約3年ぶりの個展開催。書の冒険にみる、書家マーヤ・ワカスギ「Fleurir ensemble – 共に咲く喜び-」からのメッセージ。

書道家のマーヤワカスギ

フランス・ボルドーを拠点に活躍する書家マーヤ・ワカスギ(Maaya Wakasugi)氏。
芸術的な表現は世界でも高く評価され、昨年には岡山県初のプライドパレードを祝したラッピングトラック「虹トラ岡山」や、今年9月には「パリと日本」をテーマにユニクロ・マレ店にてコラボレーションTシャツ(UTme!)を手がけた。

書家の枠を越え、様々な人々の想いをもつないでいくマーヤ氏。10月17日より開催される3年ぶりの国内個展『Fleurir ensemble – 共に咲く喜び-』には、新たな“生きる喜び”が宿されているようだった。

書道家のマーヤワカスギの作品

ーー本展『Fleurir ensemble – 共に咲く喜び-』ではパリの個展で大成功を収めた“花シリーズ”を初公開されますが、“花シリーズ”を制作するにあたった経緯や作品に込めた想いなどをお聞かせください。

フランスに住んでからキャンバスに作品を書く機会が増えてきました。2年前にパリのギャラリーに所属してからギャラリストのファビアーニ美樹子さんと共に二人三脚で活動してきました。キャンバスに向かう方向性を後押しいただき、キャンバスを舞台に本格的に制作する事になりました。

フランス人の多くは、漢字やひらがな、カタカナを読めません。文字を越えた中で私の筆致を武器に美しいものを生み出したいと思い、去年この「花シリーズ」が生まれました。作品から花の持つエネルギーや花の力から得られる開放のエネルギーを表現できたら嬉しいですし、私の今後の土台になるであろう大事なステージだと思っています。

書道家のマーヤワカスギの部屋の様子

ーー武者小路実篤氏の言葉より書の発想を得られたそうですが、彼のどんな部分に興味を惹かれ、今回のシリーズに影響を与えられましたか?

「共に咲く喜び」の言葉は武者小路実篤氏の「天与の花を咲かす喜び 共に咲く喜び 人見るもよし 人見ざるもよし我は咲くなり」の一部分から発想を得ました。

学生時代から「共に咲く喜び」のお題は書家がよく書くモチーフの一つでもあり、ずっとあたためていました。私的に解釈すると「天からそれぞれ一人ひとりに与えられた自分自身の花を咲かす喜びを、そして生きる喜びを共に分かち合うことができたら幸せ」を伝えるものになればと思っています。
新しいご縁や久しぶりの再会、3年ぶりの個展なので、積もる話にも花を咲かせたいです。

書道家のマーヤワカスギの作品

ーー前回の国内個展「循環」では、人生走り続けてきた中で一旦立ち止まり、そこから見えてきた大切なものたちの幸せを軸に、愛することの循環を通して、生きる喜びを届けました。今作では、自分自身の花を咲かす力を通して、生きる喜びを届けます。マーヤさんが作品づくりに置いて、 “生きる喜び”に総題を置く理由はなんなのでしょうか?

生きる喜びって、なんだろうと毎日自問自答し続けています。今朝、再確認したのはやっぱり心身ともに健康でいることが、生きる喜びだと思います。

2019年の春に人生まさかの大病した時に学んだことがベースにあります。このコロナウイルスの事やロシア・ウクライナ戦争、地球温暖化など、ますます地球に住む全ての生き物にとって生きにくく、世知辛い世の中です。そんな中、自分のできることは自分自身の心身ともに健康であること、そして美しい作品を生み出すことが目の前にいる家族、友人、その他の方々へ幸せを分かち合える第一歩に繋がると思うからです。

ーー多岐にわたる活動の中で近年では、「様々な人々の想いをつないでいく」企画も多く見受けられます。例えば、昨年の虹トラ岡山のデザインでは、レインボフラッグを生み出したベイカーさんの想いと日本のLGBTQへの可視化への想いの橋渡し、また、現在開催されているUTMe Tシャツでは「日本とパリ」をテーマに、異なる文化の交流というメッセージが伺えます。どちらも「心をひとつにつなぐ想い」があるように見受けられますが、マーヤさん自身はどのようにご自身の活動を捉えられていますか?

「心をひとつにつなぐ想い」は強く意識していませんが、作品を制作するにあたって「共に人間なのだと言って、笑って許しあえたらどんなに素敵か」という想いは学生時代から変わっていません。

ーー新しい価値観の創造、異文化とのコラボレーションなど、墨だけでなく前衛的な表現や現代アートの可能性を取り入れる「書の冒険」を数多く生み出していますが、今後の活動の展望や届けていきたいメッセージなどがあればお聞かせください。

自分のスタイルを完成することがゴールなので、制限することなく自由に制作してゆきたいです。またフランスに住んでいることもあり、日増しにゲイである自覚がなくなってきているので、このまま枠を超えてゆきたいです。もちろん、日本のLGBTQの現状が2022年にもなって後進国であることは危惧しているので、引き続き「虹トラ」のプロジェクトをはじめ、自分のできる創作活動は続けてゆきたいです。

そして、今回3年ぶりとなる日本での個展開催です。毎日在廊しておりますので、お近くにお越しの際はぜひ、お立ち寄りいただければ幸いです。

Maaya Wakasugi展
Fleurir ensemble – 共に咲く喜び-

期間|2022年10月17日(月)〜27日(木)
時間|11:00〜18:30(日曜休廊)
会場|ギャラリー和田(〒104-0061 東京都中央区銀座1−8−8三神ALビル)
https://www.maayamaaya.com
Instagram@maayawakasugi

写真/1・3枚目 ©Gilles Bassignac、2・4・5・6・7枚目 ©Kasono Takamura
記事制作/newTOKYO

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