一本との巡り合わせを楽しむ。

一聞すると「エロい!」で済まされてしまいそうだが2013年のオープン当時から、女性とアダルトグッズをより身近なものにするための空間として営業を続けている。至って大真面目だ。
今回はそんなバイブバーで性に悩める、あるいは性への探究心が止まらない女性たちと7年間向き合ってきたスタッフのYさんに、「バイブバー」について話を伺った。

ーー性への探究心が止まらない…。バイブバーへと足を運ぶ人たち。

バイブバーは常時350種類以上あるグッズからお客様自身が気になったものを見て、触って、動かしてもらいながら、最適なバイブとの巡り合わせを提供するバーです。基本的には18歳以上の女性やカップルのみが入店できるというスタイルですが、18歳以上で女性が過半数いるグループであれば男性のお客様もお越しいただけます。

私がカウンターに立つ時の客層としては、女子大生やセクシー女優、カップル、ご夫婦、LGBT当事者、ローションを開発している製薬会社の方など様々ですが、いずれも性に関する好奇心が旺盛な人が多いイメージです。お客様が違えばお話しする内容も様々で、“興味はあるけどグッズを使うのは初めて”といった人から、“使用したバイブが少し合わなかったから、今度はこういうものが欲しい”と明確な目的がある人もーー。

かく言う私も、20代の時に付き合っていたグッズプレイが好きな彼氏の影響で、バイブに関心を持つようになったうちの一人。以来、アダルトショップへグッズを買いに行ったり、友人からプレゼントされたりと、今まで色々なバイブを使用してきました。

流石にお店にある350種類全てを試すには身体が足りないですが、毎月のように入荷する新商品をはじめ、気になったものは実際に試用して良ければ購入している身なので、もし気になるバイブがあったり性に関する悩みがあれば、お話の中で最適なバイブをおすすめできるかなと思います。
先日も「外イキはできるけど、中イキができない」というお客様へ、中イキのトレーニングとして相性が良さそうなバイブをおすすめしたところ、ご購入いただいて……。

男性が過半数を占めないように入店制限をしている理由としては、このように女性が本心から悩みや性について語らう、何より女性がグッズを手に取りやすい場所を作りたいという弊社・社長の気持ちからなんです。
また、性について悩みを打ち明けられずに別れてしまうというカップルがいる中で「こっちのバイブの方が気持ち良さそう」などと、フランクにお話するカップルをカウンター越しに見た時は、性を前向きに話せる関係性というのが微笑ましく、何より性の部分を切り離さずにお互いを知ろうとする、知ってもらおうとする思いやりはとても大切なことだなと思いました。

一方で付き添いでご来店したような、性的な話をするのが苦手でバイブに触るのも恥ずかしいというタイプのお客様が90分という時間の中で、最終的には自分好みのバイブを一本見つけるというのも接客をしていて楽しい瞬間の一つです。

ーーバイブを通して気づかされた、一人ひとり異なる性愛のカタチ。

バイブバーはバックバーにレインボーフラッグを掲げている通りLGBTフレンドリーなので、時にはレズビアンの方たちにお越しいただくこともあります。その際はお互いに彼女がいてポジションはお二人ともタチだったのですが、相手には言えない悩み相談であったり、どういうバイブなら気持ち良くなってもらえるかバイブを選んでいる様子が印象的でした。

また、以前働いていたスタッフの中には男性経験がないけど、性的欲求はあってセルフプレジャーが好きという女の子もいて。好き=性行為に直結するような関係性は必然ではないし、パートナーとは別にセカンドパートナーがいる方も当人が良ければ、それで良い。性愛の形は一つじゃなく、一人ひとり違って良いものとより強く思えるようになったのは、ありのままの生き方をしているお客様やスタッフたちの影響を受けたのでしょう。

私自身、いくつかの仕事を掛け持ちしながらバイブバーで働き初めて7年目になるのですが、結婚願望が全くないまま生きてきて。家族のためを思えば結婚したほうが良いのかなと責任を感じてしまうこともあるのですが、自分が好きな時間や考えを犠牲にするほどのものではないなと思えるようになったというか。そういう良い影響を与えてくれる方たちと出会えるのも魅力なのかなと思います。

今では、セルフプレジャーアイテムとしてバイブが百貨店のポップアップストアに並ぶ時代ではありますが、まだまだショップに買いに行く行為自体ハードルが高い、手に取るのが恥ずかしいと思われてしまっているのも現実としてあるはずなので、バイブバーはそういう方たちにとって、気軽に立ち寄れる場所で在り続けたい。

男性のお客様もとてもマナーの良い方ばかりですが、万が一お困りのことがあればストリップ劇場でこれまで数々のお客様を相手にしてきた私をはじめ、スタッフ全員で止めに入りますのでご安心ください(笑)。

いつかバイブが、音楽のような趣味感覚であったり、タバコのような嗜好品の一つとして数えられる、そしてライトに話し合えるときがきたら楽しいんだろうなという気持ちを抱きながら、これからもカウンターに立ち続けられたらと思ってます。

◆ THE VIBE BAR WILD ONE
アダルトグッズショップ「WILD ONE」を展開する株式会社ワイルドワンが2013年、渋谷にて誕生。「見て、触れて、動かして…」がコンセプトのバイブバー。カウンターとバックバーには常時350種類前後のバイブがリキュールさながらに陳列されている。

オープン当初から「アダルトグッズに興味があってもショップに入りづらい」「実際に触ったり、相談しながら検討したい」といった女性の性に対する探究心に寄り添い続け、接客を通して一人ひとりに最適なバイブや性に関するお悩み解消などへのアプローチを行っている。男性の単独入店が可能な「マラナイト」も不定期で開催している。

〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂2-7-4 清水ビル3F(渋谷駅ハチ公口より徒歩3分)
https://www.vibebar.jp
Twitter@VIBEBAR_wildone

取材・企画/芳賀たかし
写真/新井雄大
記事掲載/newTOKYO