毎回、約150名の参加を集める国内最大級の旅行イベント「大人の修学旅行」
様々なアイデアで趣向を凝らし友達づくりイベントを企画・運営するチーム「Kathy’s(ケイシーズ)」は、ゲイにかけがえのない出会いを多くもたらしてきた。いつだって笑顔で「誰かの力になりたい」と話す代表のかつやさんは、なぜこのイベントを立ち上げ、ゲイコミュニティに大きく関わろうとするのか? 彼のひととなりとゲイ人生を振り返りながら、イベントを盛り上げようと働く明るい姿勢を伺った。
人生を最大限に謳歌したいと考えた時に、「自分らしく」いられることがどれほど価値があるものなのだろうか。かつやさんは友人を介してゲイコミュニティに飛び込んだことで、人生が大きく変わっていったという。
男性が好きなんだと自覚したのは14歳の時です。
体育教師に惚れ込んでしまい、その先生に会いたいがために学校に通っているような毎日でした。(その先生に褒められたくて体育の授業を頑張っちゃうみたいな!笑)。そんな中学時代を過ごしていたのですが、何となく「自分は他の人と違うのかもしれない」と思っていました。
それから答えの見つからない悶々とした日々を過ごし、自分自身を受け入れられるようになったのは大学4年になってからのことでした。その頃はまだ自分の中での葛藤があって、行き詰まった挙句に、勇気を出して仲の良い友人に話したことで、楽になれたんです。
今でも仲良くしているその友人は僕の誇りで、「今から話すことで、友達として思えないと思われても仕方ないと思う」そう言った僕に、彼は、「お前の人間性で付き合っているのであって、恋愛対象が一般と違うからって、お前がお前じゃなくなるわけじゃない」と言ってくれました。その一言が僕をどれだけ救ってくれたことか。
さらに「俺らは話を聞くことはできるけど、今お前に一番必要なのは、同じ境遇の人に会うこと、友達を作ることだよ」と言って、新宿二丁目にあるイベントを色々調べてくれたんです。あの時はすごく嬉しかったのを覚えています。
それからですね、それをきっかけに勇気を出して新宿二丁目に足を踏み入れて、次第に飲みに出るようになったのは。おかげでたくさんの仲間と交流ができ、自己肯定ができるようになりました。
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「新宿二丁目」という安らぎの場所と裏腹に襲われる孤独感。友人の死で、自分にできることはないかと仲間づくりイベントを始めるようになったというかつやさん。
20歳の時、立て続けに仲良くなったゲイの友達が自殺で命を落としました。今では「鬱」という言葉がありますが、あの頃はそんなのがなくて、誰にも相談できず自分自身で悩みを抱え込むしかなくて。「自分は変態で生きている価値がないんだ」ってひきこもり、次第には薬に手を出してしまっている状態でした。
その友人の死を目の当たりにした時に、僕はたまたま素晴らしい友人と出会え、こうして少しずつ自分らしく生きていられるけど、まだまだ「ひとりじゃない」ってことを心から実感できないでいる多くの仲間がいることにも気づかされました。それで、自分に何かできることはないのかと考えた時に、もしかしたら「人と人を繋ぐ」ことができるんじゃないかって思ったんです。
元々、学生時代から好奇心旺盛でいろんなものに飛びん込んでやってみたり、人と違うことをやるのが好きな人間だったんです。それにとにかく人が好きでしたね。だから大小限らずイベント企画はずっとやってきていたので、それをこの世界でやってみたら、何か変えられるかもしれないとやり始めるきっかけになりました。
最初はテニスのイベントで19人からの小さなスタートでした。それから少しずつですが参加者が増えるようになって、気がつくと今まで知らなかった人たちがひとつの企画っていうのだけで知り合って、新しいコミュニケーションができていってたんです。全国各地から集まった仲間が、イベントが終わる頃には「今度こっちにも遊びに来てくださいよ」とか「対抗戦やりましょうよ」って。
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自分自身や身近な人がまずはハッピーじゃないと周りをハッピーにできない。イベントを盛り上げ、多くの仲間にハッピーを届けるかつやさんの信念は家族へのカミングアウトに現れていた。
2008年の夏に兄に、その秋に両親へカミングアウトしました。兄はすんなり受け入れてくれたのですが、父親にはそれは病気だと言われ、母親には産んでごめんねと言われました。
両親にゲイであることを話したその日、両親が受け入れづらかった報告を兄にしました。兄は「そうなんだ。でも大丈夫だよ。時間が解決してくれるから」と軽く返してきたんです。ですが、兄は次の日に実家にわざわざ行って、両親に「あいつがどんだけ悩んでたのか分からないの?あいつの苦労を分かって発言してほしかった」と言ってくれたんです。
ただその時に両親が兄に話したこともとても胸に沁みました。父親は、家が大変だった時期にアメリカ留学させて苦しかったけど、その分孫の顔を見るのが楽しみで、いきなりあんなことを言われて、受け入れられる方が不思議じゃないかと。母親は、自分たちの方が先に亡くなるのに、あの子はこの先もずっと一人で生きていかなきゃいけないと思ったら、産んでごめんねって言葉しか出てこなかったと。
カミングアウトから2ヶ月後、僕は両親のためにあるイベントを企画しました。ゲイやビアン、ストレートの人たちなど友人を集めて、パーティに両親を呼んだのです。そして、大勢の友人の前で「僕にはこんなにたくさんの仲間がいて、カミングアウトしても離れないで僕の人間性で付き合ってくれているんだよ」と、だから心配しないでほしいと両親に伝えました。
