“人生の選択に正解はない”。なんてことをたま~に見聞きするけれど、自分の選択が100%合っている、と胸を張って言える人は…そうそういないはず。ただ、正解・不正解は置いといて、今を楽しんで生きている人ってやっぱり素敵!「ジブンヒストリー」は、そんなエネルギッシュに生きる彼らの日常や歴史にフォーカスして、自分らしく生きるヒントを見つける企画♪
今回は聴覚障害を抱えながらも人とのコミュニケーションを恐れず、ゲイコミュニティで楽しく生きているSARAMUさんのジブンヒストリー。忙しなく過ぎる毎日だけどちょっと立ち止まり、彼の生き方を通して“これまでのジブン”を整理すれば、ワクワクするような“これからのジブン”像に出会えるかも。
――幼い頃に診断された聴覚障害と思春期に気づかされたゲイというセクシュアリティが、思考力と負けず嫌いな精神を養った。
生まれは、愛知県の南部に位置する豊橋市。夏は祇園祭り、冬は駅前のイルミネーションと多くの人で賑わう街です。感音性難聴と診断されたのは、幼稚園の時。診断後は聾学校の幼稚部へ通っていましたが、母の考えで途中から一般の保育園に通うことに。
そこでは、耳が不自由だからと言って健聴者の子どもたちに引けをとりたくなくて、自分なりにできる努力をたくさんしました。負けず嫌いな性格は、この時に育まれたのかもしれないです。
同性を恋愛対象として見ていることに気づいたのは、中学生になってから。隣の席の男の子が初恋でした。常にふざけ合い仲を深めていくうちに友達としてではなく、「一緒にいたい」「彼に触れたい」といった気持ちが芽生えていきました。当時は“自分は男なのに、なんで男が好きなんだろう”と困惑しましたね。
――「カミングアウトは信頼できる姉だけに…」。マイノリティへの理解が乏しい日本でも強く生きる彼のアクティブな日々。
唯一信頼できる長女を除いて、親や職場の方々には自身のセクシュアリティについての話はしていません。姉にオープンにした経緯は、その当時付き合ってた彼氏についてどうしても誰かに相談したいことがあって…その際にカミングアウトをしました。
姉はほんの一瞬、驚いた顔をしましたが「あなたに好きな人ができたというのはとっても良いこと。好きになる人は皆それぞれ違うし、私は気にしないよ」と僕がゲイであることに理解を示してくれて、本当に嬉しかったです。
一方、日本全体で考えると聴覚障害でありセクシュアルマイノリティというダブルマイノリティとして生活している自分にとっては、まだまだ生きづらいと感じる瞬間が多いのが現実です。
そんな生きづらさの中でも新宿二丁目は、やっぱり特別な場所です。週末にゲイバーやクラブイベントなどに行くことが多いのですが、同じセクシュアリティだからこそ話せることがあるし、耳の不自由な僕を受け入れてコミュニケーションを取ろうとしてくれる優しくて楽しい方もたくさんいる。ここでの時間が「明日も頑張ろう」という活力になっています。
――話せなくても、心を通わせられる。一人ひとりの出会いを大切にするSARAMUさんの夢は?
ただ「話す」といっても口語言語で話すということではなく、筆談ボードやスマホのメモアプリなどを用いてのコミュニケーションがほとんど。話し相手の口元の動きが小さかったり、早かったりすると口話が難しいんです。会話よりも数倍時間のかかるコミュニケーション方法であっても、楽しく接してくれる周りの方たちにはとても感謝しています。
10年後の自分が何をしているか…一期一会の出会いを大切に自分らしくポジティブであり続けたいというのが一番の願い。欲を言うなら、隣に僕のことを理解してくれる素敵な人がいたら幸せです(笑)。その時は、キレイな海が一望できる場所に移住したいかな。
■ プロフィール
名前:SARAMU/職業:会社員/身長:177cm/体重:72kg/出身地:愛知県/最近ハマっていること:K-POP、Netflix/好きな食べ物:参鶏湯、炒飯/好きな場所:沖縄/一度は訪れたい場所:韓国、ニュージーランド
■ Twitter@kantaven
企画・取材・撮影/天野ヒカリ
編集/芳賀たかし
記事制作/newTOKYO