HIVウイルス感染を事前に予防する内服薬として、MSM(男性間性交渉者)の間で服用者が増えつつあるPrEP。
ここでは2023年初頭にオンデマンドPrEP(性交渉の2時間〜24時間前に2錠、その24時間後に1錠、さらにその24時間後に1錠、PrEP薬を服用する予防法)を服用し始め、現在はデイリーPrEP(1日1回1錠、同じ時間にPrEP薬を服用する予防法)へ切り替えて服用を続けているというTさん(宮城県在住/25歳/ゲイ /ウケ寄りリバ)にインタビュー。服用以降のセックライフの変化について教えてもらった。
ーー初めてのセックスは19歳。PrEP服用前のセックスライフ。
ーーTさんが最初に男性とセックスをしたのは、何歳の頃ですか?
マッチングアプリで出会った方と事前に待ち合わせをして、19歳の時に初めてセックスをしました。
ーーそのときは、どのような性感染症予防をしていましたか?
バニラセックス(挿入行為のない性交渉)だったので、予防はしていませんでした。ただ、この経験以降、よりセックスへの関心が強くなった気がします。それほど間を開けることなく、アナルセックスもするようになりましたし、セックスライフを充実させたいという気持ちが湧くようになりました。
ーーでは、ナマセックス(コンドームなしの性交渉の俗称)も経験済みということ?
はい。自ら進んでというわけではありませんが、合計2〜3人とそういった行為に至ったことはあります。流れというか、ムードというか…断れなかったんです。そのときは、ナマでしたことに対する後悔はなくて「検査すれば大丈夫か」みたいな楽観的でいました。ただ…。
ーーただ…?
2022年にB型肝炎ウイルス、2023年に梅毒に感染してから、セックスに対する意識が変わりました。今はどちらも完治していますけど、性感染症のステータスが明確でない人とのセックスする危険性を身を持って知ったというか。
ーーその延長線上で、PrEPを服用し始めたということですか?
PrEPに関してはマッチングアプリやSNSで「On PrEP」と記載しているアカウントを多く目にしたことが、理由の一つになっていると思います。
ーーPrEPを服用してから1年半。セックスライフはどう変わった?
ーーPrEPを服用し始めたのは2023年1月頃とお聞きしましたが、どのように処方してもらいましたか?
私の場合は都内のクリニックによるオンライン診療を経て、最初にオンデマンドPrEPのボトル(30錠)を処方してもらいました。だいたい4ヶ月で使い切ったものの、予めセックスの予定を立てて服用する感覚が精神的に窮屈であること、飲み忘れを防ぎたかったことの2つの理由から、想定外のセックスにも対応しやすく、服用方法がシンプルなデイリーPrEPに切り替えました。
ーー副作用や価格は気になりませんでしたか?
副作用はさほど気にはなりませんでしたが、価格に関しては高額だと感じました。現在処方を受けているデイリーPrEPは、3ヶ月分のボトル(90錠)と検査込み(HIV検査・B型肝炎検査・腎機能検査)で2万円弱。決して安いとは言えませんね(笑)。
ーー続けて服用しているということは、よりアクティブにセックスを楽しめているということですか?
住んでいる場所が地方であることも影響しているかもしれませんが、PrEP服用前と比べて内容も頻度も大きな変化はありません。
PrEPで感染予防できるのはHIVウイルスのみなので、心のどこかでブレーキを踏んでいるのかもしれません。先ほど話したように2度も性感染症に感染している事実もあるので…。
ーーなるほど。
ただ、同時にPrEPを服用し始めてからナマセックスに対する抵抗は薄れていることも実感はしていて。お互い検査でHIVウイルスやそのほかの性感染症に感染していないことを確認できれば、ナマでしたいと思っているというのは事実としてありますし。
逆を言えば相手が性感染症に関する検査をしていない、あるいは性感染症のステータスが不明な場合は必ずコンドームを装着してもらいたいということなのですが…。
ーーでは、デイリーPrEP服用のメリットはどういったときに感じていますか?
個人的な考えになりますが、想定外にセックスへと発展したとき、またリスキーなセックスを強要されたときでも、HIVウイルス感染を予防できること。これに尽きるのかなと思います。実際に3人ほど流れでセックスをすることになり、その際にデイリーPrEPは安心材料の一つとして機能しました。
それにOn PrEPであることを証明できれば、相手も安心してセックスに集中できるのかなと思ってます。
ーーPrEPの服用を始めてからも、定期的な性感染症の検査は受けていますか?
約3ヶ月に一度、居住地にある地方自治体の保健所にてHIV・梅毒検査を受けています。ただ、その保健所ではクラミジアやB型肝炎といった他の性感染症の検査が受けられないので、検査項目の充実や予約枠の増大が行われれば嬉しいです。
地方においてはLGBTQ+フレンドリーである声明を出している病院やクリニックなどが少なく、MSMであることや検査に至るまでの経緯を伝えづらいということが検査をしない選択にも繋がっている気がするんです。なので、郵送検査ではなく通常検査を、もっと気軽に受けられる環境が整備されたら嬉しいです。そうすれば、PrEPもよりHIV感染予防の手段として身近なものになっていくのではないかと思います。
■東京都新宿東口検査・相談室(HIV&梅毒検査)
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※プライバシーの確保のため仕切り板のある1人掛けソファを導入しております。
■各種相談窓口・その他のHIV検査所サイト
>>>東京都HIV検査情報Web
>>>HIVマップ
>>>HIV検査・相談マップ
■インタビュイープロフィール
Tさん/年齢:25歳/居住地:宮城県/セクシュアリティ:ゲイ/ポジション:ウケ寄りリバ/月当たりのセックスの頻度:3回程度/PrEP服用歴:オンデマンド4ヶ月、デイリー2ヶ月
記事制作/newTOKYO
取材・文/芳賀たかし
※PrEP療法はHIVウイルス感染予防を目的としたものです。また、性病の感染予防についてはコンドームの装着やワクチン投与など、ご自身に適した感染予防を心がけましょう。