【医師に聞く】一周回って“セックス依存症”ってなんなんだ?毎日mrmrしちゃう人は特に知っておきたい、依存症のブレイクスルー

おうちで過ごすことが多くなった今、左手にスマホ、右手におちん…(逆も然り)なんてことが以前の生活よりも多くなったと感じる人もいるのでは? SNSのエロアカウントにポルノ動画サイト、最近では撮影したエロ動画を個人間で販売できるプラットフォームなど、僕たちの周りには「アダルトコンテンツ」が身近に溢れている。

日々、当たり前のようにそれらのコンテンツを見てムラムラした後、ほぼ100パーセントの確率でオナニーやセックスに奔る自分を“セックス依存症…?”と疑った経験はない? ということでそんな疑問を解決すべく、心療内科、精神科のメンタルクリニック『東新宿こころのクリニック』にて、性依存症を担当している佐藤未光先生に気になるアレコレをお伺いしてみました。

頻度が高い、プレイ時間が長い、だけでは“セックス依存症”とは呼ばない。ポイントは性生活が原因で自身の生活が切迫しているか否か。

――まず、単刀直入に…“セックスが大好き=「セックス依存症」”ではないのですか?

佐藤先生:セックスを含め毎日のように性的行為をしている、というだけでは依存症とは呼びません。依存症とは、物質への依存(アルコールやタバコなど)、行為への依存(セックスや買い物など)、人間関係への依存(共依存、恋愛依存など)と、この3つに大きく分けられます。

これらの物質や行為は本来的には欲求を満たし、満足感や喜び、楽しみといった「快」をもたらすものですが…その人の信条や価値観にそぐわない結果(心身へのリスク、経済事情の悪化など)になると分かっていてもやめられなくなることで、初めて依存症という病気の疑いが浮上してきます。

ちなみに、セックス依存症という病名はなく、2019年にWHOが国際疾病分類に追加した「強迫的性行動症」というのがそれにあたる病気です。 

――在宅時間が増えて、ついエッチな行為に奔りがちなのですが、これは強迫的性行動症の傾向があるのでしょうか?

佐藤先生:暇つぶしに性的行為をすることは依存症ではない人もすることなので、それだけではなんとも言えませんが…エスカレートして生活に何か支障をきたすようになっているのであれば、依存症の可能性があるでしょう。とは言っても、強迫的性行動症のような依存症の場合、本人が判断することは難しいんです。大抵は「自分には問題ない」と否認してしまうことがほとんどなので、不安な場合は『SCA-JAPAN(性的強迫症者の自助グループ)』のサイトを参考にしてみると良いかもしれませんね。
例えば、

■名前も知らない相手とのセックスや、一夜限りのセックスばかりしている
■普段なら恋愛対象として考えない人とセックスをする
■公園や大人向け書店、トイレなどへセックスの相手を探すために行くことがある
■性行動をファンタジーやマスターベーション、独りきりや匿名での活動に限定している
■性感染症の危険に身をさらして、自身の身体的な健康を脅かしたことがある
参照「©︎2020 Sexual Compulsives Anonymous Japan 20の質問」

といった内容の質問が全20個記載されており、うち3つ以上当てはまる場合は性的強迫症の疑いの余地があることを示唆しています。

――具体的にはどのような行動が「強迫的性行動症(セックス依存症)」に当てはまりますか?

もっとイメージしやすくお話しすると、例えば、恋人ができたらアプリやハッテン場はやめようと思っているのに、実際には恋人ができてもやめらず、「皆、そうしてるし」と割り切って恋人に隠れてセックスを続け、結局バレて別れる、ということを繰り返してしまう人。

または、ネット上の性的な活動に過剰に時間を割いている人。たいてい最初は、睡眠時間を削るようになります。やがて他の趣味や人付き合いよりも優先するようになり、仕事や勉学にも影響が出るようになります。

楽しくてやっているはずなのに、「あぁ、何でこんなことしているんだろう」とふと我に帰ることがあるのなら、依存症の可能性があるでしょう。

――強迫的性行動症の可能性がある場合、そしてやめたいと思った時はどうすればいいのでしょうか?

佐藤先生:今の診断基準では、その性行動の内容がどんなにひどかろうと、本人がやめる気がなければ強迫的性行動症の診断はつけられません。依存症は脳の病気。人によってはあっという間に依存症になる人もいれば、何回も繰り返しながら依存症になる人もいます。私たちは行動として現れているのを見ているだけなので、その行動から依存症かどうかを判断するのは難しいのです。

人によって「価値観」はそれぞれ。その人の価値観にそぐわなくなっているかどうかは、よく話し合ってみなければ分かりません。どの依存症であっても、回復するための手段は一緒で、本人がそれを「やめたい」という意志を持たなければ始まりません。もし、回復したいと思うのであれば、専門の医療機関にかかること、自助グループに参加することが必須です。

ゲイというセクシュアリティが共通項となり年齢や職業問わず交流の図れるゲイコミュニティにおいては、本来の自分の価値観とは異なる性行動にハマる機会が多いでしょう。すると、お酒を多く飲む地域でのアルコール依存症の割合が多くなるように、ゲイコミュニティでは潜在的な性依存症の人が多くなるのではないかと考えています。

――いかがでしたか?
“セックスばかりしている=セックス依存症”と安易なラベリングは自分はもとより、他人にもNG。その依存が生活の乱れの起因になっているか否か自分自身、ないし専門医の方と見極めることがとにかく大切なんだ。これから上京する人の中にはトーキョーセックスライフを楽しみにしている人も多いと思うけれど、“何事もほどほどに”という言葉を心の隅に留めて、心身ともにヘルシーな新生活をスタートさせて♡

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協力:東新宿こころのクリニック
性依存症担当医・佐藤未光先生
住所:東京都新宿区新宿6-281-12 DS新宿ビル2F(03-5155-5556)
http://www.higashishinjuku-kokoro.com/

イラスト/ひらやまたくみ
Instagram@takumi_198926
企画・取材・インタビュー/芳賀たかし
記事制作/newTOKYO