“LGBTsフレンドリーな雰囲気”だけで終わらせない。「ニコアンド」も運営、アダストリア発「いいね♡」を押したくなるPRIDE指標ゴールドの取り組みが知りたい!

LGBTフレンドリーなアパレルのアダストリア

「TOKYO RAINBOW PRIDE 2018」のプライドウィーク期間中にレインボーフラッグが掲げられている様子を目の当たりして以来、明治通り沿いを歩く度、吸い込まれるように足を運んでしまうお店がある。アパレルや生活雑貨、カフェスペースに書籍もラインナップするライフスタイルブランド「ニコアンド トーキョー」だ。オシャレなショップを運営する企業がLGBTsアライを表明していると、誇らしくもあり温かい気持ちになるのは私だけではないはず。

「ニコアンド」を始め、アパレルを中心に20ブランド以上を運営する株式会社アダストリアがCSRの一環として、LGBTsフレンドリーな取り組みを本格的にスタートさせたのは2018年。今回はLGBTsフレンドリーな業界とも言われているファッション業界の中でも一歩先を行く、アダストリアのLGBTsフレンドリーな取り組みを経営企画室の藤本さん(写真左)、同じく2020年3月から経営企画室に配属となったジョンさん(写真右)にお伺いした。

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LGBTフレンドリーなアパレルのアダストリアのインタビュー

◇◆◇◆◇ファッション業界においてLGBTsの存在が当たり前だからこそ、そこで働く人たちの生活を「社内制度」で守る!

藤本さん:ファッション業界において、いつの時代もLGBTs当事者であるクリエイターが第一線で活躍してきた背景もあるので、業界全体を通してLGBTsフレンドリーな雰囲気というものは当たり前に確立されているものと言っても良いかもしれません。そのためLGBTs当事者が「生きづらさ」の様なものを感じることは異業種と比べてみても比較的少なく、働きやすい業界なのではないかなと個人的には解釈していました。
現に弊社ではセクシュアリティをオープンにして働いている社員もいて「カミングアウト」という概念そのものが明確にあるわけでは無いんですよね。むしろ、周りにいて当たり前の存在という共通認識は、私が入社した当時から社内全体にあったと思います。

ジョンさん:もちろん本社だけではなく私が以前、スタッフとして勤務していた弊社運営のショップでも同じことでスタッフのセクシュアリティを詮索したり、「男女」で物事を考えることはなかったですね。

藤本さん:この様に「LGBTs」という存在があまりにも生活の中でナチュラルに身の回りにいる環境であるが故に、特別に制度等を設けるという考えまでには至っていませんでした。ただ社会的にも「LGBTs」という言葉が浸透し始めて、企業や自治体などによるダイバーシティ宣言やLGBTsフレンドリーな制度の施行など目に見える形でLGBTs当事者への歩み寄りが一般的になりはじめた2018年。たまたま弊社のCSR活動全体を見直した際、LGBTs当事者の目線に立って制度を見直す必要を認識したほか、やはり「LGBTsフレンドリーな雰囲気」だけではいけないという結論に至ったんです。以降、弊社ではLGBTsフレンドリー企業であることを社内外に発信するための活動をスタートさせていくことになります。

そうして初めに取り組んだプロジェクトが「TOKYO RAINBOW PRIDE 2018(以下TRP)」への参加。代々木や渋谷を中心に歩くパレードにおいては、社員やその家族、友人なども参加してLGBTsへの理解や多様な生き方があることを広めると同時に、多様な個性を尊重し、お互いに認め合える社会づくりに貢献していく意思を表明しました。ブース出展では、認定NPO法人グッド・エイジング・エールズが主催する「OUT IN JAPAN」の撮影ブースに弊社ブランド「ハレ」「ベイフロー」の衣装をご提供するという形で協力させていただきました。身近な存在としてLGBTsの方たちはいましたが、TRPに参加してみて各々が自分らしいファッションを楽しんでいる姿はとても輝いて見えましたし、「私たちと何も変わらない」と再認識する場にもなって貴重な時間でした。

その年の夏には、社内規定で定める配偶者の定義に同性パートナーを追加。結婚休暇や育児・介護休業の取得はもちろん、慶弔見舞金、赴任手当などを同性パートナーにおいても取得できる様に社内制度を拡充して、セクシュアリティによって公平な福利厚生が適用されないということを無くしました。LGBTs当事者の社員にとって「LGBTsに優しい雰囲気の会社」ではなく、制度として彼ら彼女らの生活を保障する環境を整備できたことは大きな一歩かなと考えています。

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LGBTフレンドリーなアパレルのアダストリアの様子

◇◆◇◆◇「LGBTsに向けて施行した制度を利用してもらう雰囲気作りをしていきたい」社員一人ひとりが「Play fashion!」を実現できるように藤本さん、ジョンさんが2020年に取り組みたいこととは?

