日本最大級の不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」を運営する株式会社LIFULLが、あらゆる人が自分らしく生きられる社会を目指して5月19日に公開したドキュメンタリーフィルム「うちのはなし」は、多様な4組の家族のあり方を追ったもの。そのうちの1組として出演した、同性カップルの大輔さんと健太さん。
二人は2022年4月13日から「北区パートナーシップ宣誓制度」を利用しているものの法的効力がないゆえ、制度の恩恵を受けている実感はないに等しいそうだ。今年11月からは「東京都パートナシップ宣誓制度」の運営が始まるが、現状、北区が定める制度を利用する当事者として、今回彼らのリアルな声を聞かせてもらった。
ーー家族の証となる、何かが欲しくて。一方で感じる、パートナーシップ宣誓制度への課題。
健太さん:大輔と出会うまではパートナーシップ宣誓制度を利用するとは全く思ってなかったし、むしろ自分には関係のないことだと思っていました。
ただ、出会った時まだ若くて未熟だった僕のことを見放さず、楽しい時も辛い時も隣にいて支えてくれる大輔の優しさを実感して、この人とならずっと一緒にいたいと思い、パートナーシップ制度の話をしてみたんです。
大輔さん:……とは言っても、付き合いたての頃は色々腹が立つこともあったし、大きなケンカをすることも多々ありましたよ(笑)。
それでも、ずっと一緒に居る時間が多くなるに連れて考え方も変わってきて、少し恥ずかしいですけど、愛が深まったというか。話し合った末、パートナーシップ宣誓をしました。制度を利用する一番の理由としては、二人の関係性を目に見える形で証明できる、何かが欲しかったから。心の安定という点で、日本では同性婚ができないのでパートナーシップ制度を選択したという感覚です。
大輔さん:北区のパートナーシップ宣誓制度は法的な関係を構築するものではない(※公正証書の作成については別途、同区「にじいろ法律相談」で無料相談可能、費用は有料)ので、カードを持っているからと言って、制度や保証を受けられるというのはほとんどありません。
なので仮に、健太と僕のどちらかに不幸な事故などがあってICUに緊急入院、あるいは手術をするとなった場合でも公的に家族として認められる効力はないため、面会できるか否かは病院側に委ねられると言うのが現状です。
健太さん:日常的なケースで言えば、つい最近引っ越しをしたんですけどパートナーシップ宣誓をしていても、婚姻関係にある夫婦や男女カップルのように二人の収入を合算をして入居審査を通すことが難しい。
断られる理由としては、前例がないためでした。この他にも、例えば区外に引っ越すとなった場合、一度北区のパートナーシップ宣誓制度を解消して、再び引越先の区でパートナーシップ宣誓をしないといけないですし、正直なところ色々と手間が掛かることが多いですよね。
ーー同性愛、異性愛関係なく愛する人同士が、“普通の家族”として受け入れられる東京へ。
大輔さん:世の中の動きとしては、同性婚訴訟(結婚の自由をすべてのひとに訴訟)が起こされていて現状、札幌地裁では同性婚を認めないのは違憲、大阪地裁では合憲と判決が分かれ、議論が活発化されている最中です。
ですが、やはり当事者からしたら「認めてくれてもいいのでは?」という気持ちがあります。同性婚は、おかしなことではありません。
健太さん:同性婚を認めない理由は何か、それを具体的に示して欲しいです。
今回「うちのはなし」に出演している他3組のうち、町内別居という形をとる夫婦がいたんです。「別居」と聞くと冷たいイメージがあるけれど、最後までお二人の関係性を拝見してみて、しっかり心で繋がっていることが伝わってきました。自分とはかけ離れた感覚だなとは感じつつも、実際に当事者の話や暮らしぶりを通して知ることで受け入れられることって、世の中にたくさんあると思うんです。
大輔さん:今年の11月からは東京都全域で東京都パートナーシップ制度の運用が開始されますが、「宣誓」といった形だけではないものになれば、同性婚実現に向けての大きな一歩を実感できるのではないかと思っています。
同性愛者と異性愛者に違いはないこと、ただ愛し合うカップルに違いなく”普通の家族”であるということを知ってもらえたら嬉しいです。
ーー今年11月に運用が始まる東京都パートナーシップ宣誓制度。都によると、本制度は都営住宅への入居のほか、都立病院での面会や手術などの際、同性カップルが夫婦と同じ待遇を受けることのできる仕組みを検討しているとのことだ。
この制度がきっかけとなって全国的なパートナーシップ制度の導入、そして同性婚法制化の追い風になることを心から祈っている。
■うちのはなし/LIFULL
https://media.lifull.com/campaign_2022051908
取材・インタビュー/芳賀たかし
写真/新井雄大
取材協力/株式会社LIFULL PR事務局
記事掲載/newTOKYO