両親に育ててきたことを後悔してほしくなかったし、安心させてあげたかったんです。
僕はそこでさらに「女性と結婚して子供を作って、社会貢献をすることはできないけれど、一生両親を大切にすること」をも誓いました。
「ひとつひとつお世話になったことは忘れないようにしなさい」と言われて育った僕なりの、その時の感謝の仕方だったんです。
さらにこれは後から知ったことなのですが、イベント当日に友人何人かが、両親に手紙を渡してくれていました。自分たちは彼の人柄が好きで一緒にいることと、LGBTを様々な形で繋げようとする姿勢は彼にしかできないことで、十分社会貢献しているんだよって書いてあったんです。
正直大げさにやりすぎてしまった部分もありましたが、両親が喜んでくれたことはとても良かったです。
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イベントを企画し続ける意味とその答え。たった一度の人生だからこそ、楽しく生きていきたいというメッセージの共有を発信する姿。
現在の「大人の修学旅行」はテニスをやっていない人も楽しめる企画ということで、草津温泉旅行から発起しました。最初は一人でやってましたが今は3人のチームで「人と人、笑顔と笑顔を繋げたい、いつまでもワクワクしていたい!」をキーワードにしています。
いつ何が起こるか分からない一度の人生、どうせなら楽しく生きていきたい、さらにその人がその人らしくいきていける社会になれば良いなと、イベントを通して発信していけたらと思っています。
そんな僕たちの思いを、昨年地方から参加された方が代弁してくれるような声をいただきました。最終日の夜の宴会で、軽いノリでイベントの感想を聞いた際に、その方が涙ぐみながらに一生懸命に話してくれました。
「このイベントに参加する前までは、僕は変態だと思っていました。それまでずっと自分の殻に閉じこもって外に出ることができないでいましたし、正直直前までキャンセルしようかも悩みました。僕の地域は、出会い系のアプリを開いても近くの人がすごく遠い場所にしかいなく、気軽に会うことができません。でも、今回このイベントに勇気を出して参加したことでたくさんの友達ができました。ひとりじゃないんだって実際に思うことができて嬉しかったです」と言ってくださいました。
あー、僕たちがやってきたことにはちゃんと意味があったんだなって。リアルなコミュニケーションがどれほど大切なのかを知ってもらえることで、20歳の時に亡くなった友人たちが、今天国からこれを見てたら「かつや、いろんな人の手助けをしてくれていて意味あることをやってるじゃん」って思ってもらえてるのかなって。
だから、正直、苦労とか心が折れそうになることもたくさんあるけれど、参加してくれた方々が一番喜んでくれて、次はどんなことをするんですか?参加したいです!って期待してくれることが今の続ける糧になっているんです。
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今年秋に開催されるイベントは日本を飛び出して台湾へ!絆は国内だけでなく、世界どこにでも繋がりを広げれることを届けたいと願う。
アジア初の同性婚実現国だけでなく親日家が多い台湾は、日本人ゲイが旅行に行く人気国のひとつ。さらにゲイもビアンも仲が良い印象があって、日本でもそういう交流が盛んになったらと思って企画しました。
それにただ単に楽しいで終わるだけでなく、台湾のイベントチームの方々と一緒に協力することで国を超えて友達づくりができることにも着目しました。
友達ができれば互いの国で何か災害があった時でも共に心配しあえるし、交流を持つことで国間を超えた人間関係の構築もできるんじゃないかと思っています。すごく平和の原点のような形ですが、とても大切なことだったりします。
なので、今回のイベントでは、スポーツ交流など素直に楽しめるもの以外にも、スピーチパーティがあって、それぞれの国の参加者がどういうことを思っているのかを、しっかり真面目に発表をする場を設けました。
「その人がその人らしく生きていける社会」
今は昔に比べれば多少生きやすくはなってきたと思いますが、そうは言っても100%ではありません。地方ではまだまだ生きづらさを感じる場面は多々あるし、自分から出ていかないといけない大きなハードルは残っています。
だからこそ、僕はイベントに参加しやすい雰囲気づくりを心がけてやっていくと共に、誰もが楽しんでもらえる「友達づくりイベント」をこれからも手がけていきたいと思っています。
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イベント:大人の修学旅行2019 in 台湾
開催日時:2019年11月2日(土)~11月4日(月・祝)
開催目的:日本と台湾の仲間づくり・交流
運営団体:イベントチームKathy’s(かつやさん・あゆむさん・ゆずりはさん)
参加方法:公式サイトの「イベント参加フォーム」よりお申し込みいただけます。
※イベント参加には費用がかかります。詳細は公式サイトをご覧ください。
https://kathys.jp
Twitter@otonashugaku1
プロフィール/イベントチームKathy’s かつやさん(校長)
高校時代にアメリカ留学を経験し、大学時代にタイ語を独学でマスター。現在はトリリンガルなスペックを活かし、日本国内だけでなく21の国で取引を取り扱う総合貿易商社を経営。また、内閣府主催の国家プログラムに日本青年代表として乗船するなど、グローバルな活動実績から全国各地での講演にも注力。自ら主催のイベント活動は20代から多く手がけ、LGBT向けに「山中湖テニス合宿」「大人の修学旅行」を主軸に企画・運営。
記事作成・インタビュー / 村上ひろし(newTOKYO)
写真 / 新井雄大