自分がトランスジェンダーだと気づくことって難しいことだと思っている。
僕自身、知識がなかった10代の頃、自分はレズビアンだとずっと勘違いしていた。当時は今ほど情報がなかった分、気づきづらさがあったように思う。けれど、情報が溢れている現代だからこそ、当時とは違った理由で性自認に悩む人が多いようにも感じる。いつの時代も自分を知るって難しい。
連載一回目となる今回は、 性自認「トランスジェンダーだと気づくきっかけ」についてご紹介します!
■ 気づくのはジワジワ
僕の場合、幼い頃から自分は「女の子」なんだという自覚はバッチリあった。いつの頃からか少しずつ、【女の子という自分】に違和感を感じるようになり、「なんか、周りのみんなと違う」「何が違う?どうして違う?」という、何とも言えない心にモヤモヤを持ち続けながら成長した。
一番最初に決定的な違和感を持ったのは赤いランドセルだった。どうしても嫌だったけど、なぜ嫌なのか?は自分でも説明ができなかった。周りの友人との違い、違和感の正体はなんだろう?と葛藤していた中で、ハッキリと自覚した違いは“僕は女性が好き”ということだった。
違いに気づいたからといって、すぐに自分はトランスジェンダーだという結論には行き着けなかった。まだトランスジェンダーという言葉も知らなかったし、人とは違う自分自身と向き合うことが苦しく、直視できなかった。
■ 気づいた瞬間
上戸彩さん主演のドラマ『金八先生』(第6シーズン)を見て、「あ、自分ってこれだ!」と、腑に落ちた。この瞬間、今までの心のモヤモヤが吹き飛び、自分が何者なのかが分かったことで安心した。やっと巡り合えたトランスジェンダーのロールモデル。まさしくターニングポイントだった。
僕は、トランスジェンダーの方に対し、トータルサポートを行っている会社を経営していて、これまでに15000人以上の性別の悩み相談を受けてきた。その中でも、僕と同じ気づき方をしている人は多かったが、他にも自身がトランスジェンダーだと気づかされるパターンがいくつかある。
自分の性、好きになる性、2つの気づきが必要なトランスジェンダー。経験と情報収集を得て、更に自分の中で蓄積された違和感の点と点が線で結びつき、葛藤しながらジワジワと確信に進んでいく傾向が多い。
■ 気づきのパターン傾向
[恋愛によるパターン]
【好きになった人が同性だった】よく聞くパターンの1つで、初めて芽生える感情により、自分の性に戸惑い、違和感を感じる(同性を好きだからってトランスジェンダーとは限らない)。また同性の友達が、異性に対して「かっこいい」「好き」「付き合いたい」と言っていることに共感できず、葛藤したり、恋愛トークについていけない。
[公言されるパターン]
親や友人に「あなたはもしかしたら性同一性障害なのでは…」と言われ、確信するパターン。 今まで何となく気づいていたけれど、気づいてないフリをして、蓋をしているところに周囲の人から突きつけられる。 隠しているつもりでも実は周りは気づいている場合もある。
[メディアによるパターン]
【金八先生】や【ラスト・フレンズ】など、テレビ番組やドラマ、映画など性自認の葛藤を描いた作品で気づかされたり、共感できる場面に出会うパターン。 ただ、テレビ番組やドラマを家族と一緒に観ている際、何気ない家族の一言「気持ち悪い」「信じられない」など、に対して傷つき、気づくパターンもある。
[規則によるパターン]
多くのトランスジェンダーが違和感を感じ、自分の見た目の性で区別されたものを着用したくないという思いから気づかされるパターン。最近は制服を選べたり、ランドセルもカラーバリエーションが増えているが、まだまだ不自由を感じ、悩んでいる人は多い。
■ 気づくきっかけやタイミングは人それぞれ!
ご紹介したパターンはごく一部。
同じトランスジェンダーでも、100人いたら100通りの人生がある。だから自分がそうだって早い段階で確信できる人もいれば、ある程度年齢を重ねてから気づく人もいる。だけど早い遅いって関係ないと思っていて、自分自身の心に素直になって、しっくりくる生き方ができることが大切だと思っている。
いつの時代も、自分を知ることって難しいからこそ、セクシュアリティへの気づきも多様であって良いと思っている。
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文/井上健斗 Twitter@KENTOINOUE
イラスト/RYU AMBE Instagram@ryuambe
記事協力/性同一性障害トータルサポート/G-pit