赤ちゃんは、コウノトリに運ばれてきません。性教育歴15年のどろんこ保育園・宮澤園長から学ぶ、5歳児向け性教育Q&A♡

子どもを育てるすべての方に参考になってほしいQ&Aインタビュー

保育園での性教育のインタビュー

ーー赤ちゃんって、どこから来るの?
ーー僕って、どうやって生まれたの?
そんな風に親へ問いかけると、なんとなく親にはぐらかされた記憶がある人も多いことだろう。
一方で5歳児からの性教育を実践するどろんこ会グループが運営する認可保育園、北千住どろんこ保育園の先生に同じ質問をしてみると、このように返ってくる。

ーーおしっこの穴とウンチの穴の真ん中にある穴からだよ。通れないときはお腹を切って出てくることもあるよ。
このように嘘のない性教育は、小学校へと進学する前に、自分の身を自分で守れるようにするためでもあるそうだ。
今回は北千住どろんこ保育園施設長・宮澤先生が、性教育に悩む大人の質問にQ&A方式でお答えします♡

どろんこ保育園での性教育の絵本の読み聞かせ

Q1.「赤ちゃんはどうやって生まれるの? 」という質問に対しては、どう説明したらいい?

大事なのは、ごまかさないこと。「そんなこと知らなくてよい」 「何を言っているの!」とはぐらかしたり、ごまかしたりしないでください。幼いときにこういう質問が出てきたとき時こそチャンス! 恥ずかしがらない、嘘をつかないことがないよう心に留めておいてもらえればと思ってます。

例えば「コウノトリが運んでくる」「神様がお腹の中に入れてくれる」「桃から生まれる」のようなお話で、人間としてどうやって生まれるのかをきちんと伝えずに、本当のことを伝えないというのはもったいないです。
「いい質問だねぇ」と伝えた上で、「赤ちゃんはお腹の中で大きくなって、生まれてくる道がある」という話をします。その道がどこにあるというかと、 「おしっこの穴とウンチの穴の真ん中にある穴からだよ。通れないときはお腹を切って出てくることもある」と、当たり前のこととして話しています。

どろんこ保育園の性教育で使用する絵本のおちんちんのえほん

Q2. 受精の過程やセックスについて、どこまで話せばいい? また、ラブホテルなどを見かけた際に「あれは何?」と言われたとき、スルーしてもいい?

どろんこ会の性教育プログラムで使用している『おちんちんのえほん』に受精の過程が説明されています。男性の性器から精子が出て、女性のお腹にいる卵子とくっついて赤ちゃんとして成長していくということがあり、子どもたちに伝わる内容だと思っています。絵本にはからだのしくみが書いてあり、「命のもと」が出会って生まれてきたという話がありますが、セックスという言葉は出てこないので、セックスという言葉では説明していません。

ラブホテルについては、きらびやかで面白そうな感じがする外装に惹かれて興味をもちます。例えば「あれは大人になったらお泊りできるホテルだよ」とさらっと答えるのはどうでしょうか。

Q3.先生のおっぱい(プライベートゾーン)を触ってはいけないということを伝えるには?

子どもでも例外にするのではなく、触ってはいけないもの、よくないことであるという認識をもたせる必要があります。そうしないと、「嫌だと言われなければ触ってもよい」という認識になってしまう。大人になったとき、嫌と断られた際に、自らを否定された気持ちになることが危惧されます。

だからと言って、「触る子は悪い子」という言い方もよくありません。「触る行為自体を嫌だと言っている」ということを伝えるのが◎。
プライベートゾーンの話は3、4歳でも分かってくれます。まずは、プライベートゾーンを人に見せてはいけないし、見せてと言われても見せてはいけないという話をきちんと子どもたちにするところから始めてきましょう!

どろんこ保育園での性教育の様子

Q4.子どもが性器を触ったり、自慰行為をしているのを見たときは、どう対応すればいい?

遊びと遊びの間や寝るときなど、手持ち無沙汰になると触ってしまうという傾向が見られます。「そんなことをしてはいけない」としかるのではなく、気持ちを何か別の物に向けられるような言葉掛けが良いかもしれません。例えば寝ているときに触っていたら、体を仰向けの態勢にし、 手をなでてあげたりすると、そのまま触らずにいることができることもあります。

意識を違う方向へ向けてあげることもひとつの方法です。また、人前で触っているときは、そのこと自体は悪いことではなく、また、それをしている人が駄目ということではない。そのこと自体をいけないことというのではなく、人前ですることではない、生きていく上でのルールとして教えていくことは、ある程度年齢を重ねたときには必要と思います。

Q5.保育士として性別違和を抱えている子ども、その保護者とのコミュニケーションの方法は?

私自身、自園にそう思われるお子様が通われていた際には、その子がありのままでいいという気持ちでいられるよう接していました。例えば「男の子だから〇〇しなさい」「女の子だから〇〇らしく」といった言葉がけをしていないかということを見直しました。

保護者との話し合いを重ねていくことも大事です。小学校に行っても受け入れてもらえるよう、そのお子様の特徴など をきちんとお伝えし性別違和を抱えている子に対しては、性規範に基づいてからだの性とこころの性を無理に一致させることを避けてもらいたいとお願いしました。
「生まれてこなければよかった」などという思いをさせないような世界になるよう、 周囲に話をしておくことが必要だと思います。

ーー性に関する知識や悩みを恥ずかしがらず話せる世界にしていきたいという思いのもと、性教育に取り組む園長の宮澤先生は、子どもから性にまつわる話を聞かれた際も恥ずかしがらず、開けっ広げに答えられるような感覚を園全体で持ち続けて行きたいと話す。

年末年始は何かと、家族や親戚などに会う機会が多くなる時期。性教育を始めてから15年以上経過するどろんこ保育園のノウハウも参考にしながら、性にまつわる考えを交換してみては?

◆ 社会福祉法人どろんこ会
2007年設立。自ら考え行動できる“にんげん力”を育てることを目標に掲げ、異年齢保育・インクルーシブ保育を実施。家族、地域、園が一体となり、子育てをすることで、日常の生活・遊び・労働から生きる力を身につけて行く保育が注目を集めている。
https://www.doronko./jp
Instagram@doronko_official

記事制作/newTOKYO