
世界最大級のデジタルトラベルプラットフォーマーであり、恋愛対象や性自認に関係なく、誰もが安心して楽しめる旅の実現を目指す「booking.com(ブッキング・ドットコム)」は、9月に「LGBTQ+と旅の未来を考える共創ワークショップ」を開催した。
当日はLGBTQ+コミュニティから、多方面で活躍する5名がゲストスピーカーとして様々なトピックスを向き合ったほか、後半ではおよそ20名の参加者とグループワークを行った。ここでは、ゲストスピーカー5名が心に残った旅先とは。

ーー旅に求めるのは、自分らしくいられる時間。5人が選んだ心に残る旅先
ルイスさんが心に残る旅先として選んだのは、鹿児島県・奄美大島。
「癒しや新たな刺激、人との繋がりを求めて旅をする人が多いと思っています。それらを特に感じられたのが、初めて訪れた奄美大島でした。外国人であること、そしてLGBTQ+当事者であること関係なく大歓迎を受けて人の温もりに触れられ、魚介類を使用した料理はどれも絶品でした。そして、美しいビーチを眺めながら感じたのは、自分自身がこの場所にいていいのだという安心感だったんです」

中島さんは秋田県の田沢湖にある行きつけの宿を挙げた。
「私は秋田県の田沢湖近くにある小さなお宿に毎年訪れていて、4泊のうちに積読していた本を読むという過ごし方が定番になりつつあります。お宿の方とお話をしていても、LGBTQ+に関する仕事に携わっていることや一人称が「僕」であることについて、自然に受け止めてもらえて。特別扱いではなく一人のゲストとして迎えられている、その感覚がとても嬉しいんです」
「田沢湖という場所も含めて、秋田は私にとって“一年の中で自分に戻れる時間”をくれる大切な場所になっています」

仕事の都合上、全国を飛び回ることが多いという内山さん。心に残った旅先をパートナーと振り返ったときに、両者真っ先に頭の中に浮かんできたのが箱根だったそうだ。
「ロケーションとしても魅力的であることは言うまでもないですが、それ以上に滞在した宿での時間が本当に心地が良くて。館内着は女性、男性ではなく男女兼用のカッコいいデザインのもので、すごく気に入りました。
「また、温泉も個室や貸切といった様々なタイプに分かれているため、自分たちのスタイルに合わせて過ごすことが出来たのが嬉しかったです。要は、私たちが宿に合わせるのではなく、宿が私たちに選択肢を与えてくれたことで、ノンストレスなひとときを過ごせました」

オウィンさんは内山さんと同じく箱根、そして大阪で過ごした時間を振り返った。
「私はアジア系アメリカ人、パートナーは日本と中国をルーツに持っています。日本にいると度々、「外国人としてどう見られているか」「カップルとして受け入れられているのか」と不安になることもありますが、箱根の宿では、それらを一切気にせずに過ごせました。浴衣も中性的なデザインで選びやすく、貸切温泉もある。何より、ただただ一人のゲストとして自然に歓迎されている感覚があり、とても嬉しかったことを覚えています」
「大阪で参加したLGBTQ+のイベントでも、宿泊施設にレインボーフラッグが掲げられているのを見て、日本社会が変わっていることを実感しました。少しずつではありますが、その一歩一歩が素晴らしいと思いましたね。日本は人を敬う文化が根付いていると感じますし、そのエネルギーを旅の中で改めて体験できました」

スティーブンさんは伝統と自然に浸れる場所であるとともに、親友の家族と心通わせた瞬間に思いを巡らせながら四国を選んだ。
「高知県では美しいビーチ、徳島県では夏の阿波踊りなどを見て心が奪われました。数ある素晴らしい経験の中でも特に印象に残っていることは、愛媛県にある親友でアシスタントの鈴木さんのご実家を訪れたときのことです。そこでは私のバックグラウンドや肩書きではなく、息子の一友人として、ご家族が温かく迎え入れてくれてとても嬉しかったんです」
「日本には大都市だけでなく、小さな村や地域にもたくさんの魅力があります。そうした場所に出向くことで、多くの学びや発見があり、結果として自分自身を誇りに思える旅に繋がっていくと考えています」

ーー誰もが安心して旅を楽しめる社会になるために。グループワークを通して深めたLGBTQ+コミュニティが必要としていること
良い思い出として心に残る旅があったと感じる反面、違和感を抱くことや差別的な言動に直面したことも少なくないという。中島さんは宿泊施設の予約サイトにおいて、男性と女性の2択しか設けられていない性別欄に違和感を感じ、旅を計画する段階で不安に駆られて楽しめないこともあるそうだ(ブッキング・ドットコムではノンバイナリーの選択肢も設けられている)。
また、スティーブンさんは自身が黒人であることで、いの一番にフロントでパスポートの提示や居住地の確認をされるとのこと。同行する鈴木さんはスムーズに受付が進むのに、自分自身は歓迎の言葉ではなく安全な人かどうかを見極められることに対して容認できないと話をした。続けて、一番最初するのではなく、歓迎を表す声掛けであってほしいと訴えた。
その後、参加者はゲストスピーカーを交えた数組に分かれて、LGBTQ+当事者を迎え入れる宿泊施設における配慮とは何なのかというテーマのもと議論。それぞれのグループでまとまった意見に双方が耳を傾け、多角的な観点を養える有意義な時間をもって幕を閉じた。

なお、ブッキング・ドットコムではAIを用いて口コミ投稿を常時監視しており、LGBTQ+コミュニティに対する差別的言動があったとされる内容については、該当する宿泊施設に事実確認を行う体制が整備されている。
なお、事実が認められた場合は掲載停止措置を講じ、LGBTQ+コミュニティに対する適切な対応を求めるほか、必要であればLGBTQ+研修の受講を促すとのこと。 毅然とした対応でLGBTQコミュニティの安全を第一に考える、ブッキング・ドットコムで心に残る旅の計画を立ててみるのもいいかもしれない。
取材・文/芳賀たかし
記事制作/newTOKYO