新世代を担う多国籍クルー“STARKIDS”メンバー、espeon「フェミニンでファッショナブルな自分を表現できる今が、人生で最も幸せな瞬間」。

STARKIDSのespeonのインタビュー

STARKIDSはSpace boy、espeon、BENXNI、TAHITI、levi、ROARの6人からなる多国籍クルーだ。日本のアニメやゲームミュージック、drain gangなど多方面から影響を受けた楽曲はジャンルに捉われることなく、強力なビートとバースが聴く者の体を縦横無尽に駆け巡る。

音楽性だけでなく個々のキャラクターも人気を後押している中で、ハワイ・ホノルル出身で“エスパータイプのkawaii担当”espeonは、バイセクシュアルでトランスフェミニン(出生時に割り当てられた性が男性で、自身に男性らしさより女性らしさを感じている人)を自認している。活動初期に見られた男性的な装いから一変して、女性的な装いで自己表現することを確立させた。

自身の在り方に悩んだ彼女にとって、日本移住そしてSTARKIDSとの出会いは何をもたらしたのだろうーー。

トランスフェミニンを自認するespeon

ーー「母親に理解してもらうことは諦めた」。厳格な価値観を持つ両親のもとで育てられたespeon。日本移住で手にしたのは、表現を楽しむ自由。

ーー高校卒業まで過ごしたハワイでの生活で、自身のジェンダーやセクシュアリティへ疑問を抱いたことはありましたか?

私がバイセクシュアルでトランスフェミニンかもしれないと思い始めたのは、中学生の頃。家に誰もいないときに母親のメイク道具でメイクをしたり、自分ではない“何者か”になろうとしたりしたよ。でも、家族は厳格な価値観を持っていたから、男性には男らしさを望む空気感があってさ。年齢を重ねていくに連れたそういった類のプレッシャーを友人からも感じるようになって、社会に溶け込めるよう周囲に求められる姿で過ごしていたよ。

その中でも当時付き合っていた彼女だけは唯一、私を尊重してくれる存在だった。度々トキシックな関係性になることもあったから結局、健康なメンタルヘルスを保つことは出来なかったけどね。セラピーにも通ってみたものの、「いつ幸せになれるんだろう」という思いが募るばかりで、むしろメンタルが不安定になっていったよ。

スターキッズのメンバーのエスピオン

ーーハワイから日本へ移住したことは、espeonさんにどのような変化をもたらしましたか?

大学入学を機に日本へ移住したことは、人生を大きく変える転換期になったと思う。以前よりもオープンでカラフルな自分になれているし…今のヘアスタイルを見たら分かるでしょ(笑)?

両親と離れて一人で暮らすことは、大きな自由をもたらしたんだ。こうしてインタビューを受けていられるのも、自由な環境を手に入れたおかげかもしれない。フェミニンでファッショナブルな自分を表現し、自分らしくいられることはこれまでの人生で最も幸せな瞬間だよ。

フェミニンなstakidsのespeon

その一方で両親は変わらず、私がSTARKIDSとして活動することやLGBTQ+コミュニティの一員であることには理解を示してくれてはいないんだ。

母親は元フィギュアスケート選手で、周囲には昔から多くのLGBTQ+当事者がいたらしいけど、まさか自分の子どもがその一人だったとは想像すらしていなかったみたい。「あなたが今このような状態なのは、一時的なものだから」と言われたこともあったし。だからもう、母親を説得することを諦めたよ。

スターキッズのエスピオンの顔

ーー出会うべくして出会った、“STARKIDS”という家族。ありのままを受け入れてくれたメンバーと永遠に、音楽を。

ーー音楽との出会い、その中でも影響を受けたアーティストはいますか?

