明日を創る#NONORMAL、「選択肢を増やす」3ブランドのポップアップに行ってみたら。

2022年12月18日(日)中目黒にあるOPEN NAKAMEGUROにて女子サッカーにルーツを持つ3ブロンドが集うポップアップが開催され、女性アスリートの生理の課題から生まれた吸水型ボクサーパンツブランド「OPT(オプト)」、元なでしこの横山久美選手がパートナーと立ち上げたジェンダーレスアパレルブランド「NEED.(ニード)」、サンドイッチのレシピを通じ、そのレシピを紹介する多様な人々のストーリーを紐解くアートブック&クックブック「Sammys(サミーズ)」が出店した。

商品を通じて“当たり前とはなんなのか、自分らしく生きることとは?”を問う『#NONORMAL』にフォーカスしたテーマで、パワー溢れるメッセージを届けた。

ーー今回はそんな素敵なポップアップに足を運び、3ブランドのディレクターたちが発信するブランドの想いを伺った。日本のジェンダーやセクシュアリティ課題にそれぞれの視点から取り組む姿勢が、とてもポジティブで誇らしいものだった。

生理用品に対する違和感から誕生!吸収型ボクサーパンツが変える女性の生き方。

ーー「WAGAMAMA(=ありのまま)であれ」のメッセージのもと商品展開をする『OPT』は、現役サッカー選手の下山田志帆さんと元サッカー選手の内山穂南さんが展開するプロダクト。今回展示・販売されたラインナップのひとつ「吸収型ボクサーパンツ」は、構想から商品化まで約1年半の歳月をかけて完成させたという。なぜこのボクサーパンツが必要だったのか、今まで問題視されてこなかった「普通はこうあるべき」に一石を投じることとなった。

下山田・内山:自分たちが実際にスポーツをする上での生理用品の悩みから、吸収型ボクサーパンツは誕生しました。学生の頃から蒸れやズレ、経血の漏れ、試合中にナプキンが落ちてしまうなんてことも。また、サニタリーショーツはフェミニンなデザインばかりしかなく着替えずらかったりと、生理用品の不快さ、生理で悩むこと自体が、もはや普通とされている現状への違和感がありました。

いろんな嫌が詰まったものなのに、解決策がない・選択肢がない=諦める、のは違うのでは?変えていけるんじゃないかと思ったんです。それで、「自分たちが本当に居心地が良いものは身につけられるよね」を伝えるために、554人のアスリートの声を参考にし、試行錯誤の末、動き回っても気にならない厚みで独自の4枚構造でメンズボクサーのようなかっこいい一枚に辿り着きました。

おかげさまで多くの人たちにこの商品を届けることができたのですが、実際にユーザーの声を聞くと、新たな視点にも気付かされました。女性の生理の問題だけでなく、尿漏れが気になるという男性の方など、性別に限らずいろんな悩みを抱える方々に「吸収型ボクサーパンツ」は必要とされていたんです。一人のWAGAMAMAは連鎖していくということがしっかり感じられましたし、今後はもっともっと自分らしく向き合える新しい選択肢が増えるきっかけづくりが提供できたらと思っています。

コンプレックスをプライドに!ジェンダーレスで自分らしいファッションを楽しむ権利。

ーー昨年6月にトランスジェンダーであることを公表した女子サッカー選手の横山久美さん(湯郷Belle所属)とパートナーのナミさんが立ち上げたジェンダーレスアパレルブランド『NEED.』。ブロンドロゴの刺繍をあしらったシンプルなトレーナーには、メンズ・レディースで括られたアパレルファッションの“当たり前”がもたらす“矛盾”を取っ払うための、大きなキーワードを宿していた。ファッションとは?ファッション楽しむために必要なこととは?

横山:第二の人生をどう歩むか…。一旦サッカー選手をやめてこれからのことを考えていたときに、前々からやってみたかったアパレルにチャレンジしてみたいと思いブランドを立ち上げました。その際に今まで自分が抱えてきた洋服選びの悩みを解消し、誰もが自分らしい服装で自信が持てるようにと、ジェンダーレス・ユニセックスに焦点を当てた展開にしました。

背が低いことからメンズ服はサイズが合わず、レディース服ではシルエットに違和感を抱く…。着たい服が着れない、体型や性別で限られてしまう…。本来そんなことなくはなくて、ファッションは誰もが楽しめるアイテムで「必要のない人はいない」もの。だからこそ『NEED.』は、そのメッセージを掲げ、自分たちと同じ想いを抱くユーザーの方々と一緒にアイデアを出し合って作り上げていくブランドに成長させていきたいと思っています。

そして自分にできることとしてもう一つあったのが、競技を引退した後のセカンドキャリアの在り方を示すことです。引退後、指導側に回る才能ある人や同じスポーツ界に携われる仕事に就く人はごく一部であって、多くのアスリートは第二の人生に悩みを抱える人が少なくはありません。自分はたまたまアパレルでしたが、フィールドが変わっても新しいことに挑戦していく姿勢を通して、考えるきっかけになってもらえたらとも思っています。

人それぞれの人生レシピ。食を通じて多様なアイデンティティを知る。

ーーニューヨークアートブックフェアで出会ったオリジナル版。「サンドイッチというハッピーなテーマで多様なアイデンティティを描きつつ、時にその多様性が否定されるという現状を投げかけてくる本書に心奪われた」と語るのは、日本語版を刊行した永井菜月さん。水色の可愛い装丁の『Sammys』、30名のサンドイッチレシピにはどんなストーリーが隠されているのだろうか。永井さんがこの一冊から変えていきたいと願う“美味しい味”を伺った。

永井:サンドイッチ一つとっても形や食材、その概念は人それぞれ違っていて、この本に登場する方たちのレシピはみんな異なっているんです。国や地域、環境、生い立ちによって様々。移民二世や三世など、母国のルーツを辿った素材を使う人もいれば、中には「!」と意外なものまであって、多様な人々のライフスタイルが紐解けるアートブック&クックブックになっているんです。

大学院では多様性の勉強をしていたこともあり、常日頃からそういった社会の取り組みに関心を持っていました。そこで出会った『Sammys』は、クック本としての役割だけでなく他者のバックグラウンドにも触れ、想いを巡らせることができます。人によってはダイレクトに投げかけても受け入れづらい多様性ですが、「サンドイッチ」というクッションのあるこの本なら、やわらかい部分から感じ取れる部分があるのではないかと思っています。

そして私自身もこの本の翻訳&再構築をきっかけに、さらに視野が広がりました。Sammysでの活動や、日頃から社内での多様性や公平性に関して試行錯誤していることが認められ、社内のD&I部門を任されることになりました。仕事とプライベート、別れていたものが垣根なくできることもひとつの多様なあり方だと思っていますし、マジョリティ性の多い自分ですがさらに広く物事を捉え、自分だからこそできる取り組みができたらとも思っています。

■#NONORMAL/ポップアップイベント
>>>OPT(オプト)公式サイト
>>>NEED.(ニード)公式サイト
>>>Sammys(サミーズ)公式サイト

※『#NONORMAL』は、ブランドやクリエイターの成長を支援する株式会社qutoriが運営するポップアップ情報特化メディア「POPAP (ポパップ)」主催により開催されました。

取材協力/POPAP・OPEN NAKAMEGURO
撮影/新井雄大
記事制作/newTOKYO