半歩踏み出す勇気が、世界を変える! Netflix「クィア・アイ in Japan!」に出演したことで、自分らしさを取り戻したカンさん。

ファブ5と呼ばれるファビュラスな5人が、「自分を変えたい」という出演者に寄り添って、新しい一歩を踏み出せるように変身させていくNetflixオリジナルのリアリティ番組「クィア・アイ」。過去にエミー賞を受賞するなどその人気は衰えず、スペシャルシーズンとして制作された「クィア・アイ in Japan!」の舞台は日本。

そんな「クィア・アイ in Japan!」エピソード2に登場したのがカンさん。嵐のような撮影期間と放送を得て語ったのが「人生が2回変わった」ということ。それまでのカンさんはどのような人生を歩み番組出演に至ったのか、そして自分と向き合ったことで変わっていった心境とは何だったのだろうか。彼がひとりのゲイとして伝えたいメッセージをお届けします。

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ーー好きの先の→が男。ってことは自分は女?異性愛者の恋愛チャートに当てはめた自分の性への疑問

自分が異性愛者ではないことに気がついたのは中学三年生から高校一年生にかけての頃。思春期に差し掛かり、男子と女子が別々のグループになって遊び始める時期の話題って結構好きな子の話とかで。その時に、男子グループ内で好きな女の子の話になって、あれ?僕って女の子に対してそういう感情がないって気づいたんですよ。むしろ、このグループのこの男の子の方が好きかもしれないって…。でもそれは言ってはいけないんだろうなっていうのは何となく分かってはいたんですよ。

ただその時に自分が抱いた思考って、異性愛者のチャート式に恋愛対象を当てはめると、好きの先の矢印が男の子だから、自分は女なのかなって思いました。元々自分にはフェミニンな部分があるのは自覚していたし、周りにもそう言われてきたから。じゃあ自分はトランスジェンダーかと言われると、日常の中で自分の性別に違和感を感じることはなかったんですよね。だからそう思うこともなくて、ただ素直に社会の仕組みは男女の恋愛が当たり前で、その仕組みに当てはまるためにも、自分は女性にならなければいけないんだと苦しくなりました。

それで、当時は思春期における自分の性自認が明確に確立できず、終始自分って何なんだろうって塞ぎこむ日が多くなっていったんです。その模索する時期は長かったです。高校に入ってから勉強や人間関係の悩み、そこに追い打ちかけるようにセクシュアリティのこともあって、学校に行けなくなっていました。その後、通信高校へ編入してもなお、浮き沈みの激しい生活を送り、とにかく東京に出たい!新宿二丁目に行ってみたい!誰も僕のことを知らない世界に行きたいと強く願うようになりました。

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ーー終わりと始まりの間で。そして海外生活で実感した二重の苦悩への葛藤とは?

通信高校に編入することになり、家族へゲイであることをカミングアウトはしました。その時両親は「カンはカンだから良いんじゃない」って言葉では受け入れてくれたんですけど、明らかに表情は曇っていて、どこか悲しそうでした。カミングアウトあるあるなんですが、本人は思いつめて思いつめて、ようやく全てを吐き出すように打ち明けてスッキリ終わりなんですが、される側からしたらそこから始まりだったんですよね。初めて子供のことを知り、そこから学び、親としての葛藤をしていく…。その時のその両親の表情で初めて感じ取ることができて、正直悲しい気持ちになりました。それに、僕としては100%受け入れてほしいという気持ちがあったので、その心の揺らぎが少し見えただけでも不安が増し、なんで本心から受け入れてくれないんだろうと、今振り返ってみると不満があったと思います。今でこそ日本でもLGBTというムーブメントが起きているから状況は変化しているかもしれないけれど、あの頃はそのことについて触れたり特別話し合うこともなく、どこかに家族と見えない壁を感じました。

その後、念願の上京は思っていた理想とは違い、あまり変貌はありませんでした。しかし、大学4年生の頃に一年間休学してカナダに留学に行ったことで僕の考えが変わっていきました。カナダでは、セクシュアルマイノリティであることを公にし、まったく隠さずに友達と接することができたり、ゲイの親友ができたりと、自分も堂々と自分らしく生きていいのかなって前向きになれたんです。それでカミングアウトはしても良いんだって思えるようになり、帰国後は仲の良い友達に打ち明けたり、大学内でLGBTサークルなどを立ち上げるなど、積極的に自分や周りがより生きやすい環境に取り組みました。

それから、その活動に打ち込む中で自分のジェンダーやセクシュアリティに関するインプットがもっとほしいと思い、次にイギリスの大学院に留学しました。しかし、カナダでの体験から自分自身を受け入れてくれる感覚があったのですが、イギリスでは、ゲイであることは受け入れてもらえるけれど、アジア人であることが差別や偏見の的となっていました。LGBTであることが受け入れられるのは白人のみで、ゲイコミュニテイ内でもアジア人は弾かれてしまう。さらに日本人コミュニティではゲイをネタに悪く言う人もいて、セクシュアリティと人種の2つのフィルターに、行き場を失くしたことも正直ありました。

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ーー「クィア・アイ」に出演する覚悟。日本で「自分の居場所を確保したい」と思った。

