トランスジェンダー女性が監督、クィアを公表する二人の俳優が主演の映画「テレビの中に入りたい」が9/26(金)公開。90年代のアメリカ郊外が舞台、“自分探し”メランコリック・スリラー

人気スタジオのA24が贈る新たな傑作「テレビの中に入りたい」が9月26日(金)に公開される。全米では2024年5月3日、4館のみの限定公開から始まったものの、瞬く間に評判を呼び、5月17日には上映する映画館が469館にまで上ったことでも話題となった。

物語の起点となるのは90年代のアメリカ郊外。閉塞した日常をやり過ごしながら、自分のアイデンティティにもがく若者たちの、切なく幻想的な青春メランコリック・スリラーが魅惑の映像世界と共に展開される。

ーーここではないどこかに行きたい。だけど、どこにも行けない。あの頃、僕の居場所はテレビの中だけだった。

1996年。郊外の町に暮らす少年オーウェンは、母親と訪れた大統領選挙の投票所となっている学校で、ひとりぼっちで本を読んでいた2学年上の少女マディと出会う。彼女が熱心に読んでいたのは、毎週土曜日の22時半から放送されているテレビ番組、“P.O”こと『ピンク・オペーク』のオフィシャルブック。

その番組は、ティーンエイジャーの女子コンビ、イザベルとタラが、敵であるミスター・ 憂鬱メランコリーの遣わす怪物たちと毎週戦うというヒーローもの。後日、オーウェンはマディから一緒に“P.O”を観ようと自宅の地下室に誘われ、強烈に少年の心をとらえて離さなくなった。

2年後。相変わらず『ピンク・オペーク』に夢中のふたり。私は女の子が好き、と口にするマディは、ますます登場人物のタラにのめり込んでいた。一方のオーウェンは、母親が癌に冒され、闘病生活を送っており、番組はそんなつらい現実からの一時の逃避場所になっていた。

ある日、マディは街から姿を消す。不思議なことにマディが失踪すると、シーズン5まで続いていた『ピンク・オペーク』は最終回を迎え、終了してしまった。母親を亡くしたオーウェンは街を出ることなく、消えたマディとの交流も途絶え、喪失感を抱えながら日々をやり過ごして生きることになる。

8年後。オーウェンは父親と一緒に暮らしながら、地元の映画館で働いていた。ある夜、近所のスーパーマーケットで、突然オーウェンの前にずっと行方不明だったマディが現れる。再会したふたりは秘密の話をするために、ロックバンドが演奏している町外れの怪しげなライブハウス&バーに場所を移した。

「入ってたの。番組の中に」――。なんとマディは、街を出てから『ピンク・オペーク』の世界の中でタラとして生きていたのだ、と告げる。そしてマディはオーウェンに、一緒に“PO”の世界に行こうと誘う。しかし、恐れをなしたオーウェンは、結局マディのもとから逃げ出す。以来、マディがオーウェンの前に姿を見せることは二度となかった。

20年後。オーウェンは働いていた映画館が廃業し、同じ場所でリニューアルオープンしたゲームセンターで働き続けていた。そんなある日、職場のゲームセンターで子どもの誕生日パーティーを催していた時のこと。

オーウェンは突然発作に襲われ、悲痛な叫び声をあげる。「助けて! ここにいたら死ぬ!」あわててオーウェンはバスルームに閉じこもり、ナイフで自分の胸を切り開いた。すると彼の胸の奥には猛烈な光を放つテレビがあり、その画面には 『ピンク・オペーク』が映し出されていた――。

ーークィアを公表する俳優が出演を熱望。多様な魅力跳び点を兼ね備えた本作は映画祭でも高い評価を獲得

監督&脚本を手掛けたのは注目の新進気鋭、ジェーン・シェーンブルン(1987年生まれ)。トランス女性でノンバイナリーであることを公表しているシェーンブルンは、クィア映画の果敢な推進者でもある。

本作では多感な思春期の頃に出会ったカルチャーやフィクションを、自分自身や自分の心を見つける場所として設定し、魂の“牢獄”からの脱出というテーマをロマンティックな美しさをたたえて描き出した。

繊細な少年期から人生の歩みを進めていく主人公のオーウェン役を演じたのは、ジャスティス・スミス。『名探偵ピカチュウ』(19)でも活躍した彼は、クィアであることを公表しており、出演を熱望したという。

またクールな年上の女の子、マディ役を演じたジャック・ヘヴン(2025年にブリジット・ランディ=ペインから改名)もまた、クィアを公表している。

多様な魅力と美点を兼ね備えた本作は、2024年サンダンス映画祭のミッドナイト部門でプレミア上映されて以降、同年の第74回ベルリン国際映画祭パノラマ部門正式出品、第40回インディペンデント・スピリット賞では作品賞を含む主要5部門にノミネートされるなど、世界中に熱狂的なファンを生み出している。

初めて輝きを見たブラウン管の中の空間に今も存在する美しさ。この映画が放つ大切なメッセージは“自分自身とつながる”こと。心の内でリアルにアクセスできる、新時代のカルトムービーがここにある。ピンク色に光る闇の中に、あなたも引き込まれるかもしれない――。

なお、A24と共同製作を務めるのは、俳優エマ・ストーンが設立した映画制作会社フルーツ・ツリー。今回はストーンと、パートナーで共同経営者のデイヴ・マッカリーが共に、シェーンブルン監督の脚本に惚れ込んで参加に至ったとのこと。

ーー9/26(金)公開|映画『テレビの中に入りたい』本予告

◆テレビの中に入りたい 9月26日(金曜)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
https://a24jp.com/films/tv-hairitai/
X@A24HPS
ストーリー/毎週土曜日。孤独なティーンエイジャーのオーウェンとマディにとって、謎めいた夜のテレビ番組『ピンク・オペーク』は、生きづらい現実世界を忘れさせてくれる唯一の居場所だった。ある日、マディは失踪を遂げる。大切な相棒だった彼女が去り、ひとり取り残されたオーウェンは秘めた葛藤を抱え込むことになる。自分はいったい何者なのか“本当の自分”を知りたい気持ちと、それを知ることの怖さとの狭間で身動きができないまま、時間だけが過ぎていく。果たしてマディはどこに行ったのか。そして心の中に刻まれた『ピンク・オペーク』は、オーウェンに何を語りかけるのか――。

監督&脚本:ジェーン・シェーンブルン(『We’re All Going to the World’s Fair(原題)』)/キャスト:ジャスティス・スミス(『名探偵ピカチュウ』)、ジャック・ヘヴン(『ダウンサイズ』)、ヘレナ・ハワード、リンジー・ジョーダン(スネイルメイル)/共同製作:フルーツ・ツリー(エマ・ストーン制作会社、『リアル・ペイン〜心の旅〜』)/尺:100 分 レーティング:PG12 原題:『I saw the TV glow』 © 2023 PINK OPAQUE RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

記事制作/newTOKYO

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