アンチSNS、絶対に盛れない新世代SNS「BeReal(ビリール)」は、日本のゲイコミュニティで受け入れられるか。

2020年にフランスでリリースされた、”本物の友情を築く”SNS「BeReal(ビリール)」。2022年10月時点では、グローバルで5300万ダウンロードを突破。日本でも1月25日時点、App Store内ダウンロードランキング「ソーシャルネットワーキング」部門で3位にランクインするなどZ世代を中心に、ブームの兆しを見せている。

ユーザーは1日1回、ランダムな時間帯に通知を受けることになり、2分以内に無加工かつ一発撮りした写真の投稿を促される。映えを意識せず、友達とリアルをシェアすることが醍醐味の新世代SNSだ。既存のSNSが成熟期を迎えている今、BeRealはゲイコミュニティの繋がりを深く築く場となるのだろうか。機能や楽しみ方を把握した上で、考えていこう。

ーー徹底的に映えさせない。ノーマルカメラ一発撮りで築きあげるのは、深い友情。

「BeReal」最大の特徴といえば、“映え“を徹底的に排除した仕様にある。ノーマルカメラで撮影したリアルタイムの写真以外は投稿できないのはもちろんのこと、加工機能やフィルター機能も一切搭載されていない。かろうじて撮り直すことは可能だが、撮り直し回数が投稿に表示されるため、自分をよく見せようと思えば思うほど何となく気恥ずかしい目に合う。

さらにインカメラ(セルフィー)とアウトカメラ(今、自分の目の前に広がる風景)のシャッターが同時に切られる上、撮影された2枚が1枚に収められた形でタイムラインへ投稿されるため、どちらのカメラでも映える構図を捉えるのが極めて難しい。

結果、タイムラインは従来のSNSとは全く真逆の映えない写真で埋め尽くされる。フォローやいいね、インプレッション数の表示、広告といった概念も存在しない。”ありのままの姿をシェアすることが本物の友情を築く”というコンセプトに忠実な仕様だ。なお、特定のユーザーと繋がるにはアカウントを教え合うほか手段はない。

そんなBeRealがなぜ、アメリカやフランスを中心に爆発的ムーブメントを起こしているのか。そこにはSNS疲れが大きく要因しているようだ。日本においても周囲と自分を比較し自己否定に陥るケースをはじめ、自身の価値が数値化されることへの疲弊感、匿名で第三者のプライバシー侵害あるいは刺激の強いショートムービーを共有するbotが蔓延していることなどから、少なからずメンタルヘルスに支障をきたすユーザーも存在することは確か。

まさにSNS疲れを逆手に取った新世代SNSだが、具体的にどのような投稿がされているのか。ディスカバリー機能を使い世界中の投稿を見てみると、そこにはバズりを狙い過ぎたユーモアや実物より良く見せようとする加工済みセルフィー、経済力を誇示するような内容のものも存在しない。

※プライバシー遵守により顔やアカウント情報を伏せているため、実際の投稿とは異なります。

足元と眠そうな男子学生の顔やバスケの試合の様子と友達との3ショット、大衆車のハンドルと運転手の眠そうな顔に至るまでとにかく生活感で溢れている。承認欲求や自己顕示欲で膨れ上がった従来型SNSの影となり見えにくかった日々の瞬間を、淡々とアップする彼らを目にして最高にクールだと思わされるのだから不思議だ。

ここまでBeRealについてざっくりと説明してきたが、日本のゲイコミュニティに受け入れられる可能性はあるだろうか。コミュニティを形成する上でメインとなっているSNSといえばTwitter、次点でInstagramといったところだろう。双方のSNSにおいてはヘアカットやワークアウト後の盛れたセルフィー、全盛期の自分をアップする慣習などが根付いている反面、盛れていないセルフィーの投稿数は相対的に低く、BeRealへの抵抗感が薄れるまでは時間がかかるかもしれない。

ただ、ウケそうな機能を搭載していることも事実で、例えば自らの投稿をスクリーンショットしたアカウントに関しては該当する投稿を他SNSへシェアすることで特定が可能となっている。友達だと思っていた人が一転、恋愛対象に…なんていう恋の予感をいち早くキャッチする上で一役買いそうだ。

また、自身が投稿しなければ他ユーザーの投稿を一切閲覧することができないというフェアな環境も◎。半閉鎖的なコミュニティであるだけに、匿名のいやがらせや執拗なアクションに見舞われることもない。実際に友達と2週間ほど使用してみて、最初の数日間は何度か撮り直し投稿をしていた。

しかし、全く盛れていないセルフィーをラフにアップする友達への信頼感が増したのか、こちらも徐々に一発撮りをアップすることに慣れていく。そして、いつの間にか1日1回の投稿が楽しみになっているのだ。深い友情を築き上げるには、盛れたセルフィー100枚よりも盛れていないセルフィー1枚を共有する方が効果的なのかもしれない。

ーー健全なメンタルヘルスを保つ上でありのままの姿を肯定してくれる友達の存在は、誰もが必要としている。2023年はウィジェット機能を用いた写真シェアアプリ「TapNow」やメタバースSNS「Bondee」といった、親しい友達限定で楽しむSNSが話題を呼んでいるが、「BeReal」は日本のゲイコミュニティにおいて、ムーブメントを巻き起こすことはできるだろうか。

BeReal-Just your Friends,for Real.

記事制作/newTOKYO
文・写真/芳賀たかし

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