オペラ最高傑作として長く愛され続けているジャコモ・プッチーニ作曲の『ラ・ボエーム』(“ボエーム”とは、“ボヘミアン”のフランス語で、自由に生きることに憧れた19世紀パリの芸術家の卵たちのことを指す)。日本でも幾度も再演され、LGBTQ+のファンも多いブロードウェイミュージカル『レント』の原作にもなったことで有名な作品。
ーーその設定を大胆に変え一新されたミュージカル映画『ラ・ボエーム ニューヨーク愛の歌』が、10月6日(金)より全国ロードショーとなる。
2021年にパンデミックの影響により劇場が相次いで閉鎖されたことから制作されることになった本作は、舞台設定を1830年代のパリから現代ニューヨークへと置き換えただけでなく、メインキャラクターにアジア人を据えるという大きなアレンジがなされ、現代にも残る貧困や格差社会による生きづらさを抱えながらも、夢や恋、青春を謳歌しようとする若人の姿を描く。
舞台設定に変化はあるものの、オペラ形式であることは一貫しており、現役オペラシンガーたちによる圧倒的な歌唱でストーリーは進んでいく。そのミスマッチもまた見どころだ。
また、『レント』とは違い、LGBTQ+のキャラクターが登場したり、同性愛を描くことはしていないが、移民、人種的偏見・差別、貧困といったテーマが根底にあり、ある種のマイノリティであるキャラクターが登場する。(詩人・ロドルフォ役の中国人テノール歌手シャン・ズウェン氏は、一部のゲイ人気が集まりそうな風貌なので、そういう視線を送るのもアリ!)
だが問題提起を押し付けがましくする作品ではないので、圧巻の歌声と美しい映像にただただ浸るだけでも十分。オペラ初心者にも打って付けの作品だ!
■ラ・ボエーム ニューヨーク愛の歌
2023年10月6日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
https://la-boheme.jp/
ストーリー/大晦日のニューヨーク。凍える寒さの屋根裏部屋で、その日暮らしの夢見る4人の芸術家たち。その中の一人、詩人のロドルフォが部屋に残っていると、隣人のミミが彼の火を借りにやって来て、2人はたちまち恋に落ちる。同じ頃、店で仲間と新年パーティをしていたマルチェッロは、偶然やってきた元恋人ムゼッタと再会。最初は戸惑いつつも、2人の間にはかつての強い愛が蘇るのだった。運命的な出会いを果たした、ミミは重い病に侵され、ロドルフォはそんな彼女のもとを立ち去っていた。同じころ、ムゼッタとマルチェッロも嫉妬心から別れを迎えていた。すれ違う2組の恋人たち。そしてそれぞれ別の道を選んでいくのだが――。
監督:レイン・レトマー 作曲:ジャコモ・プッチーニ/音楽監督:ショーン・ケリー 製作:モアザンミュージカル(長谷川留美子)/出演:ビジョー・チャン、シャン・ズウェン、ラリサ・マルティネス、ルイス・アレハンドロ・オロスコ、井上秀則、アンソニー・ロス・コスタンツォ、イ・ヤン 2022年/香港・アメリカ/スコープサイズ/96分/カラー/伊語/5.1ch/原題『La bohème: A New York Love Song』/日本語字幕翻訳:古田由紀子/配給:フラニー&Co. シネメディア リュミエール/映倫区分G © 2022 More Than Musical.All Rights Reserved.
記事制作/アロム(newTOKYO)