藤本さん:翌年の2019年も同様にTRPに参加したのですが、今度は「OUT IN JAPAN」への衣装協力は引き続き行いつつ、株式会社アダストリアとしてブース出展をすることが決定しました。3ブランドからレインボーグッズの販売やワークショップを開催し、多くの方々に足を運んでいただきました。その中でも「ビジュリィ」というランジェリーブランドから出した、ユニセックスのレインボーデザインのボクサーパンツがとっても好評だったのを覚えています。またそういった活動を知ってか知らずか、「ビジュリィ」の店舗スタッフからMTFの方がご来店して商品を着用しつつ、ショッピングを楽しんでくださったというお話を聞きました。

ジョンさん:LGBTsフレンドリーな制度拡充に取り組む2018年以前から、性別に捉われずお客様の個性を最大限に引き出すスタイリングやアイテムをご提案することを接客研修を通して各ブランドのショップスタッフの方々には学んでいただいていますので、そういった取り組みもLGBTs当事者のお客様に楽しみながらショッピングをしていただけていることに繋がっているのかなと思っています。

LGBTフレンドリーなアパレルのアダストリアのミートアップ

また、その年はTRPへの参加以外にも弊社が発信元となってLGBTsへの理解と正しい知識を深める場所を提供できないかと考え、「ADASTRIA DIVERSITY MEET UP」を企画・実施しました。

このミートアップでは社内外問わず4名のLGBTs当事者を迎えて、日々の生活で感じるファッションとセクシュアリティに関連するお悩みや逆に嬉しかったことなどを当事者目線でお話しいただくだけでなく、参加した社員との座談会を通してLGBTsアライとしてできることを意見として出し合う時間も設けました。最終的には各々から出たメッセージをグラフィックレコード(対話を構造化してイラストとして残すこと)として落とし込み、社内のカフェスペースに1ヶ月間ほど形として残すことに。ミートアップに参加できなかった社員たちにとっても、LGBTsについて考える時間を与えられたのでは無いかなと思いますし、オシャレなビジュアルで端的に見せるということがより理解を深めるポイントになったような気もしています。

藤本さん:私はこのミートアップに参加したのですが、LGBTsへの接し方という面で改めて気づかされることもたくさんあって。例えば業務上で重い荷物を運ばなくてはいけない時に「男性の方、荷物運びお手伝いいただけると嬉しいですー!」などと無意識に口にしてしまうことがあったのですが、そう言ったこともLGBTs当事者の中にはモヤモヤした気持ちさせてしまうということが分かって、それからは「力持ちの方、荷物を運ぶお手伝いをお願いしますー!」と言ったように、セクシュアリティを限定しない言動を心がけるようになりました。

これらの活動が認められて「PRIDE指標」でゴールドを受賞することができましたが、私個人の考えとしては「制度や考え方が完全に浸透している」とはまだまだ言えないと思っています。2020年度以降はセクシュアリティに限らず、社会的にマイノリティな立場で生きづらさを感じている方々を包括的に支援することができる環境づくりを目指し、貢献できればと思っております。

ジョンさん:今年の3月にCSR活動に深く関わることになり、必然的にLGBTsについても考える時間が多くなる中で改めて私たちの生活の身近に当たり前にいること、逆に社会全体の制度という面からはまだまだ当たり前の存在として考えられていないことを思い知らされました。社会全体ではLGBTsへの理解が進んでいるとは言われていますが、「企業に勤める従業員」という個の存在にフォーカスした時、果たして本当に進んでいるのかと疑問に思うことがあります。

先ほどもお話しした通り、弊社でも2018年に社内規定で定める配偶者定義に同性パートナーを追加しましたが、2020年3月時点で制度が利用されたという例はありません。もちろん、より多様性を認める社会が来ることを見越して策定・施行されたものではあるのですが、LGBTs当事者の社員が仕事に従事する上で、自分らしくいられる環境が整備されていないと思う瞬間が少なからずあるのではないかと考えています。

弊社では「Play fashion!」をミッションとし、一人ひとりの毎日に「もっと楽しい」選択肢をということをヴィジョンに掲げていますが、まずはクローズのLGBTs当事者も含めて少しでも自分らしく、最終的には社内制度を当たり前のように利用できる雰囲気ができるように注力していきたいです。

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株式会社アダストリア
「グローバルワーク」「ニコアンド」「ローリーズファーム」などグループで20以上のアパレルブランドを運営する企業。2018年以降、LGBTsフレンドリー企業としてイベントへの参加や社内制度拡充に努めている。そのわずか1年後である2019年に任意団体「work with Pride」が策定した、職場におけるLGBTといったセクシュアルマイノリティに対する取り組みの評価指標「PRIDE指標」で最高評価であるゴールドを受賞した。

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取材・インタビュー/芳賀たかし
撮影/新井雄大 Twitter@you591105
記事制作/newTOKYO

※この記事は、「自分らしく生きるプロジェクト」の一環によって制作されました。「自分らしく生きるプロジェクト」は、テレビでの番組放送やYouTubeでのライブ配信、インタビュー記事などを通じてLGBTへの理解を深め、すべての人が当たり前に自然体で生きていけるような社会創生に向けた活動を行っております。
https://jibun-rashiku.jp

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