ゲイであることを公言していた巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督に見出され、少年愛をテーマにした異色映画『ベニスに死す』(1971年)のタジオ役として世界中に衝撃をあえた、15歳の少年ビョルン・アンドレセン。
映画『ミッドサマー』(2019年)の老人ダン役で注目されふたたび世界を驚かせた彼が過ごした、誰も知らない50年間の秘密が今、明かされる。
ーー美を見つめることはすなわち“死の凝視”だ。
(ルキノ・ヴィスコンティ)
ドキュメンタリー映画『世界で一番美しい少年』、2021年12月17日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ他にて全国順次公開。
ビョルン・アンドレセンは「映画史に残る美少年」という話題では必ず最初に名前が上がる俳優だと断言できる。
世界中をセンセーショナルに巻き込んだ名作映画『ベニスに死す』をうろ覚えで説明するなら「この世の存在と思えないほどの美少年に心奪われて、遠目から恋焦がれながら死んじゃうおじさんの話」で、ビョルン・アンドレセンの性別どころか人間のレベルさえ超えた美しさだけが記憶に残っているから。
ギリシア神話に登場する美少年さながらの神秘的な美しさは世界中を虜にし、日本の少女漫画にも多大な影響を与えたことでも有名だ。
漫画家・池田理代子氏によるフランス革命を描いた代表作『ベルサイユのばら』に登場する、架空の男装の麗人、オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェが実はビョルン・アンドレセンをモデルにしている、と今作のドキュメンタリー内で明かしている。
また、現在40代以上のゲイの方ならご存じの方も多い、漫画家・魔夜峰央氏の代表作『パタリロ!』の初期エピソード『スターダスト計画』(1983年に映画化)にも、バンコラン少佐のかつての恋人であるビョルン、そしてその双子の弟のアンドレセンが敵の暗殺者として登場する。
その他にも、当時の、いわゆる「やおい」「BL」のジャンルで描かれた少女漫画には、あきらかにビョルン・アンドレセンを意識したであろう美少年が多く見受けられる。
確かに、彼は「世界で一番美しい少年」と称えられるにふさわしい美貌を誇り、日本でも芸能活動を行い、歌まで出していたのだが、時の流れとともに忘れられてしまったのも事実。
その後、スクリーンで観る機会のなかったビョルンだが、2019年に公開された映画『ミッドサマー』では、登場シーンはわずかながらもまるで中世の魔法使いのような風貌のインパクトのある役で、「え!あのビョルン・アンドレセン?」と当時を知る人を驚かせたのも記憶に新しい。
そして何より50年経った存在感は、少年・タジオの見つめてきた「現実」を物語っているようにも感じとれたことだろう。
類まれな美しさを持って生まれてしまったがゆえに、手に入れた栄光と破滅。切実なまでのゲイコミュニティとの関わりあい。大人によって搾取されてしまったかけがえのないもの……。
かつて「世界で一番美しい少年」だった彼が、50年の時を経て再生を果たし、自らの軌跡をたどる衝撃のドキュメンタリー。
これまで誰も知らなかった「世界で一番美しい少年」の秘められた真実が明かされる。
◆ 世界で一番美しい少年
2021年12月17日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ他にて全国順次公開
https://gaga.ne.jp/most-beautiful-boy
ストーリー/“世界で一番美しい少年”と称賛され、一大センセーションを巻き起こした少年がいた。巨匠ルキノ・ヴィスコンティに見出され、映画『ベニスに死す』に出演したビョルン・アンドレセン。来日時には詰めかけたファン達の熱狂で迎えられ、日本のカルチャーに大きな影響を及ぼした。だが彼の瞳には、憂いと怖れ、生い立ちの秘密が隠されていた…。そして50年後。伝説のアイコンは、『ミッドサマー』の老人ダン役となって私達の前に現れ、話題となる。彼の人生に何があったのか。今、ビョルンは、熱狂の“あの頃”に訪れた東京、パリ、ベニスへ向かう。それは、ノスタルジックにして残酷な、自らの栄光と破滅の軌跡をたどる旅ーー。
配給/ギャガ
©️Mantaray Film AB, Sveriges Television AB, ZDF/ARTE, Jonas Gardell Produktion, 2021
記事制作/みさおはるき(newTOKYO)