12年来のパートナーと男二人暮らし。ひでまるさんを整理収納アドバイザーという生き方に導いた“心の余白”の作り方

心を落ち着かせて、ちょっと先の未来の自分について考えてみる。そんな気持ちのゆとりをつくる上で、部屋の整理が有効な手段の一つだと話すのは、整理収納アドバイザー兼ルームスタイリストのひでまる(安藤秀通)さん。

12年来のパートナーと男二人暮らしを送るリノベーションマンションの一室は、法則に則った整理収納術と二人の想い出が共存する、温かくも洗練された空間にまとめられている。2年前まで溢れんばかりの物に囲まれて生活を送っていたと話すひでまるさんが、余白のある暮らしの中で見つけたものとはーー。

ーー収納を増やすのではなく、人生に必要なものを残すという選択で拓けた新しい生き方

2021年2月までビジュアルマーチャンダイザーとして水族館や美術館に併設されたショップの運営会社に勤めていました。商品を美しく魅力的に見えるようディスプレイすることを仕事にしていた一方、当時住んでいた自宅は仕事で扱う大量の商品サンプルで溢れ返っていました。次第に掃除や洗濯も疎かになって…。今思えば同棲しているパートナーともちょっとしたことでケンカになってしまったり、モヤモヤして考えがまとまらなかったりすることが多かったです。

整理収納に強い関心を抱いたのは、コロナ禍に入って勤務形態の変化や簡易的な業務がメインにとなった時期ですね。自宅で過ごすことも多くなったので、見て見ぬふりをしていた部屋の整理を始めてみたんです。すると、ディスプレイを仕事としている割にはノウハウが無いと気付かされて。すぐに整理収納アドバイザー2級の資格を取得するために阿佐ヶ谷まで受講しに行きましたね。

講義の中で「収納道具を買い足して物を収めることが整理収納ではなく、人生に必要なものを残して暮らしに合う収納の仕方で物を収めることが整理収納」ということを学び、その教えに沿って自宅をを片付けると、好きな物と生活する上で最低限必要な物だけが残っていきました。
部屋にも心にもゆとりができたことで、パートナーへ感謝の気持ちを素直に伝えられたり、整然とした空間を維持したりすることが楽しくなりましたね。食事や会話を共にする時間も増え、お互いへの理解も深まった気がします。

目の前の問題が解決したことで自分自身がどう生きていきたいのかを考える余白が生まれ、個人事業主として整理収納アドバイザー兼ルームスタイリストへの転身を決断することができました。私がそうであったように、整理を通して自分らしい生き方を見つけるための第一歩をお手伝いしたいという思いからの選択でした。

仕事内容が自分に合っていたということもありますが、セクシュアリティを隠してコミュニケーションを取るスタンスから自らを解放して仕事に取り組みたかったという気持ちもあります。
前職ではゲイであることや、パートナーが同性であることをオープンにしていませんでした。現在の自宅を購入した際に「結婚しないの?」という同僚からの質問に対しても、はぐらかしてその場を切り抜けるみたいな。度々そのようなことがあって、そんな自分の生き方に疑問を持ち始めたんです。もちろん、その人が悪いとかではなくて、自分はパートナーとのことを隠さずに共有して生きていきたい人なんだと気付かされたんですよね。

それに、ご依頼主にとって自宅を見せるのは、プライベートを全て公開することと同じでとても勇気のいることじゃないですか。本音で悩みを相談していただくためには、私から自己開示をしないと信頼関係を築くことが極めて難しいと思ってるんです。なので、私自身が何者で、誰と、どんな部屋に住んでいるのか、SNSだけでなく自宅のルームツアーなどを通じて知ってもらう必要性があると感じ、その過程で自然とセクシュアリティについても触れるようになりましたね。最初はインスタグラムでオープンにしたのですが、好意的なコメントがほとんどで一安心しました。
母と14個下の弟にも伝えていて、母は「10年以上一緒に過ごしている人がいいね」と言ってくれて。弟は僕の話よりも「そんなとこ住めていいなぁ」と部屋に夢中になっていましたね(笑)。

ーー「ゲイ当事者としても、何か役に立てたら」。パートナーとの二人暮らしから、LGBTQ+当事者を身近に思えるきっかけを。

2021年からのおよそ2年間(2023年3月時点)で訪問・オンライン計200件以上のご相談をいただき、常時40件ほどご依頼主のお部屋を診ています。自宅のルームツアー&セミナーは250名以上の方にご参加いただき、思っていたよりも多くの人生に携われている今が幸せです。お客様の9割が女性ですが、男性の方や同じセクシュアリティの方、年齢は30〜70代といろいろな方とのご縁があります。

また、ありがたいことにインスタグラムのフォロワーが増えるにつれて雑誌やラジオなどのメディアを通じて、お部屋の悩みを抱えてる方や心地の良い居場所が見つけられない方へ、心の余白を作る手段の一つとして整理収納術を発信する場をいただくことが多くなりました。
取材では度々、LGBTQ+コミュニティに関する質問をされることもあるのですが、その際は自認性が男性であること、恋愛対象も男性であることをお伝えしたうえで、多様な性のあり方について話をさせていただくことを意識しています。当事者性の高いトピックスだからこそ、正しい理解や想像するきっかけづくりができるのであれば、貢献したいという気持ちがあるんです。

パートナーと出会って12年目を迎えた今年3月に、東京都パートナーシップ宣誓制度の利用を公表したのも、少なからずそういった思いがあってのことでした。コロナ禍を経てお互いが命に関わる病気を患ったときや事故に遭ったときなどの危機管理が主な目的ではありましたが、制度の存在や制度を必要とする人たちがいることを知ってもらいたかったんです。
子どもを持つフォロワーさんからは「多様性やLGBTQ+について、子どもに話をしてみました」と、DMが度々届くようになりました。仕事を通して誰もが生きやすい社会づくりに貢献できているのだとしたら嬉しいですね。

私自身の暮らしについては整理収納アドバイザーとルームスタイリストの仕事を続けながら、そのとき、そのとき自分が心地良いと思える日々を送れたら幸せかな。これからも整理収納アドバイサー兼ルームスタイリストとしてご依頼主をはじめ、周囲の人達を幸せにできるような人として生き続けていきたいです。

■ひでまる
整理収納アドバイザー兼ルームスタイリスト。同性パートナーとの暮らしにおける整理収納術が多くの支持を受け、インスタグラムのフォロワーは9.4万人に上る。個人向けの自宅ルームツアーや企業セミナーなど幅広く活躍中。2023年11月17日に書籍「47㎡、2人暮らし〜大好きだけが並ぶ部屋作り〜」(小学館)を発売予定。
Instagram@hidemaroom

ーーnewTOKYO公式YouTubeチャンネルでは、ひでまるさんの整理収納術とこだわりがつまったオシャレすぎる自宅のルームツアー動画を公開中! リビングやキッチン、寝室に至るまで簡単にマネできるテクニックばかりなので、ぜひ参考にしてみて。

【ルームツアー】1LDK47㎡でパートナーと男二人暮らし。整理収納アドバイザー・ひでまるさんの“好き“だけに囲まれた部屋を作る法則

取材・文/芳賀たかし
写真/新井雄大
動画/BEBI
記事制作/newTOKYO