アムステルダムでの現地取材をもとに、LGBTQ+にまつわるアレコレを紹介する不定期連載企画「アムステルダムって、どこ?」。ちなみに、アムステルダムは世界で初めて同性婚が合法化されたオランダの首都なので、覚えておいて損はないよ。
第7回目は、およそ一週間の滞在中に撮影したスナップをお届け。国際情勢が落ちつきを見せた時、バカンス候補として夏のアムステルダムを選びたくなるはず。
ーー自由な空気を吸い込めば、どこまでだって歩きたくなる。ここは、世界有数のリベラル都市・アムステルダム。
最寄りの空港となるスキポール空港から、アムステルダム中央駅へは電車で約20分。一週間にわたって開催されるプライドイベント「PRIDE AMSTERDAM」の期間中ということもあり、駅舎にはレインボーフラッグが掲げられ、各国から多くの観光客が訪れていた。
世界で初めて同性婚が法制化されたアムステルダム中央区役所の隣にあるダッチナショナル・オペラ・アンド・バレエでは、その名の通りオペラやバレエの公演が数多く上演されている。
アムステル川に面したロケーションも最高だ。
アムステルダムはアムステル川をダムでせきとめた地盤の緩い土地の上で発展してきたため、至るところで建物が傾いていることに気が付く。傾いた家には当然住民が住んでいるが、あまり気にしていないご様子。
地震もほとんどと言っていいほど無い都市だからだろう。
運河が扇状に張り巡らされた街ではボートでお酒を飲む人たちの姿も、日常に溶け込む風景の一部。シンゲル運河の内側にある環状運河地域は、世界自然遺産にも登録されており、その運河にゆられながら歴史ある建物の数々をゆっくりと通り過ぎていく。
アムステルダムで最も贅沢な過ごし方の一つと言えるかもしれない。
街の中心地に位置するベギンホフ。14世紀、女性独立運動を行っていた女性が住んでいたと言われる場所であり、一説によると初めてレズビアンコミュニティが生まれた場所とも言われている。
無料で観光することができるが、今もなお100人ほどの女性が住んでいるため、教会敷地内での私語はなるべく慎むのがルール。
オランダといえば風車とチューリップというイメージを持つ人も多いだろうが、その通りと言わんばかりにシンゲル運河沿いにある花市場には、種類豊富なチューリップの球根が売られている。
日本へ持ち込む際は防疫の観点から、オランダと日本の両国で検疫が必須。場合によっては没収されることもあるので入念にチェックしておこう。
反政府や反資本主義、反政策のグループにより占拠された建物の総称で、市内に点在している。自治体が取り壊そうとするものの、抵抗し続け今もなおグループの一員が住んでいる。
水曜日にはモロッコのフェミニストがクィアウェンズデーと呼ばれるイベントを開催しているそう。
既製品からヴィンテージまで数百種類のライトが並ぶ「AUROLA」。1909年に創業から110年以上、アムステルダムに住む人々の暮らしを灯し続けてきた老舗だ。こういった歴史あるお店に多く出会えるのも、街の魅力の一つと言える。
迫害を受けた同性愛者を追悼するモニュメント。「絶えなき友情」というメッセージが刻まれており、「PRIDE AMSTERDAM」によるプライドウォークも、毎年この場所からスタートすることが決まっている。
かつてゲイの人々が刑の宣告や刑罰、絞首刑を受けた近くの川辺には花が手向けられていた。
「PRIDE AMSTERDAM」期間中、モニュメントではドラァグクイーンによる様々な催しが行われていた。中でもハイヒールレースは鉄板イベントのようで、数千人が集まりアーティストライブさながらの盛り上がりを見せていた。
パブリックな場所かつエンタメ的アプローチでセクシュアルマイノリティへのさらなる理解を深められるのも、同性婚が法制化された国ならではなのかもしれない。
トランスジェンダーの権利向上を目指す団体「TRANS AMSTERDAM」によるトランスパレードの先頭は、胸元の手術痕を隠さず堂々と歩を進める一人の若いトランスジェンダー男性。
その後ろにはジェンダーや年齢を問わず数百人に及ぶ人が列をなし、リズムに合わせて街を練り歩く。
太鼓の音が響き渡ると通り沿いのアパートメントから住民が顔を出し、どこからともなく持ち出したレインボーフラッグを大きく振って、声援を送っていた。
また、パレードを静かに見守っていた老婦人に話を聞くと「様々なバックグラウンドを抱えるグループの人達が表に出る機会を設けることは、とても重要なことだと思う」と優しさに溢れた答えが返ってきた。
「PRIDE AMSTERDAM」の運営本部がある「THE STUDENT HOTEL」はライトアップにより、期間限定でレインボーに。
また、初の試みとなるアジアンプライドパーティやQueer Currentsが主催するクィアアート展も行われ、LGBTQ+コミュニティの人々を被写体としたポートレートが多く展示されていた。
ーー変わらないこと、変わっていかなくてはならないこと。歴史を重んじながら多様化する人々の暮らしに寄り添い「変わり続けること」を選択してきたアムステルダムには、伝統と自由が混在した心地良さがある。
訪れた際は気を張らず、心ゆくままに散策を楽しんで。
取材・文/芳賀たかし
写真/EISUKE
通訳/桑原果林(ソウ・コミュニケーションズ)
協力/駐日オランダ王国大使館、ダッチ・カルチャー
記事制作/newTOKYO
※本取材は駐日オランダ王国大使館が実施するビジタープログラムの一環として行いました。