誰かの自分らしさを縛る伝統って、いらなくない? 一人のトランスウーマンが鬱屈とした主夫を変えていくヒューマンドラマ「ジョイランド 私の願い」

LGBTQ映画を扱うゲイの映画ライターによるコラム連載

映画ライターのよしひろまさみちが、
今だからこそ観て欲しい映像作品をご紹介するコラム
「まくのうちぃシネマ」第62回目

「長男だから結婚して跡継ぎを」とか、「女の子なんだからおしとやかに」とか。はぁ? って話ですよね。ちょっと早く生まれただけで、個性はさておき一家の担い手になるなんて「伝統」ってやつ? 人の生き方なんて時代とともに変わるのに、これが原因で自分らしさを失うなんて害でしかないわよね。

ぶっちゃけ日本でもこういうことに縛られて……って悩む隙も与えてもらえない人って多いと思うのよねー。で、おすすめしましょう『ジョイランド わたしの願い』! 舞台はパキスタンで2番目の大都市、古都ラホール。父や長兄一家と暮らす次男ハイダルと妻は、妻が稼ぎ頭でハイダルは主夫。え、それでいいじゃん……と思いきや、家父長制に厳格な父からのプレッシャー半端ない(この時点で怒り)。

で、紹介された仕事先で出会ったのが、トランスウーマンのビバ。あらゆるシーンで抑圧がある彼女だけど、力強く自由に生きる彼女に、ハイダルは惹かれていくのね。

で、これがラブストーリーかと思いきや全く違うの。ハイダルが仕事を得たことによって、妻は愛する仕事を辞める羽目に!? 束縛と抑圧が生み出すのは分断だけ、ってことを描く秀作。その気づきのきっかけをくれるのがトランスジェンダーのビバってのが超ナイス。ちなみにビバ役のアリーナ・ハーンはトランスウーマン当事者ですよ~。

◆ 『ジョイランド わたしの願い』
監督:サーイム・サーディク
出演:アリ・ジュネージョー、ラスティ・ファルーク、アリーナ・ハーン、サルワット・ギーラーニ ほか
配給:セテラ・インターナショナル
公開:10月18日より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

文/よしひろまさみち X@hannysroom
イラスト/野原くろ X@nohara96
記事制作/newTOKYO

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