アムステルダムのゲイストリート、レグリースドワルス通りに面するゲイクラブ「CLUB CHURCH」は市を代表するホットスポットの一つだ。アンダーウェアやネイキッドなど曜日ごとに異なるドレスコードが設けられ、連日観光客を含め賑わっている。
本来であればクラブ内は撮影NGなのだが、ドラァグクイーンでオーナーのジェニファー・ホープレッツさんこと、リチャードさんが特別に案内をしてくれるとのことで撮影オーケーに(THANKS)。ベールに包まれた「CLUB CHURCH」をゆっくり探訪していこう。
ーー「CLUB CHURCH」で満たすフェティシズム。
18歳から80歳まで幅広い年齢層のゲイが訪れるという「CLUB CHURCH」は、ダンスフロアにバー、ダークルーム、トイレに至るまでジェニファーさんのこだわりが満載だ。
内装はその名前の通り、キャンドルライトやシスター像、十字架、ステンドガラスなどといった教会のイメージでまとめられ、1FフロアステージにはBDSMショップ「MR.B」のプリントが施された巨大なブリーフがアイコンとして掲げられている。
バーカウンターには種類豊富なアルコールドリンクが並んでいるため、フロアで踊る男達を眺めながら飲むという過ごし方も良さそう。もちろんソフトドリンクもあるから、お酒が苦手な方も心配なし(ソフトドリンクは、リプトンのティーソーダが一般的)。
ちなみに取材時にはバーテンダーとして中国人の若いゲイも在籍しており、アジアにルーツを持つ人にもオープンな雰囲気なのも嬉しいポイントだ。
ジェニファーさんにお店をオープンした理由を聞くと「ダークルームやセックスパーティが元々好きだったから。ストレートでしょ(笑)? ただ、楽しくて喜びを得られる場所である一方で、ネガティブなイメージを抱かれる場合が多いのも事実。ここでしか出会えない友人や未来の恋人がいるかもしれないという、ポジティブな面をもっと知って欲しくて続けてるの」と、笑顔で答えてくれた。
彼女に連れられるがまま階段を降りて、B1Fへ。
地下は主にセックスのためのフロアとなっており、トイレやブランコなどが設けられている。もちろんコンドームも大量にストックされているので、安全にセックスを楽しみたい人にもおすすめだ。なによりインパクト大なのはディックウォッシャーと呼ばれる、陰部専用シャワー。ここでキレイに洗ってから、様々なプレイを心ゆくまま楽しんでほしい。
2Fも同様、クルージングや衆人の目に晒されるブランコなど多様なセックスを楽しめる作りとなっており、連日多くのゲイが足を運ぶナイトスポットであるというのも納得の作りとなっている。
「若い子は興味があってもフェティッシュな人たちが集まる場所へ行くのが恥ずかしかったり、新しい環境で照れちゃったりすることがたくさんあると思うんだけど、全ては慣れだと思うの。私も若い時は恥ずかしかったけれど、勇気を出して一人で行ってみたら楽しくて、今では自分でクラブやゲイサウナを経営するまでになった。歳を重ねるごとにそういう場所へリラックスして行けるようになるから、心に余裕ができるお年頃になったら「CHURCH」にも足を運んでみて! もちろん、年齢関係なく大歓迎!」と、newTOKYOへコメントを寄せてくれた。
ーー長年、アクティビストとしても活動してきたジェニファー・ホープレスさん。アムステルダムのゲイコミュニティについて教えて!
さて、ここまでクラブ内を案内してくれたジェニファー・ホープレッツこと、リチャードさん。実は、20年に渡りHIVやLGBTQコミュニティに対するスティグマを無くす活動を献身的に行い、性の自由を訴えてきたドラァグクイーンアクティビストとしての一面もあるのだ。
いわば、アムステルダムのLGBTQコミュニティにおける大御所。せっかくなので、市内のゲイコミュニティへ向けた活動についても、少し教えてもらおう。
ーー日本ではPrEPが急激に普及し始めているのですが、アムステルダムのゲイコミュニティではどうですか?
アムステルダムは、HIVや性病から自分の身を守らなければならないという意識がとても高い印象を受ける一方、年間400人のペースで新規HIV陽性者が確認されて始めていることから、その意識が低下傾向にあることが分かります。現状に対しては、とても危機感を持っています。なので、5年間の歳月をかけて感染件数0件を達成することが、私の目標の一つです。そのためにはHIV検査やコンドームを用いたセーファーセックス、そしてPrEPを浸透させることが効果的だと考えています。
オランダにおいて、PrEPはジェネリック医薬品として扱われているので、1ヶ月分およそ17ユーロ(約2,500円)という安価で手に入れることができます。
医師からのみ購入することが可能で、HIV、腎臓、膵臓のテストを行ったうえ、服用者は3ヶ月ごとにSTIテストを受けることが定められています。HIV検査はウォータル広場にある「Aids Healthcare Foundation」にて無料で受けることもできますよ。
ーーなぜ、このような取り組みを続けているのですか?
全て自分の興味の範囲であるから、続けられているのだと思います。セックスポジティビティというものをドラァグクイーンという形で発信・表現することにも理由があって、一番はやっぱり注意を引くことができるでしょ? 歴史的に考えても政治的な活動であったり、チャリティでお金を集めたりするときには、ドラァグが用いられることが多かったんだよ。メディアのマイクやカメラが向けられて発信できる可能性が高いからね。もちろん、これからもこの活動は続けていくさ。
ーーゲイコミュニニティのセーフスペースを確立させたリチャードさん。性に真面目に、そしてエンタテイメントとしても空間を提供する彼が経営するゲイクラブ「CHURCH」、そしてゲイサウナ「NZ」で異国のゲイライフを満喫してみてほしい。
■CLUB CHURCH
Kerkstraat 52, 1017 GM Amsterdam
https://clubchurch.nl/
Instagram@clubchurch
Instagram@jenniferhopelezz
取材・文/芳賀たかし
写真/EISUKE
通訳/桑原果林(ソウ・コミュニケーションズ)
記事制作/newTOKYO