2001年の設立当初からダイバーシティ経営が当たり前だった。 株式会社ゲットイットが今、改めて「多様性」をテーマに掲げた理由とは?

ダイバーシティ経営のゲットイットのインタビュー

ITハードウェアサービスおよびキッチン用品輸入を軸に事業展開している株式会社ゲットイット 。設立されてから19年目となる2020年は、以前から取り組んでいるダイバーシティ経営をさらに加速させるべく「多様性」に重きを置いた。社内制度の拡充や採用活動を通して「LGBTs含め社会的にマイノリティとされる方たちが個性を最大限に発揮できる場所でありたい」と話すのは代表取締役・廣田優輝さん(左)と採用担当・加藤綾さん(右)。
「当たり前」に捉われず多様性あふれる社員が働くゲットイットが、なぜこのタイミングで改めて社内規定や採用方式の拡充を決めたのか。
「ひとつの会社から動き出すLGBTsフレンドリーな取り組み」を伺った。

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ダイバーシティ経営のゲットイットの廣田優輝

――社員一人ひとりの声に向き合い、制度・ヒトと共に多様な広がりをみせてきた社内。一方、社外に目を向けてみると、そんな当たり前の環境が当たり前ではなかった?

加藤さん:株式会社ゲットイットは設立当時の2001年、まだ「ダイバーシティ」といった言葉が社会へ浸透する以前からセクシュアリティやナショナリティ、年齢、学歴、障害の有無に関わらず弊社が求めている能力をお持ちであるか否かを重要視した採用方針でした。そのため19年経過した今、自然と多様な社員が在籍するダイバーシティ企業へと成長したのだと考えています。社員から上がった声に対しては都度向き合い対応してきましたが、表向きにダイバーシティ企業として特別な採用フローや制度を設けるなどは行っておりませんでした。

ただ、弊社のような採用基準で社会的マイノリティの立場に置かれている方たちを当たり前の存在として受け入れる企業が少ないという気づきがありまして、雇用問題の解消や個性を大切にして働ける環境を一人でも多くの方に知ってもらうためにも、今年度のテーマを「多様性」としました。

廣田さん:今年度のテーマを決める上で19年間、何を大切にしてきたのかを振り返ってみると一人ひとりの個性、在り方だと思う気持ちが強くて。例えば勝どきの倉庫にはトランスジェンダーの社員が勤務しているのですが、「男性、女性どちらのトイレを使用して良いか悩ましい」という相談を受けたことがあるんです。幸いにも倉庫にはトイレが3つあったため、内1つを入社前にオールジェンダーとして誰でも使用できるようにしました。ただ、本社においては賃貸オフィスでトイレは2つ、一度は男性用を兼用にする話も出たのですが、その際に女性用ではなく男性用トイレを兼用とする明確な理由が見つからなかったため、現在も慎重に検討している最中です。ちなみに、倉庫勤務の方たちに関していえば会社が用意した制服、もしくは私服勤務のどちらかを選択できるようになっています。

また、婚姻関係がある社員のみに提供されていた福利厚生制度を、籍を入れない事実婚の形をとっている社員にも同様に提供するという事例が2件ありました。この件に関しては社員本人が声を上げ弁護士と共同で誓約書を作成し、会社としてその誓約書を受理したという形になるのですが、同性パートナーも同様、同性パートナーシップ証明書がなくともこのような誓約書などがあれば受理されるケースがあります。社内から挙がる声には応えてきた一方で、社外の方たちからの声に耳を傾ける、逆に私たちの働き方を発信する機会は設けてきたかと問われると決してそうとは言えません。少しずつではありますが多様な生き方を尊重する社会へシフトしている今だからこそ、ゲットイットが大切にしてきた多様な人財を迎え入れる体制をオープンにした上で、ダイバーシティ採用や制度を拡充する必要があるなと思い様々な取り組みをスタートさせました。

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――本年度からスタートさせたLGBTs採用を始めとするダイバーシティ採用。その先に目指す組織のあり方とは? 

廣田さん:その一環としてスタートさせたのが、LGBTs就職支援・求人に特化した『JobRainbow』への求人掲載です。昨年10月頃に代表の星さんにお会いして研修を受ける機会があったのですが、想像するよりも人口に対するLGBTs人口が多いことに驚きました。そうした現状の中で従来のように社内で声が上がってから取り組むのではなく、弊社に興味を示してくれたLGBTs当事者の方たちに「彼ら彼女らの存在を当たり前のように受け入れてきたこと、そしてなお一層多様な人財を受け入れる体制を拡充させていくこと」を私たちが先に明示することが必要だと感じたんです。

加藤さん:実際にJobRainbowを通して社員募集を行なっている最中ですが、社員は弊社がどの求人サイトに求人掲載を掲出しているのか把握しているため、新たに入社して下さる方の職種によってはどの媒体から応募して入社したのか、おおよその察しがつきます。まず、そのことについては、必ず本人に自身のセクシュアリティが社員に認知されている可能性があることを事前に伝えています。その上で、採用後に本人が弊社でどのような自分でありたいのかをヒアリング、そうすることで可能な限り配慮した環境を整備していきます。

廣田さん:ただ、会社には多様なバックグラウンドを持つ社員が在籍しており、互いに個性を尊重する「ゲットイット文化」が根差しています。またLGBTs研修も受けているため、以前と比べても自身の発言で傷つく人がいるかもしれないと先立って考えるクセもついていますので、ご自身のパーソナルな面が傷つくといったことはほとんどないかと思います。

LGBTsの方や障害をお持ちの方など多様なバックグラウンドを当たり前に受け入れ個性として捉えてきた弊社。一方、日本社会においてはまだまだ社会的マイノリティの方たちを受け入れるダイバーシティ経営が当たり前ではない現状があります。ただ、ダイバーシティという言葉を考えた時に必ずしもセクシュアリティやナショナリティなどカテゴライズできるようなことだけに特化した制度を設けるのではなく、各々が持つ意見やアイデアも個性の一つで、ダイバーシティという言葉に当てはまるような気がしています。

そういった社員一人ひとりの個性が反映された発言が混ざり合うことでより良い労働環境になるという考えがあるので、これらの循環が止まらぬよう、より一層ダイバーシティな考えやバックグラウンドを持つ人財が集まる場所としてステップアップしていけたらと思っています。

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株式会社ゲットイットのインタビュー

■ 株式会社ゲットイット
2001年創業。IT事業部は35万台以上のサーバー取扱い経験を活かし専門知識を提供。企業がハードウェアで困ったらまず相談する会社を目指し、持続可能な運用を実現する「サスティナブルコンピューティング」を推進。キッチン事業部は、洗練されたライフスタイルを提案する家庭用品を輸入。主にヨーロッパのメーカーによる洗練されたカトラリーを日本国内およびアジアの小売店向けに卸営業している。
https://www.get-it.ne.jp

取材・写真/芳賀たかし
記事制作/newTOKYO

※この記事は、「自分らしく生きるプロジェクト」の一環によって制作されました。「自分らしく生きるプロジェクト」は、テレビでの番組放送やYouTubeでのライブ配信、インタビュー記事などを通じてLGBTへの理解を深め、すべての人が当たり前に自然体で生きていけるような社会創生に向けた活動を行っております。
https://jibun-rashiku.jp

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