かけがえのない恋だけれど、好きだけではどうしようもない。恋の先にある本当の愛を描いたヒューマンドラマ「his」

考え方も生き方も異なるかつての恋人が再び出会い、それぞれが逃げていた現実に直面する。そんなゲイのリアルと本当の愛の形を描いた映画「his」が、1月24日(金)より公開。最近恋をお休みしているあなたもきっと恋をしたくなります!

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映画 his

一組のゲイカップルを中心に、新たな形で構築された「家族」の誕生を描く物語が展開しますが、この作品は単なる「ゲイのラブストーリー」ではなく、主人公ふたりを含め、彼らを取り巻く人々それぞれが自分のずるさや弱さと向き合い、自分と異なる価値観を受け入れることで成長していく姿を描いている。

常に他人の目を気にして本心を伝えられない井川迅(しゅん)は都会を離れ、知り合いがいない土地でゲイを隠し、周りとも距離を置きながらひっそり自給自足の生活をしている。大切なものを失っても相手を許す優しさを持ってはいるが、傷付けられること恐れ他人を拒絶している。

自意識過剰で他人の気持ちに鈍感な日比野渚(なぎさ)は、夢を追ってオーストラリアに留学するもののあっさり挫折。現地で知り合った玲奈と結婚して一児の父となるが夫婦仲はうまくいかず離婚調停の最中。気配りはできるが空気は読めず、無意識に周りの人を振り回している。

そんな真逆ともいえる生き方をしてきたかつての恋人同士が再び出会い、共に過ごす日々の中で互いに影響され、「自分に足りなかったもの」に気が付きます。

キーマンとなる娘・空の存在や、男2人と少女の共同生活、ゲイの子育て、世間の偏見への恐れなど、ゲイ漫画家・田亀源五郎氏の代表作「弟の夫」と共通する設定は多いものの、今作は迅と渚という異なる価値観を持つゲイふたりの視点で描かれているのがポイント。

冒頭の迅と渚のイチャイチャベッドシーンに「三日月耳は、面倒見がよくて、協調性重視で控えめな性格。自分を通すより他人に尽くすことに喜びを感じる。」という歯が浮くような美麗なセリフがあって、最初「あれ、なんだこのキラキラなBL展開…」と唖然とさせられます。
ところが全編観終わると「ほーら、みんな。思い出に昇華された過去の恋愛ってこんな風に回顧するよね」っていう演出だったことに気付かされ、細部まで丁寧に作られた作品であることが分かります。

難しい作品解説は置いておいて。
ゲイなら必ず共感できる物語に涙すること間違いなしなので、バレンタイン直前だし、最近ときめいていない人は映画「his」で人を愛する素晴らしさを体験して!

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映画:his
2020年1月24日(金)新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
配給/ファントム・フィルム
©️2020映画「his」制作委員会

ストーリー/窓から柔らかい光が差し込むベッド。眠る井川迅(宮沢氷魚)の耳元で日比野渚(藤原季節)が甘い言葉をささやき、くすぐったくて甘い時間を過ごしていた。しかし、続けて渚から告げられた言葉は「別れよっか」だった。それから数年後。迅は全てのしがらみから逃れるように岐阜県白川町に移り住み、小さな一軒家で畑仕事をして穏やかに暮らしていた。そんなある日、家の前にシャボン玉で遊ぶ見知らぬ少女が現れる。戸惑いながら声をかけると少女は「パパー!」と声を上げて走っていく。振り返るとそこにはかつての恋人・渚が立っていた…。
女性と結婚したものの現在は離婚調停中だという渚。複雑な気持ちを抱えながらも押しかけてきた渚を拒めない迅。そして迅と渚、娘の空の奇妙な同居生活が始まるのだが…。

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記事作成/みさおはるき Twitter@harukisskiss