2025年1月17日(金)より全国公開される、A24初のミュージカル『ディックス!! ザ・ミュージカル』。
海外メディアでは「エッチで、やり過ぎで、ド派手なカーニバル。大・爆・笑♡」(New York Post)、「独創性にあふれた狂気の映画」(Philadelphia Gay News)など、強烈ながらも可愛げのあるダーティージョークと理解が追いつかない(そもそも理解してほしいと思っていない)展開の速さがユーモラスだと評価されている。
観客置いてけぼりの“ヤリ逃げ感”が清々しくもあり、笑いを増長させている本作。脚本、主演、楽曲、エグゼクティブ・プロデューサーを務めた、オープンリーゲイのジョシュ・シャープとアーロン・ジャクソンが、オンラインインタビューで想いを語ってくれた。
ーー「愛こそすべて」というキャッチコピーのもと、ヤりたい放題! 観客置いてけぼりの疾走感は「納得するよりも大笑いしてほしかったから」
ーー本作鑑賞後、勢いで押し切られたことがおかしくて、何度も思い出し笑いをしました。観客に丸投げするスタンスは、原案を小劇場で公演していたときから変わっていないですか。
ジョシュさん:全く変わってないよ。『ディックス!! ザ・ミュージカル』の原案となった舞台「F*cking Identical Twins」は2015年、スーパーマーケットの地下に併設された小劇場で公演したんだ。やりたいことを全て詰め込んだ、クレイジーでエネルギッシュなものにしたいと思ったら、ああなったって感じ(笑)。その当時は、まさか映画化されるなんて思ってなかったから、びっくりしました。
ーーゲイである二人が、自信家で傲慢なストレート男性のクレイグとトレヴァーを演じるアイデアは秀逸さを感じました。あの二人のキャラクターはどのように生まれたのでしょうか。
アーロンさん:ドラァグクイーンが女性性を過大に表現する、いわゆるキャンプからインスピレーションを受けています。もしも、ゲイの僕たちがストレート男性のトキシック・マスキュリティ(=有害な男らしさ)を全開に押し出したキャラを演じたらどうなるんだろうって。
従来の映像作品では、ストレート男性がLGBTQ+や女性をからかう描写って、たくさんされてきたと思うんだけど、その逆はあまりなかったと思うんだ。そのことをジョシュに話してみたら、「いいね!それやろうよ!」って乗っかってくれたんです。
それに今、ストレート男性がゲイ役を演じると大体オスカーがもらえちゃう流れがあると思うんだけど…ゲイ男性がストレート男性を演じたらどのように評価されるのか、実験的な作品でもあるんだ。今は、その結果待ちをしているところでもあります。
ーークレイグとトレヴァーを演じた感想を教えてください。
アーロンさん:嫌なところばかりが目立つけど、愛らしい側面もあって憎めないというか…このキャラクターを生み出し、演じられたことは嬉しいね。
ジョシュさん:最っ高に楽しかったよ(笑)。
ーーミーガンが出演するミュージカルシーンはとても驚いたのですが、バースはミーガンが書いたのですか。
アーロンさん:ミーガンの出演が決まったとき、当初は彼女にお願いしようと思っていたんだけど、「二人に考えてもらったもので、表現してみたい」と言ってもらえたんだ。それから、バースを一部書いて送ってみたら「すごくいいね! 残りも待ってる!」と返信が来て。完成版では彼女が自分のものにするために少しだけ変えているところもあるけど、とても良いシーンになりました。
ジョシュさん:リハーサル初日に「私も下品な表現をするほうだけど、アンタ達は相当ヤバい。最高の空想映画だと思うわ」と言ってもらえたことが、今でも心に残ってます。
ーー「愛こそすべて」というキャッチコピーのもと、無理やり納得させられる結末へ軌道修正していくことに笑わせられました。
ジョシュさん:ラストは納得がいくような、いかないような…曖昧な感じで終わらせたかったんだ。ベースはストレート男性をからかいまくる内容ではあるけど、最終的には全人類をからかいたくて。クレイグとトレヴァーは一卵性双生児という設定で話が進んでるけど、そもそも僕たち全く似ていないし(笑)。
ーー結局のところ、下水道ボーイズって何だったんですか?
アーロンさん:「愛」を体現しているものであり、パパの勘違いの視点から見た「ゲイカルチャー」を体現したものでもあるって感じかな。
ーー最後に、どのような人に本作を観てほしいですか?
ジョシュさん:僕らはこの映画が、かなり特殊でニッチになっちゃったねとよく話しています。でも、僕には物事は特殊であればあるほど普遍的だ」という持論があるんです。
アーロンさん:映画館に行って、大笑いして、最高に楽しい歌を聴いて、映画館を出て「あー最高だった。もう一度観たい!」って思うときがありますよね。昔はもっと、この感覚が一般的だったと思うんです。だから、この作品で皆さんにそういった体験をしてほしいと心から願っていますし、そんな気持ちになってくれたらとても嬉しいです。
◆ 『ディックス!! ザ・ミュージカル』 1⽉17⽇(⾦) 新宿ピカデリー、渋⾕ホワイト シネクイントほか全国ロードショー
https://transformer.co.jp/m/dicksthemusical/
X@dicks_movie
ストーリー/ニューヨークのトップ・セールスマンとして働くクレイグ・ティトル (ジョシュ・シャープ)とトレヴァー ・ブロック (アーロン・ジャクソン)は、女と権力が大好きなモテ男。最高のシングルライフを過ごしているはずなのに、なぜか彼らの心は満たされず、大切な何かが欠けているという思いがある。そんな二人はある日、運命の糸に引き寄せられるように、新しい職場で出会う。最初は互いをライバル視するものの、やがて自分たちが生き別れの双子なのだと気が付く。そう、完璧なはずの彼らに足りないものは家族だったのだ。そこで二人は離婚した両親、エヴリン (メーガン・ムラーリー) とハリス (ネイサン・レーン) を復縁させようと企てるものの、親たちは複雑な事情を抱えていて……。
監督:ラリー・チャールズ 『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ⽂化学習』
製作:ピーター・チャーニン 『グレイテスト・ショーマン』 ⾳楽:マリウス・デ・フリース『ラ・ラ・ランド』『ムーラン・ルージュ』 出演:ジョシュ・シャープ、アーロン・ジャクソン、ネイサン・レーン『ライオン・キング』、ボーウェン・ヤン、ミーガン・ジー・スタリオン
2023年/アメリカ/英語/86 分/ビスタ/カラー/5.1ch/原題:DICKS THE MUSICAL/R15+ ⽇本語字幕:⽯⽥泰⼦/提供:トランスフォーマー+シネマライズ 配給:トランスフォーマー
取材・文/芳賀たかし(newTOKYO)
記事制作/newTOKYO