「生きる喜びは目の前にあった」 ボルドーでの「まさか」が教えてくれたこと。書道家Maaya Wakasugiの視点

Maaya Wakasugi
書道家・アーティスト。フランス・ボルドー在住。
1977年 岡山県生まれ。6歳より書道を始め、17歳で個展開催。書の名門・大東文化大学を卒業。“古代文字” をモチーフとした独自の作品スタイルを確立。近年は、書をアートとしてとらえ、ルーヴル美術館公認の関連ロゴマークの制作や、ニューヨーク近代美術館MoMAでパフォーマンスをするなど、様々な場所で表現を展開。2017年にはNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」のタイトル揮毫を手がける。

令和を迎えるとともに、新元号に託された「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ」の想いを反映させた書がYahoo!Japanを彩った。

力強くも希望に満ちたその揮毫に、新しい時代への期待に胸が高鳴った人も多かっただろう。
その書を手がけたのが、世界を股にかけて活動する書道家・Maaya Wakasugi氏だ。

フランス・ボルドーに移住し5年。活動の幅を広げたいま、彼に大きな転機が訪れたという。今年12月末、東京で開催される個展「循環~Quelle joie de vivre~」に込めた“生きる喜び”の原点を伺った。

昨年個展を開催した際にテーマにしたのが「和顔愛語」。和やかな顔、愛情のある言葉で人に接するという意味で、同じ人間として笑って許しあえたらどんなに素敵なことかを作品で表現しました。

ですが、実は今年の春に「まさか」の入院生活を3ヶ月程をしていたんです。その際、自分自身を見つめ直すいい機会に恵まれ、隣にいる誰かへの愛も大事だが、自分自身を大事にすることもとても大切なことに気づかされたんです。

自分を愛することができるから、他者を受け入れ、愛することに循環していくのではないかと。そのなかで僕は目の前にあるものへの“気づき”を見落としていたのです。

ひとつめは、
療養中にボーイフレンドの家で生活していたのですが、毎朝庭にくる鳥の家族。色とりどりの鳴き声の中でも、同じ家族のさえずりであることがわかる。
庭に咲いた花の蕾が膨らみをみせ、大きく咲き誇り、萎れて、散っていく、その循環。
そんな一連のストーリーを初めてみることができたんです。きっと初めてではないのでしょうが、見ていたつもりでいて、目の前のものをないがしろにしていたのかもしれません。

生きるということとは。幸せは足元にあるとは言いますが、まさにそれを体感させられた出来事でした。

ふたつめは、
保険会社に提出するため、在住証明証を出すことになったのですが、パスポートを見てみると3ヶ月以上、ボルドーに滞在していたことがたった一度しかなかったんです。
移住して5年。活動の拠点に選んだにも関わらず、地に足をつけることなく世界各国飛び回って、ずっと走り続けていた自分がいました。

病気をしたことで人生初の強制終了をし、人生立ち止まってみて考えさせられたこと。それは、世界を股にかけるインターナショナルな書道家であると言いたいがために、心にも体にも負担をかけてきてたことでした。僕は欲張り、欲しがり、な生き物。こうして立ち止まらないと見えてこないものがあるということです。

現在は、主に現地のカルチャーセンターで書の指導をしていたり、自分のペースを乱さないで作品と向き合う日々です。現地の書道教室の参加者さんもリピーターが増えて、毎度内容をアップデートして自分にとってもハードルを上げるように心掛けています。

異文化交流の楽しさの発見や、現地のアーティストとのコラボレーション、エキシビジョン開催の機会なども増え、これからはもっとフランスに根付いた活動をしていこうと決めています。来年の春にボルドー近郊にある公共の施設での展覧会も計画しています。

生きにくさを感じる世の中で、虹を見つけた時のように心がふわっと明るく、生きる喜びがもっと満ち溢れるように。今回の個展「循環」をイメージした虹を書くMaaya氏。筆に込めた想いにインスピレーションを宿し、一気に弧を描いていく。

雨が降って、晴れ間が見えて、虹が見える、その循環。
病気になって、初めて自愛することの深さを知って、
また人にも自分にも優しくできる。

あれもこれもじゃなくて、何が大事なのか。
普段見慣れすぎていて気づかないものに、目を向けることの大切さ。

僕は自分の経験から、アートを通して生きる喜びを届けていきたいと思っています。

そして、書の冒険をすることが僕の使命だとも思っているので、墨だけでなく色も使うし前衛的な表現、現代アートしての可能性を探りながら、そういった作品も数多く生み出せるように、自分自身のためにも作品を書いていきます。

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Maaya Wakasugi
個展「循環~Quelle joie de vivre~」
期間:12 月28日(土)10:00-19:00
      29日(日)10:00-17:00
場所:Ultra Super New Gallery
住所:東京都渋谷区神宮前1-1-3/03-6432-9350

公式サイト
公式Instagram

協賛:株式会社GP4/MARLÈNE DELONG PAPILLON DE GINZA/恵比寿 豆園/bda ORGANIC /岡田農園/株式会社成佳屋/(株)HIGRAZZIE
協力:newTOKYO/(株)サンコート山口文林堂/筆匠 平安堂/KODOMO VISION FRANCE/ながしま笑会/UltraSuperNew(順不同・敬称略)

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newTOKYO読者限定でMaaya Wakasugi氏直筆による「愛」の書を1名様にプレゼントいたします。ご応募は、件名に「プレゼント企画」と明記し、info.newtokyo@gmail.comまでメールをお送りいたします。当選の方にのみご連絡をさせていただきます。
※プレゼントのご応募は締め切らさせていただきました。たくさんのご応募ありがとうございました。

写真/EISUKE
着付け/Marianne Kido
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