3つの時代を繋ぎ38年の歴史に幕を閉じたゲイ雑誌サムソン。
4代目編集長・三上風太さんの想いとこれからの新しい形とは?

4月22日の発売(2020年6月号)で休刊になったゲイ雑誌『サムソン』。昨年の月刊『バディ』が休刊してから1年半のこと。これで本当に日本の商業ゲイ雑誌の歴史にも幕が閉じることとなった。
長年愛されてきた最後の砦であったサムソンとはどのような雑誌だったのか、また休刊への想いについて最後の編集長を務めた三上風太氏にメッセージを伺った。

1982年創刊から38年。2020年6月号(2020年4月発売)をもってその歴史に幕を下ろした、日本最後の商業ゲイ雑誌『サムソン(SAMSON)」(海鳴館)。
昭和、平成、令和の3つの時代をまたいだ唯一のゲイ雑誌であり、令和まで生き抜いた唯一の商業ゲイ雑誌でもあり、月間ペースで継続して発刊されたゲイ雑誌としては日本最長(※1971年~2011年まで40年間商業誌として刊行していた「薔薇族」があるが、途中で3度の休刊&季刊化のため、継続発刊記録は33年)でもある。
他の商業ゲイ雑誌では実現できなかった3つの偉業を成し遂げただけに、突然の休刊はゲイ業界だけでなく一般のニュースとしても取り上げられた。

サムソンと言えば、一般的にはふくよかな中年・高年者を愛する雑誌としての印象が強いが、意外にも創刊当時は若年・普通体型を扱うゲイ雑誌だったという。その後、1980年代後半のゲイ雑誌ラッシュ時に、現在の独自路線に変更したサムソンは、「パパ、お父さん」「課長、部長、社長」などのパワーワードはもちろん、サムソン高橋氏や熊田プウ助氏など名物スターを輩出し、最後までマイぺースの誌面作りを貫いていた。
インターネットを使えない読者のために、他のゲイ雑誌では10年ほど前には廃止となった文通欄(手紙のやりとりコーナー)を長年継続し、分かりやすく解説した「お父さんのためのインターネット講座」は別冊にしても良いほどのボリュームで毎月掲載。また、サムソンを刊行する海鳴館はビデオメーカーでもあるため、グラビアの充実度も高かった。

紙媒体からインターネットに移行する時代、古き良き時代の感覚でゲイライフを過ごす高齢読者にとっては最後の砦だっただけに、休刊という選択は非常に残念であった。
そんなサムソンで、編集長を4年間務めた三上風太氏に、雑誌への最後のメッセージをいただいた。

―― 編集長・三上風太氏よりメッセージ
私は2005年に編集部に加わり、編集長は4代目として4年ちょっとやらせていただきました。ですので、正直サムソンのすべてを語る蓄積はあまりないです。ゲイ雑誌はそれぞれが競合誌ではありましたが、路線が定まってからのサムソンは独自の世界で、他誌とは競合しないのでほとんど気にしていませんでした。でもどういうことをやってるのかなと見ることはありましたね。

近年では、ネットの普及に伴い、インターネットができない読者に配慮する企画コーナーもありましたが、今回の休刊に至っては、その影響は少ないと思っています。紙媒体が好きな方はネットができるできないに関わらず買ってくださいますが、それでも継続して採算をとることができなくなったのが理由にあります。そして、コロナ禍も無関係ではないのが本当のところです。

私にとってのサムソンは、〈いろいろ大変な世の中だけど、サムソンを読むときだけはちょっと笑える、ほっとする…〉そんな雑誌がずっとゆるゆる続くと良かったけれど、さびしい結果になりました。薔薇族とサムソンで働いて、男の絵を描くのと雑誌作りが好きだったから…。

雑誌は休刊になりましたが、元々、雑誌制作とビデオ制作が社内ではっきり分かれていたわけではないので、サムソンビデオと豊漫ビデオの制作は続きます。動画配信サービスも変わらず継続します。
そして、月刊誌はもうできないかもしれないけれど、雑誌的な内容も盛り込んだ小冊子(もちろん紙の。仮称サムソンミニ?)を作る計画が進行中です。どこかのショップで見かけたらぜひ手にとってみてください。本当にありがとうございました。

■ ゲイ雑誌:サムソン(SAMSON)6月号
2020年4月22日発売/1200円(税込)
■ 海鳴館ウェブサイト 
■ 海鳴館公式ツイッター
■ サムソンビデオTV(動画配信)

取材・インタビュー/みさおはるき
写真/村上ひろし
記事制作/newTOKYO

※今回のインタビューはコロナ禍の影響を考慮し、メールインタビューにて収録させていただきました。

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