日本で就職してから…自分自身がオープンに生きられたかと言われたら難しい。面と向かって差別されたり嫌がらせを受けることはなかったけど、ところどころでゲイネタは聞くし、自然な会話の中でも「彼女は?」って聞かれることの一つひとつに違和感がありました。また、聞かれることに対して毎回自分に跳ね返す力が保てなかったんですよね。例えば、海外にいた頃ってバイトしていたお店のスタッフとの会話の中で昨日デート行ってきたことを話すと、同性の名前を出しても、わぁ素敵だね!とかどこ行ったの?ってすんなり進む話が、日本ではまず、待って?同性とデート?ってひとまず突っかかり、それから目覚めはいつ?って、ただデートの話がしたかっただけなのに、気づくと自分のセクシュアリティの話に変わってしまって。自分が変わったところで周りはそうじゃないから、疲れちゃうことも多くて。

そんなモヤモヤした感情と、さらに彼氏のトムが日本に遊びに来て、外で手を繋ぎたいのに手を繋げない自分もいたりして、一度はオープンに生まれ変わった自分がいたはずなのに葛藤が生じちゃったりして。なんか「自分の居場所ってどこにあるのかな?」とか「自分らしさって何?どこで出せるの?」ってなっていたことで、たまたま番組のお話をいただくことがあり、自分を変えたいと意を決して出演することにしました。

でも出演するまでには色々な覚悟が必要でした。僕が出ることによって家族にも影響がでるのは確かで、まずは家族と向き合わなければいけないということでした。それは、テレビでは放送されないかなりプライベートな部分。学生の頃のカミングアウト以来真剣に向き合ってこなかったこと、さらにどうして出演したいかと話すことで、家族の本心も見えてくる怖さがありました。最終的には話し合って家族みんなも応援しているから、一緒に出ようってなってくれてたのですが、なにより嬉しかったのが、家族の距離感が縮まったことでした。

そしてもうひとつ大きい覚悟も必要でした。それはLGBTへの理解や権利問題がポジティブな捉え方をされている昨今だけど、LGBTコミュニティー内でも何かしらの差別が確実にあるということ。僕は海外に住んだ経験で人種という面で弾かれた時の気持ちがあって、それを言葉にするのには凄く勇気がいりました。それを言うことによって、LGBTコミュニティー内での自分の居場所もなくしてしまうかもしれなかったから。またアンチ的なコメントやネガティブな反応が返ってきて、自分自身が否定されたらどうしようという不安がなくなることはありませんでした。

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ーー自分で自分をたくさん愛してあげること。半歩踏み出すことができるだけで、自分らしく生きられるメッセージ

ちょうど昨年の2月頃に撮影があって、ファブ5のみなさんからたくさんの勇気とアドバイスをいただきました。例えば、カラモさんの鏡に映る自分に向かってポジテイブな言葉をかけてあげるだけで変わっていけるんだよとか、ボビーさんの部屋の見た目が自分の心に影響しているし、心の影響が部屋にも比例してるって教わってから、実際にそういうことを意識するようになって、日に日に心が軽くなっていくのを実感できました。

また11月に放送された時も、本当にたくさんの方々からインスタグラムで応援のメッセージをもらって、「自分は自分らしくて良いんだ」っていうことをもう一度、後押ししてもらえる気持ちが持てたんです。新しいことをすることに対しては今も不安がないっていうのは嘘で、不安はたくさんあります。でもその不安を持ちながらも半歩踏み出す勇気をしっかりもらえたなって思っています。自分自身2回変われたことに心から感謝しています。

大切な友達やパートナー、家族。地方で育った僕でも自分の居場所を見つけることができました。模索しっぱなしの人生ではあるけれど、僕のような生き方もあるんだよってことを知ってもらえたら嬉しいです。僕の全部を自分に当てはめることはしなくて良いので、こういう人もいるんだなってくらいで、参考にできることがあれば良いなと思っています。

僕が高校生くらいの時って、この苦しみが一生続くのかって思っていました。毎日生きるのが辛かったです。だからそんな風に思っている人がもしいたら、僕のこの今の姿をみて、少しでも希望に変えてくれたら嬉しいです。僕自身、高校生時代の自分に言ってあげられることが、今はたくさんあるんです。

そうそう、母親がパートナーのトムを気に入ってくれたことがすごく嬉しかったんです。母のトムに対する反応は、自分が初めてカミングアウトした時には想像することもできなかったことだから。あれから10年経って、実家にも一緒に帰ったりして、「トムよく来たね」って一緒にご飯食べたり、おでかけしたりする両親の姿に、これで良かったんだって自信がもらえました。

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プロフィール/カン
Netflix「クィア・アイ in Japan!」エピソード2に主人公として出演。

Instagram@kanyonce
Twitter@kankanyonce

取材協力/Netflix Japan
撮影協力/AiiRO CAFE
取材・記事作成/村上ひろし(newTOKYO)
撮影/新井雄大 Twitter@you591105

Netflixオリジナルシリーズ「クィア・アイ in Japan!」独占配信中
https://www.netflix.com/title/81075744

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