
北欧映画界で評価されてきたダーグ・ヨハン・ハウゲルードの長編映画「SEX」「LOVE」「DREAMS」の3作品が日本初上陸。「オスロ、3つの愛の風景」として9/5(金)より特別上映されることが決まった。中でも、女性教師に恋をした17歳少女の赤裸々な初恋手記をめぐる「DREAMS」は、第75回ベルリン国際映画祭(2025)にて、ノルウェー映画初の金熊賞という快挙を成し遂げた注目作でもある。
そのほか、2人の医療従事者が様々な愛の形を模索する『LOVE』、妻子がいる男性がとある体験から”らしさ”を再考する『SEX』も、名だたる映画際でノミネート、受賞を果たした珠玉の一作だ。正義のジャッジを下すことなく、これまでに刷り込まれてきた価値観と内から湧き出てくる感情を紐解いていく人々の姿に、わたしたちは共感し、戸惑いながら、未知の刺激と余韻に出会うことになるだろう。

ーー自然と文化の美しい街、オスロから届く「恋」「愛」「性」にまつわる3つの”風景”
◆「DREAMS 恋の陶酔」
17歳、高校生のヨハンネは新任のフランス語教師・ヨハンナに心を奪われる。初めての感情に気分は高揚し、夢にまで見るほど想いが募り、目が合うだけでまるでこの感情を見透かされたような感覚に陥る。そして友人と話している時にようやく自分が恋をしていることに気づく。
感情の正体に気づいたヨハンネは、彼女のことが頭から離れなくなり、親しげに彼女と編み物の話をする他の生徒に嫉妬、自分だけが距離が遠い存在のような焦りを感じ始める。恋煩いの状態に陥ったヨハンネはついにヨハンナの家を訪れることに。ヨハンナは戸惑いながらも泣いているヨハンネを抱きしめて家に招き入れる。

1年後、ヨハンネはこの苦しくも最高の出来事だった初恋を手記に書き留めた。そして誰かにこの気持ちを打ち明けたくなり、詩人の祖母に読ませる。祖母は戸惑いながらも孫の想いを受け止める。ただし母クリスティンにも読ませるべきとし、手記の内容を共有することに。
手記を見て孫の文学的な才能を見出す祖母に対し、教師と娘の生々しい描写に動揺を隠せない母だったが、やがて二人で手記を出版することをヨハンネに勧め始め…。

◆「LOVE 愛の考察」
オスロの病院の泌尿器科に勤める医師マリアンヌと看護師トール。ある日、マリアンヌはオスロ対岸のネソッデン行きのフェリーに乗って友人のハイディが紹介してくれた交流会で、地質学者のオーレと出会う。わずかに魅力を感じるが、彼が子連れで元妻と隣人同士ということを知り、モヤモヤした感情を抱えオーレの家を後にする。すると帰りのフェリーでたまたまトールと遭遇。
マリアンヌが今日の出会いについて色々話していると、トールはマッチングアプリでの一夜限りの関係に見出す“親密さ”について語る。その後、トールはフェリーで精神分析医をしているビョルンと知り合う。

マリアンヌは再びオーレの家へ。互いの仕事の専門分野の話などを通じて親密になるものの、一番大事な存在は娘という彼の話を聞いて複雑な面持ちで家をあとにする。そして先日トールから聞いた一夜限りの関係を試すことに。アプリを介して男と知り合い、刺激的な夜を過ごす。
だが、話をすると男が既婚者だと発覚。悪びれることなく持論を展開する男に、マリアンヌは戸惑う。一方、トールはフェリーで出会った精神科医ビョルンと病院で見かけ、具合の悪そうな彼に思わず声を掛けると…。

◆「SEX 性の再考」
煙突掃除人の男性ふたりが仕事の合間に雑談を交わす。金髪の男は「夢の中でデヴィッド・ボウイに女として見られた」と語り、思わぬ解放感を覚えたと告白。すると茶髪の男は、「昨日、客の男とセックスをした」と打ち明け、初めての刺激を感じたと話す。
驚く金髪の男に「ゲイではない」と否定し、「妻にも話した」と続ける。戸惑う金髪の男に、「浮気じゃない。ただのセックスだ」と返す茶髪の男。噛み合わない会話に、「互いの話は他言無用」と約束して別れる。帰宅後、茶髪の男と妻との会話も平行線をたどる。妻は涙ながらに「許せない」と訴え、男は「君への愛は変わらない」と答えるが、溝は埋まらない。

一方、教会の聖歌隊でソロを任された金髪の男は、13歳の息子に見守られながらボイストレーニングを受ける。そして最近声が高くなって出しづらくなった気がすると相談する。
妻との進まない会話ばかりで煙突そうじの仕事が捗らない茶髪の男は金髪の男を呼び出し、屋根の上で「妻に言わなければよかった」と後悔の念を口にする。金髪の男は再び見たというボウイの夢を語りはじめ…。
ーー日常的に使用されるフェリー、ランドマークであるオスロ市庁舎、煙突のある家々など、ノルウェーの首都・オスロならではの自然と文化が融合する美しい景色が、人々の優しくささやかな営みを映し出す。エリック・ロメールから多大な影響を受けたというハウゲルードが描く、現代社会で生きる人間の”おかしみ”を堪能してほしい。
◆「オスロ、3つの愛の風景」 9月5日(金)Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、 ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー
https://www.bitters.co.jp/oslo3/
【上映作品】
「DREAMS」
監督・脚本:ダーグ・ヨハン・ハウゲルード/撮影:セシリエ・セメク/出演:エラ・オーヴァービー、セロメ・エムネトゥ、アネ・ダール・トルプ、アンネ・マリット・ヤコブセン/2024年/ノルウェー/ノルウェー語/DCP/5.1ch/110分/ビスタ/原題:Drømmer/英題:Dreams(Sex Love)/配給:ビターズ・エンド/後援:ノルウェー大使館 ©Motlys
「LOVE」
監督・脚本:ダーグ・ヨハン・ハウゲルード/撮影:セシリエ・セメク/出演:アンドレア・ブレイン・ホヴィグ、タヨ・チッタデッラ・ヤコブセン、マルテ・エンゲブリクセン、トーマス・グレスタッド、ラース・ヤコブ・ホルム/2024年/ノルウェー/ノルウェー語/DCP/5.1ch/120分/ビスタ/原題:Kjærlighet/英題:Love/配給:ビターズ・エンド/後援:ノルウェー大使館 ©Motlys
「SEX」
監督・脚本:ダーグ・ヨハン・ハウゲルード/撮影:セシリエ・セメク/出演:ヤン・グンナー・ロイゼ、トルビョルン・ハール、シリ・フォルバーグ、ビルギッテ・ラーセン/2024年/ノルウェー/ノルウェー語/DCP/5.1ch/118分/シネスコ/原題:Sex/英題:Sex/配給:ビターズ・エンド/後援:ノルウェー大使館 ©Motlys
記事制作/newTOKYO