最初は心理療法の一環として始めたことだったけれど、今ではメンタル面だけでなくキャリアを築くうえで不可欠なことになった。幼い時から共に過ごしてきたインターネットカルチャーは、現在の創作活動、そして私自身と密接な関わりがあるんだ。

影響を受けたアーティストは、アメリカのハイパーポップデュオ「100 gecs」。メンバーのLaura Lesはハイパーポップやインターネットミュージックシーンにおいて、初めて出会ったトランスジェンダーなんだ。そのほかにも「NANA」「ポケモン」「バイオハザード」などからインスピレーションを受けて歌詞を書くこともあるよ。

カミングアウトしたSTARKIDSのエスピオン

ーーメンバーへ性自認や性的指向をオープンにすることは怖くはありませんでしたか?

怖かったよ。当時付き合っていたパートナーには、メンバーにカミングアウトするのは怖いと話していたし。だから最初は、マネージャー兼バックDJのSteffen YOSHIKIにカミングアウトをしてみたんだ。歳上で面倒見が良い人だったから。すると、Steffenは私を受け入れてくれ、メンバーに対しても私のことを「He」ではなく、「Effie(espeonの愛称)」「She」「They」という代名詞を使って呼んで欲しいと伝えてくれたんです。
それ以来メンバーは、私へのリスペクトを込めて、私が望む呼び方で呼んでくれるようになったんだ。自分の殻を破る最初の一歩を踏み出すためのサポートをしてくれたSteffenと当時のパートナーには、感謝してもしきれないよ。

ちょっと話は変わるけど2年前、当時付き合っていたパートナーとの関係が上手くいかなくなってオーバードーズした時も、Space boyとBENXNIが友人を連れて真っ先にアパートまで駆けつけてくれて。命に別条ないことが知らされるまで側にいてくれたんだ。
私のことを人として、そしてアーティストとして受け入れてくれ、一人ではないことを感じさせてくれる。血の繋がりはないけど、STARKIDSは私にとって家族のような存在です。

インタビューに答えるespeon

ーーファンからの反応はありましたか?

自分のセクシュアリティについて改まって明言したことはないけど、自然と知ってくれているみたい。例えばSNSコミュニティにおいて、あるファンの子が私のことをミスジェンダリングしてしまったとき、他のファンの子が訂正してくれたこともあって、そういった環境ができていることには驚いた。

あとはSTARKIDSを追ったドキュメンタリーで、自分のセクシュアリティについて少しだけ触れたんだけど、それを見たファンの子が「自分のアイデンティティに悩んでいたので、とても勇気をもらえた」と伝えてくれたことは、印象に残っているよ。

STARKIDSのespeonの顔

ーーSTARKIDSとして今後、どのような活動をしていきたいですか?

STARKIDS結成当初は下らない渋谷のクラブイベントでパフォーマンスすることから始まったんだよ、しかもノーギャラでね。でも今、徐々にコネクションが広がって、日本だけでなく海外でも活動できるようにもなってきた。これからも自分たちのレーベル「guntai9」を通して、アーティストとのコミュニティを築きつつ、一緒に成長していけたら嬉しい。

STARKIDSは出身地や国籍が全く異なるメンバーが集まったグループだけど、誰も私たちを止めることは出来ない。これからも音楽を作り続けるよ。永遠に、子供のように。

STARKIDS – DOPAMINE (Prod. BENXNI) [Official Music Video]

■espeon
Space boy、espeon、BENXNI、TAHITI、levi、ROARの6人により2020年に結成された、多国籍ラップクルー「STARKIDS」のメンバー。好きなマンガは「NANA」、好きなポケモンは「エーフィー」。グループとしては昨年開催された国内最大級のヒップホップフェスティバル「POP YOURS」への出演が話題となった。 2023年9月にはインディペンデントレーベル「guntai9」を結成、日本のヒップホップシーン、クラブシーンを担う超新星としてメディアやファッション業界からの注目度も高い。
Instagram@starkidsjp

取材・通訳・翻訳・文/Honoka Yamasaki
英訳/Lady-J
写真/EISUKE
編集/芳賀たかし
撮影場所:DESIGN FESTA GALLERY(http://www.designfestagallery.com/)
記事制作/newTOKYO

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