最近恋をしていないあなたへ。失いたくないから伝えられないこの想い。切ない三角関係を描いた青春映画「さよならくちびる」

カフェやラジオでふと流れてくる音楽。
突然甦る、胸を締め付ける想い。
それはいつの間にか胸の奥にしまいこんでいた、青春時代の憧れと恋のときめき。

友情以上の絆と秘密で繋がったハルとレオは、様々な人を惹き付ける歌詞とメロディを生み出す。しかし、そのバランスが崩れたとき、彼女たちは新たな選択をすることに…。

恋というのは形も色もないけれど、世界を輝かせる。
音楽もまた、触れることができないけれど感情を動かすもの。
だからきっと誰もが言葉だけでは言い表せない、自分の気持ちを歌に重ねる。
そんな思い出の曲がある人には、映画「さよならくちびる」は、あの頃の淡い想いを蘇らせてくれることだろう。

それぞれの胸に芽生えた想いと未来へ進む決意を胸に、最後のライブへと車は進む。

映画「さよならくちびる」は、人気女性デュオ〈ハルレオ〉の解散ツアーから物語は始まる。
時は少し遡り、ハル(門脇麦)とレオ(小松菜奈)が出会ったのはアルバイト先のクリーニング工場。上司に叱られヘコんでいたレオに突然「音楽をやらない?」と声をかけたのがハルだった。
最初はギターを触ったこともないレオだったが、音楽を奏でる喜びを知り、ハルの何気ない気遣いすら嬉しくて、いつの間にか孤独だった少女2人は同じ夢を共有するようになる。

「なんであたしなんかを誘ったの?」と問うレオに「歌いたそうな目をしていたから」と答えるハル。それが2人を繋ぐきっかけだった。

2人の音楽活動が実を結び徐々に人気が出てきた頃、2人に声をかけたのはかつてバンドマンで元ホストのシマ(成田凌)だった。
ハルレオの音楽に惚れ込んだシマは付き人として参加することとなり、ツアー車を用意し、夢を共有するのは2人か3人に。
しかし、シマがハルに恋心を抱いてしまったことがきっかけで、3人の関係は少しずつこじれ、溝が深まっていく。
さらに、ハルとレオには明かすことができないある「秘密」があって…。

今作で門脇麦が演じるハルは同性愛者。
同じ夢に向かって共に過ごす大好きな相手と仲間。
ハルが抱くレオへの想いは、今の関係を壊すことが怖くて明かせない。
レオが抱くシマへの想いは、辛くて切ないから応援できない。
シマが抱く自分への想いには応えることも、はっきりと拒絶することもできない。
これを読んでいるLGBTの方々なら、もしかしたら似たような経験をしたことがあるかもしれない。

劇中でハルレオが歌う、映画タイトルにもなっている主題歌「さよならくちびる」を提供しているのは泣かせる名曲を多くリリースしている秦基博で、劇中挿入歌を担当しているのはあいみょん。

ゲイ的な見どころとしては、成田凌の「めちゃ男前ではないけど無駄に醸し出される男の色気」を要チェック。いつもそばにいて気にしていなかったつもりが、気付いたら好きになっていた!っていう一番泣かされるタイプなんですよね。
小松菜奈と門脇麦の、それぞれ異なるエキセントリックな雰囲気も、この作品の世界観を作り上げている大きな要素。

最近、恋していないなというあなた。
青春なんて昭和の頃だから、その部分を記憶していた脳なんてすでに干からびているわよ!というそこのあなた。
そんな人にぜひ見ていただきたい、「大人のため」の胸キュンの青春映画です。

映画:さよならくちびる
2019年5月31日(金)全国ロードショー

ストーリー / 秦 基博、あいみょんの名曲にのせて、未来への希望を描く【青春音楽映画】誕生!音楽にまっすぐな思いで活動する、インディーズで人気の女性ギター・デュオ「ハルレオ」のレオ(小松菜奈)とハル(門脇麦)だが、付き人シマ(成田凌)が参加していくことで徐々に関係をこじらせていく。全国ツアーの道中、少しずつ明らかになるハル・レオの秘密と、隠していた感情。すれ違う思いをぶつけ合って生まれた曲「さよならくちびる」は、3人の世界をつき動かしていく―。

監督・脚本 / 塩田明彦 キャスト / 小松菜奈、門脇麦、成田凌
上映時間 / 116分 製作国 / 日本 配給会社 / ギャガ
https://gaga.ne.jp/kuchibiru/
© 2019「さよならくちびる」製作委員会

記事作成 / みさおはるき
(イラストレーター / 漫画家 / コラムニスト / たまに通販番組の出演者)
Twitter@harukisskiss