ただ生きるため。難民として見知らぬ国へと逃れたゲイが明かすドキュメンタリー映画「FLEE フリー」が公開!

ーーある日小さな田舎町にやってきた、社交的で勤勉なアフガニスタン出身の少年。
現在の彼は研究者として成功し、パートナーと共に充実した生活を送っている。しかし、彼には親友やパートナーにさえ20年以上語ることができなかった秘密があった……。

難民が直面する壮絶な現実、同性愛者の存在が許されない国でゲイとして生きることへの苦悩とは。アニメーションという手法で現実と過去を繋ぐ魂のドキュメンタリー映画『FLEE フリー』が6月10日(金)より全国公開。

90年代のある日、デンマークの空港で一人の少年が職員に声をかけた。
「僕は難民です、保護してください」
少年は身分を証明するものを一切持たず、そして名前もなかった。

劇中にインタビュアーとして登場するのは、今作の監督であり、ラジオ・ドキュメンタリー作家でもあるヨナス・ポヘール・ラスムセン。
今から25年ほど前、当時15歳のヨナスが暮らすデンマークの静かな町に、難民の少年アミン・ナワビ(仮名)がやってくる。長年の友人となったふたりだが、彼はこれまで誰にも自分の過去を語ることはなかった。

この作品は過去の出来事を忠実に再現しつつも残酷な現実を抽象的に表現するため、そしてプライバシーを保護するため、ほぼ全編がアニメーションで描かれている。しかし、インタビューに答えるアミンの声は本人のものである。

アミンが少年時代を過ごした当時のアフガニスタンは内紛と貧困で荒廃し、少年が強制的に徴兵されていた。生きて帰れる保証はなく、子どもたちは政府に見つからないよう、隠れて生きるしかない。
アミンの父親は政治紛争に巻き込まれて連行されたのち行方不明になっている。そのため、一足早くスウェーデンに脱出した長兄が、家族を国外逃亡させる違法ブローカーへの高額な資金調達のために働き詰めていた。

違法ブローカーを通す国外脱出は、精神的にも体力的にも厳しい命がけの方法しかない。一度は一家揃って欧州へと逃亡するものの、さらなる過酷な環境が待ち受けており、ロシアに強制送還されてしまう。
ふりだしに戻されてしまった一家は、資金不足の事情もあり、家族バラバラに国外逃亡をする選択をする。そして、次兄は幼いアミンを逃がすため、母とともにロシアに残ることになる。

自分を救うため、時には命を顧みない献身的な犠牲を払う家族に対し、アミンが恐れていたもの。それは同性愛者であるという秘密だった。彼にとって、家族を失望させることは自分に唯一残されたアイデンティティを失うということでもある。

長兄が語り掛ける「スウェーデンの女性は美しいぞ」の言葉がアミンを追い詰める。
それは、アミンに将来の希望を抱かせるための言葉であると同時に、家族を救うために自分の人生を犠牲にして働き詰め、最愛の恋人を失った兄の、心の痛みが含まれた言葉でもあるから……。

逃亡中に出会った少年に抱いた淡い恋の思い出、現在のパートナーにも明かせない過酷な過去。強制送還を避けるため自分の過去も名前も捨てなければならなかった孤独。人生を犠牲にして自分を救った家族に対する生きることの責任感。

同性愛者であるアミンと家族の絆の行方、そして現在のパートナーと選ぶ未来とは?
この作品で描かれる生きることの価値と希望、真実の愛を、あなたにも届けたい。

ストーリー/故郷とは、ずっといてもいい場所ーー。アフガニスタンで生まれ育ったアミンは、幼い頃、父が当局に連行されたまま戻らず、残った家族とともに命がけで祖国を脱出した。やがて家族とも離れ離れになり、数年後たった一人でデンマークへと亡命した彼は、30代半ばとなり研究者として成功を収め、恋人の男性と結婚を果たそうとしていた。
だが、彼には恋人にも話していない、20年以上も抱え続けていた秘密があった。あまりに壮絶で心を揺さぶられずにはいられない過酷な半生を、親友である映画監督の前で、彼は静かに語り始める…。

■FLEE フリー
2022年6月10日(金)新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン池袋 ほか全国ロードショー
https://transformer.co.jp/m/flee/

2021年/デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フランス合作/89分/監督:ヨナス・ポヘール・ラスムセン/製作プロダクション:Final Cut for Real/製作総指揮:リズ・アーメッド、ニコライ・コスター=ワルドー/後援:デンマーク大使館/配給:トランスフォーマー © Final Cut for Real ApS, Sun Creature Studio, Vivement Lundi!, Mostfilm, Mer Film ARTE France, Copenhagen Film Fund, Ryot Films, Vice Studios, VPRO 2021 All rights reserved

記事制作/みさおはるき(newTOKYO)