HIVへの感染を事前に予防するPrEP(曝露前予防内服:性交渉の前にあらかじめ抗HIV薬を服用して、HIV感染を予防する方法)をゲイライフに取り入れる人が増える中、合わせて知っておきたいのがPEP(曝露後予防内服)。コンドームやPrEPといった予防をせずにリスキーな性交渉をしてしまった後から抗HIV薬を服用して、感染を予防する方法だ。
Kさん(ゲイ/20代)は昨年開催された海外のプライドイベントで出会った男性と性交渉をした際、HIVに感染しているか不安になり、間もなくPEPを始めたとのこと。感染機会からPEPを終えるまでの貴重な体験談をお話ししてくれた。
相手の包皮から出血し、コンドームの中は
血だらけ。頭を過るHIVへの感染
ーー HIVに感染したかもしれないと不安に思った理由を教えてください。
昨年、海外のプライドイベントへ参加したときに出会った、現地の40代ゲイ男性と性交渉をしたことがきっかけです。行為を行う前に半年前のHIVステータスは陰性だと口頭で伝えられたものの、そのときのステータスは分かりませんでした。普段からウケをすることが多く、彼にもコンドームをつけるよう促しました。
ただ、挿入されている途中、いつの間にか彼の包皮から出血していて、コンドームの中が血だらけになっていたんです。初めてのアクシデントにあたふたしてしまい、出血がどのタイミングで生じたのか、また出血を伴う性交渉はHIV感染リスクがとても高いことを思い出し、「HIVに感染したかもしれない」と不安な気持ちでいっぱいになりました。
ーーPEPについては、以前から知っていたのでしょうか。
5、6年前から知ってはいましたが、PEPを実際に行った人のインタビューなどは見当たらず、効果については懐疑的でした。それに当時は20〜30万円の費用がかかると記されていて、とても高額なことが印象に残っていました。
ただ、そうも言っていられる状況ではなかったので信頼できる友人に相談をしてクリニックを紹介してもらうことに。驚くことにPEPにかかる費用は私が想定していた4分の1の価格まで下がっていたこともあって服用を決め、帰国後、空港から直接クリニックへ向かいました。
感染リスクから24時間後、直接クリニックへ来院。
まもなく、PEPをスタート
ーー処方まではどのような流れでしたか。
処方事前検査(HIV・B型肝炎・腎機能検査)を無事にパスできるか不安でしたが、保健所などで行う検査と変わらなかったため、過度に不安を感じることなく臨むことができました。何より、担当して下さったクリニックの先生が性交渉におけるリスクやPrEP・PEPに関する質問に対して、真摯に回答してくれたので、安心してPEPを始めることができました。
クリニックのプライバシー性がとても高く、スタッフを含め人との接触最小限かつ他の患者との配慮が行き渡っているため、身長が高い私もパーテーションで区切られた席に座ると、他の患者の様子を目にするということはありませんでした。
ーーPEPにおける抗HIV薬の服用は、どのように行っていましたか。
私の場合は感染機会から約24時間が経過してからの服用だったのですが、処方された瞬間に1錠飲みました。飲み忘れないよう夕飯の時間や午後確実に起きている時間帯に服用し、念のために時計アプリで毎日決まった時間にアラームが鳴るよう設定しました。
ーー服用期間である30日間をどのような気持ちで過ごしていましたか。
ほんの少し不安はありましたが、服用前とほとんど変わらない気持ちで1ヶ月間を過ごせていました。もしPEPをしていなければ、常にHIV感染に怯えて精神的に大きな負担がかかっていたのではないかと思います。
療養期間中、性交渉の予定はあったものの、自分自身のセックスライフを見直すために断って
いました。
ーーPEP療法中であることをクリニックを紹介してくれた友人以外に話しましたか。
よく飲みに行くバーのママさんにはお話しました。心配になって相談したというよりは、PEPという手段に助けられたという話をすると「HIVの感染リスクも下げられて、セックスライフを見直す機会になってよかったんじゃない?」という前向きな言葉をかけてもらえて、療養中はその言葉に救われました。
30日間の服用期間を終え、クリニックに再度来院してHIV検査へ。
PEPを経験した今感じること
ーーPEPを終えてフォローアップとしての1ヶ月後のHIV検査で陰性告知を受けた時の心境を教えてください。
その言葉を聞いた時は、心の底から安心しました。先生からは規則正しく飲んでいれば感染しないと前向きな言葉をかけてもらえていたこともあって、結果待ちの際も冷静でいられました。
ーーHIVの予防意識として新たに芽生えた気持ちや、この経験から学んだことがあれば教えてください。
PrEPをしている人は、ふしだらなセックスライフを送っているとばかり思っていましたが、そうではなく、相手そして自分自身を守るための手段として有効活用しているのだと痛感しました。同時にHIV予防は自分ひとりだけで行えることに限界があると強く感じましたし、コンドームはもちろんPrEPといった手段もセックスライフのあり方に応じて取り入れる必要があると思います。
この経験は、今後の性交渉に大きく影響するでしょうし、双方に不利益が生じないよう感染予防を徹底していきたいです。
記事制作/newTOKYO
監修/プライベートケアクリニック東京