友情と恋の狭間に揺れる、青年二人の切なくも愛おしい12日間。「マティアス&マキシム」が9月25日公開!

デビューから一貫して“母と子”をテーマに作品を作り続けてきた俳優・映画監督のグザヴィエ・ドランの新たな幕開けを予感させる最新作『マティアス&マキシム』が9月25日より公開。
2018年、日本でも公開され話題となった映画『君の名前で僕を呼んで』にインスパイアを受け、本作の脚本執筆に着手したという彼が描いたのは、美しい婚約者がいるマティアス(ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス)ともうすぐ街を離れるマキシム(グザヴィエ・ドラン)の幼馴染み二人が恋と友情の間に揺れる12日間。
「誰かを好きになること」の切なさや恋しさが美しいピアノの旋律と繊細な映像と共にスクリーンに溢れ出す──

──たった一度の戯れのキスで気づいた、お互いの秘めた想い。

 30歳のマティアスとマキシムは幼馴染み。同じく幼馴染みのリヴェットやフランクといった仲間たちが集うパーティへと向かうが、そこで彼らを待ち受けていたのはリヴェットの妹からの、あるお願い。彼女の撮る短編映画でキスをすることになった二人は、そのキスをきっかけに秘めていた互いへの気持ちに気づき始める。 

美しい婚約者のいるマティアスは、思いもよらぬ相手へ芽生えた感情と衝動に戸惑いを隠せない一方で、マキシムは友情が壊れることを恐れ、想いを告げずにオーストラリアへ旅立つ準備をしていた。迫る別れの日を目前に、二人は抑えることのできない本当の想いを確かめようとするが──

──テーマはセクシュアリティではなく、純粋なロマンス。マティアスとマキシムの間に芽生えた感情を通して蘇る初心な気持ち

親友であり兄弟同然のように育ってきたマティアスとマキシム。互いに性的な魅力を感じることなく生きてきた2人が、30歳にして愛しているかもしれないと気づくところから物語が始まるわけだが、急展開でキスをしたりハグをしたり…激しく求め合う行為によって、彼らの間にある複雑な感情を時期尚早かつ簡易的に映し出すのではなく、互いへの気持ちの深さが垣間見える一瞬一瞬を凪のような静けさの中で丁寧に描いているのが魅力の一つ。

ヘテロセクシュアルのラブロマンスを描いた映画において「僕は男性で、女性が好き。その中でもあなたが好き」といった自身のセクシュアリティを前置きするセリフがないように、彼らを含む登場人物のセクシュアリティを明確に判断できるシーンはほとんどないのだが、それは「同性間に愛情が芽生えることは、至って自然なことである」という、力強いメッセージにも感じられた。 

好きだけど、アクションを起こせず目で追うだけ。自分以外の人と楽しそうに話をしている姿を目の当たりにすると、なんとなく不機嫌な気持ちになる。でも、憧れの彼と話した日には、そんな感情さえ忘れてしまうぐらい幸せな気持ちになる。

30年間の人生を歩んできた二人を描いているにも関わらず、「恋」や「愛」を知ったばかりの10代のピュアな思い出を思い出すのはなぜか。それはきっと、彼らの間に芽生えた気持ちが、それだけ純粋なものであったから。

お互いを思う気持ちが友情なのか、それとも恋愛感情なのか…微妙な視線のやり取りや遠回しな言葉選びで本音を隠し、あるいは本音を探る繊細な描写を通して“男性同士の恋”ではなく、“マティアスとマキシムの純愛”を見事に描き切った本作。

監督兼マキシム役を演じたグザヴィエ・ドランが「テーマはセクシュアリティではなく、純粋なロマンス」と語る理由が、きっと分かるはず。そしてLGBTQについて知る上でオススメしたい作品の一つとなるだろう。「好き」という気持ちは、これほど自然に芽生えるものだと。

■映画:マティアス&マキシム
2020925()よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほか公開
配給/ファントム・フィルム
©️2019 9375-5809 QUÉBEC INC a subsidiary of SONS OF MANUAL
https://www.phantom.com/m-m

記事制作/芳賀たかし(newTOKYO)

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