ブロークバック・マウンテンのジェイクも登場。ミドルエイジのブロマンス西部劇!? 映画「ゴールデン・リバー」一攫千金の先にある「夢」

意識・価値観の違いを受け入れることの大切さ、家族・兄弟愛、信頼、友情…。ウェスタンサスペンスに観る男たちの思惑と深い絆。
そこから垣間見える、新しい時代への希望と多様性について考えさせられる一面とは?

イーライ・シスターズ役にジョン・C・ライリー、チャーリー・シスターズ役にホアキン・フェニックスと個性派俳優による兄弟演技が見どころ。

第75回ヴェネチア国際映画祭にて、銀獅子賞(監督賞)受賞、第44回セザール賞にて監督賞など4冠に輝いた本作は、決して組むべきではなかった4人の一攫千金の物語。

殺し屋のシスターズ兄弟と仕事仲間の連絡係、金の化学式を見つけた科学者が手を組み、互いの立場を超えて共に歩もうとする姿を描いているのだが、従来の西部劇に抱くような銃撃戦やロマンスとは少し違った味を出している。 ストーリー自体は殺気立つものや過剰なスケール感というわけではなく、コメディ要素が盛り込まれ笑いを誘ってくれるので見やすい。そして、それぞれのキャラクターにフィーチャーしたヒューマンドラマとも言え、色んな角度から見て楽しむことができる。

まるで少年時代を取り戻すかのような友情が芽生える場面。それぞれの抱える想いや背負ってきた過去などを忘れ、ひとつの夢を語り合う4人。

ここで一番描かれている側面はさまざな愛。
酒癖悪く乱暴者ですぐカッとなる幼稚な弟を、いつも心優しい兄が面倒を見るというもの。喧嘩しても違う道を歩みたいと意見が別れても一緒にいることが当たり前で、どちらかが傷つけばどちらかが優しく包み込む。人を殺すことに躊躇しないプロの殺し屋なのに、心通う仲間への愛には溢れている。 また、裏切り者だろうが手を組むことで生まれる友情にもフォーカス。一攫千金に目がくらんだことで手を組んだ4人だが、生きてきた経歴も考え方もそれぞれ。しかし友情をきっかけに信頼が生まれ、今まで自身が持たなかった思考や価値観を共有し、理解していく様子が映されている。

そしてちょっぴり面白いのがブロマンス的描写としてもうかがえること。
映画「ブロークバック・マウンテン」でジャック役を演じたジェイク・ギレンホール!!!の影響も強いのだが、これは勝手な憶測でオーディアール監督が映し出したいシーンの意味合いとしては明らかに違うが、それを楽しむのも有りなのではと思っている。
モリスの笑顔を褒めるウォーム。それにハニカムモリス。一緒に昼食を食べないかと誘う流れー。
心の駆け引き場面での瞳の奥の描写。嬉しそうに口角が少し上がる自然さー。
川辺ではしゃぐ4人。不思議と心を開くイーランとウォーム。そしてチャーリーとモリスの空気感ー。
精神的な繋がりが芽生えたからこその別れと決断ー。

新しい理想郷を目指しつつ人間の皮肉な部分も持ち合わせ、欲望の代償から学ぶ展開や男臭い4人の関係性を考察しながら、別の視点でムフフしたりと捉え方次第で如何様にも楽しめる「ゴールデン・リバー」。
男たちの生き様とその人間ドラマが描き出す答えは、多様性社会への開拓劇にもハマる内容。
ぜひ最後シスターズ兄弟が帰る場所にも注目してみてほしい。

映画:ゴールデン・リバー
2019年7月5日(金)TOHOシネマズ シャンテ他全国順次ロードショー

ストーリー / 時はゴールドラッシュ、最強と恐れられる殺し屋兄弟は一帯を仕切る提督からの依頼で、仕事仲間の連絡係と共に、黄金を見分ける化学式を発見した化学者を追う。だが、黄金に魅せられた4人は、立場を超えて手を結ぶことになるがー。

監督・脚本 / ジャック・オーディアール
キャスト / ジョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックス、ジェイク・ギレンホール、リズ・アーメッド
上演時間 / 122分 製作国 / フランス、スペイン、ルーマニア、ベルギー、アメリカ 配給会社 / ギャガ
http://gaga.ne.jp/goldenriver
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