“20歳過ぎたら死ぬしかない”トランスウーマンたちの苦悩を描いた実話「ブルーボーイ事件」で問題意識を!

映画ライターのよしひろまさみちが、
今だからこそ観て欲しい映像作品をご紹介するコラム
「まくのうちぃシネマ」第74回目

しれっとコールドスリープから覚めました。また続けて旬のクィア映画を紹介できることを喜びつつ、早速参りましょう。今回は『ブルーボーイ事件』!

五輪やら万博やら、国際的なイベントが行われる前後に必ず裏で起きるのが「日本以外の人の目に都合よくないものを排除しよう」運動。現実問題、2020東京五輪のときもありましたし、今年の大阪万博の前にもちょっとした問題になったのを覚えている人いるでしょ? 隠したところでいなくなるわけでもないし、問題が根本的に解決するわけでもないのにね〜。で、『ブルーボーイ事件』は、1964年の東京五輪直後に起きた実際の事件をベースにした社会派でございます。

五輪後の好景気真っ只中の東京で、警察を悩ませていたのはブルーボーイと呼ばれる女性たち。彼女らは戸籍上は男性で、性別適合手術を受けぬまま売春をしていたんですね。摘発しようにも風営法にひっかからない彼女たちをどうにか排除しようとした警察は、彼女らの一部に性別適合手術を施した医師を逮捕。優生保護法違反の罪を着せられた医師を救うため、当事者であるトランスウーマンたち裁判で証言をすることに……というお話。

これ、ググると裁判の結果まで分かっちゃうくらいの大事件なのに、映画になるまで知らなかったこと山盛り。そもそも優生保護法違反って……っていうこともだけど、当時のトランスウーマンたちが「20歳過ぎたら死ぬしかない」っていう苦悩を抱えていたことなどなど。

今とは違いすぎる状況、当事者の思いを知るには最強の映画になっていますの。トランスの話じゃん、というゲイやレズビアンの皆さん。そうでもないのよ……。彼女らと同じことを言っていたトランス以外の性的マイノリティは、ちょっと前までたくさんいたし、なんなら今でも似たような思いを抱えて言葉にはできない人がいるんだから。自分ごとの問題意識を持ってスクリーンへ!

ブルーボーイ事件
監督・脚本:飯塚花笑
出演:中川美悠、中村中、イズミ・セクシー、山中崇、錦戸亮 ほか
配給:日活、KDDI
公開:現在、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
https://blueboy-movie.jp/

文/よしひろまさみち Twitter@hannysroom
イラスト/野原くろ Twitter@nohara96


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