9月5日(月)〜11日(日)の7日間、鹿児島にあるギャラリーポランカにて、写真家・山乃モトキさんによるメンズヌード写真展「Liberal arts」が開催される。
今回の写真展の“リベラルアーツ”は、「人が身につけなければならない学芸の基本」という意味を持ち、最近では「教養」とも訳される。そして、タイトルや写真展開催に込められた想いに思わずハッとさせられ、鹿児島で開催しようと思った山乃さんの挑戦が力強いものであった。
ーー私がメンズヌードを撮りだしたのには様々な理由がある。生きることや性についで悩んだことなど自己の内面を表現する手段として、大好きなポートレート撮影を突き詰めてたどり着いた結果として、誰もがやっていないものに挑戦しようというフォトグラファー戦略として。そして、ルッキズムや女性軽視といったアート界にもあるくだらない価値観への反逆として。
ある展示会で女友達の着衣ポートレートを展示したことがある。感想は「おキレイですね」「足がすらっとしてていいですね」「顔が色っぽい」なんだか私は友達を侮辱された気になった。このおじさんたちが最も興味ないものを撮ってぐうの音も出ない美しさを見せつけてやりたくなった。
アート鑑賞はその人の育った環境、周りの友人たちの価値観、積み重ねた教養で感じ方や受け取る心の位置が変わってくると思う。Liberal artsという言葉にARTが入っているのは本当に意味深いと思う。女性ポートレートを撮っているうちは評価は被写体であった。
メンズヌードを撮りだすと「あなたはゲイなんですか?」「どうしてこんなものを撮ろうと思ったんですか?」と評価は作者に移った。私はアート鑑賞において評価されるべき人がいるのなら、それは見る人そのものなのではないかと最近感じている。
メンズヌードを見ることは自分の内部を見ること。あなたが写真を見て思ったことは、あなたのどこからつながってきているのでしょうか。
数年前、作品展を見に来た鹿児島の男性から「すごくきれいでドキドキしました」という感想をもらったときは、前述のあの頃の自分とガッツポーズができた。
私は今年14年ぶりに鹿児島に戻った。家父長制による遅れた女性軽視のシステムが今でも色濃く残り、ムラ社会をいまだ若者自身たちがその手で構築する鹿児島で、この展示を出来ることは非常に感慨深い。
山乃さんの映し出す世界には、時間の流れを受け取ることができる。
写真という静止画の中に感じられる被写体の心の動きは、私たちに投げかけるものが存在し、そしてその優しい雰囲気からは想像もつかない、力強いメッセージが今回発信されることだろう。
130人以上のメンズヌードを撮ってきた中で、今回の写真展では過去の作品と新作を混在させた形で展示される。鹿児島に拠点を移し、未だ閉鎖的な一面が残る地元で写真を通して日本を変えていく山乃さんの挑戦、ぜひ観に行ってみてはいかがだろうか?
■Liberal arts/山乃モトキ メンズヌード写真展
開催期間|2022年9月5日(月)〜9月11日(日)
開催時間|12:00-19:00[入場無料]
開催場所|ギャラリーポランカ4F(鹿児島県鹿児島市名山町8-8)
https://note.com/motokitchen
Instagram@motoki.yamano.jp
記事制作/newTOKYO