厳しい現実を突き付けられながらも一歩一歩と前へ進む。心に感動を刻む少年と馬の旅。映画「荒野にて」

休日にカフェで過ごし、ペンキが剥がれかけたような加工をしたアンティーク風家具が部屋にあるゲイって、もれなくハッピーなミュージカル映画とちょっぴり切ないロードムービーが好きですよね。そんなロードムービー好きなみなさんは(そして、深夜アニメが好きなオタクゲイのみなさんも、ジムで鍛えるのが日課の筋肉ゲイのみなさんも)現在公開中の映画「荒野にて」をきっとお気に入りにするはず!

誰もいない、ただひたすらに広い世界。それは苦難の道でありながら、同時に2人の絆を深める自由の旅でもある。

母親に捨てられ、経済力も教養もないが愛情だけは溢れていた、ちょっとダメ人間の父。
そんな父が愛人の夫に襲われてしまう。
走ることが大好きな15歳の少年チャーリーは父の入院費と手術費を稼ぐため競走馬ピートの世話をする仕事をしていたが、そこで知り合った女性騎手に「馬を愛してはいけない」と忠告を受ける。

馬に愛情を注ぐチャーリーに対し周りの大人は理解を示さない。彼らにとって、馬は感情を持った動物ではなく、金を稼ぐ道具に過ぎなかった。

しかし数日後父は病院で亡くなり、チャーリーはひとりぼっちになってしまう。父の死の追い討ちをかけるように老いて試合に勝てなくなったピートの殺処分を聞かされる。天涯孤独となり、施設に引き取られそうになったチャーリーは唯一心を通わせていたピートを連れ出し、どこにいるかわからない親戚である叔母を探す旅に出る。

荒々しく荘厳なアメリカ北西部の大自然の中を進む一頭と一人。大人の優しさとズルさ、残酷な現実を経験しながら、彼らは無事自分の居場所を探すことができるのだろうか。

広大な自然の中、1人の少年と1頭の老馬は新たな新天地を求めて、苦難を乗り越えながら荒野を進んでいく…。

若き日のリバーフェニックスを彷彿とさせるチャーリー・プラマーが走る姿はまるでギリシア彫刻のよう。今だからこそ醸し出せる、少年と大人の狭間の美しさは必見の価値あり。彼は第74回ヴェネチア国際映画祭にてマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞した若き期待の新星。

毎日職場と自宅の往復で、会社でのちょっとした人間関係のこじれや日々のストレスに疲れ気味の人は、劇場でチャーリーと一緒に旅に出てみませんか?

Lean on Pete

映画:荒野にて
全国ロードショー中

ストーリー / 小さい頃に母が家出し、愛情深いがその日暮らしの父と二人暮らしのチャーリー。家計を助けるために競走馬リーン・オン・ピートの世話をする仕事を始めるが、ある日父が愛人の夫に殺されてしまう。15歳で天涯孤独になってしまったチャーリーの元に、追い打ちをかけるように届いたのは、試合に勝てなくなったピートの殺処分の決定通知だった。チャーリーは一人馬を連れ、唯一の親戚である叔母を探す旅に出るが、彼らの前に広がるのは、あまりに広い荒野だった―。

監督・脚本 / アンドリュー・ヘイ 原作 / ウィリー・ヴローティン 製作総指揮 / トリスタン・ゴリハー
キャスト / チャーリー・プラマー、スティーヴ・ブシェミ、クロエ・セヴィニー上演時間 / 122分 製作国 / イギリス 配給会社 / ギャガ:https://gaga.ne.jp/kouya/
© The Bureau Film Company Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute

記事作成 / みさおはるき
(イラストレーター / 漫画家 / コラムニスト / たまに通販番組の出演者)
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