三島由紀夫生誕百周年。「わが友ヒットラー」と「近代能楽集」、二つの舞台が映す〈結びつき〉のかたち。

国家や思想の物語として語られてきた三島由紀夫の戯曲は、視点を変えることで、別の輪郭を帯び始める。そこに浮かび上がるのは、男性同士の濃密な関係性、理想と依存、そして避けがたい断絶──。 

三島由紀夫生誕百周年を記念した公演として、戯曲「わが友ヒットラー」と「近代能楽集」の同時上演が、12月11日(木)より新国立劇場 小劇場にて開幕した。上演は12月21日(日)まで行われる。

ストレートプレイで上演される「わが友ヒットラー」は、2022年に読売演劇大賞・上半期作品賞ベスト5に選出された作品。三島作品が持つ硬質なテーマを現代的な視点で再構築する松森望宏の演出は、観客に強い印象を残し、三島文学の持つ緊張感と普遍性を鮮やかに浮かび上がらせてきた。

谷佳樹、小松準弥、小西成弥、森田順平ら個性豊かなキャストが集結し、権力、理想、革命、裏切りといった主題が重層的に描かれていく本作。政治劇としての側面を持ちながらも、登場人物同士の強い結びつきや、そこから生まれる緊張と断絶が色濃く描かれており、作品の構造をより立体的に感じさせる。

一方、「近代能楽集」では、三島由紀夫が描いた独自の美学と、人間の情念に焦点を当てた作品群を上演する。戦後の日本で心の再生を求める青年を描いた「弱法師」、老いと愛、孤独と虚無の狭間で揺れる女性像を浮かび上がらせる「卒塔婆小町」、狂気と愛、欲望と理性の葛藤を抱えた女性を描く「班女」。これら三作品を、声のみで想像力を喚起する朗読劇という形式で届ける。

三島由紀夫の作品は、登場人物の内面や関係性を通して、人間の感情や葛藤を鋭く描き出す点に特徴がある。本公演では、異なる形式の二作品を通して、人物同士の結びつきや距離の取り方が、どのように舞台上に立ち上がるのかを見つめ直すことができる。
生誕百周年という節目に上演される本作は、三島由紀夫の表現が、今なお多様な視点から読み解かれ得ることを、観る者に委ねる舞台となるだろう。

■三島由紀夫生誕百周年記念二作品同時公演/わが友ヒットラー×朗読劇 近代能楽集
日時|2025年12月11日(木)〜12月21日(日)
場所|新国立劇場 小劇場
https://cedar-produce.net/mishimakinen/

記事制作/newTOKYO

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