“多様な「個」を祝福する”をコンセプトに、ジェンダーやセクシュアリティに対するラベルイメージを問い直す発信を続けているCreative Studio REINGのコミュニティ「REING Living」。月1回のペースで主催しているイベント「REING GENDER CLUB」はジェンダーイシューについて、ディスカッションするコミュニティイベントだ。
今回で5回目となるイベントテーマは「HIVの常識を更新しよう」。HIVに関する情報を発信し続けるゲスト3人を迎え、HIVの最新情報や現状の理解を深めた。
ーー数値で見るHIVの今。偏見や既存のイメージを刷新するには新しい情報をビジュアル的にどう伝えるかが大切
今回のテーマである「HIVの常識を更新しよう」をもとにゲストとして招かれたのは、HIV陽性者などへのサポートを行う認定NPO法人「ぷれいす東京」の代表・生島嗣さん、コミュニティセンターaktaの創設者でありアーティストのアキラ・ザ・ハスラーさん、そしてフォトグラファーや編集者など多方面に表現の場を広げ、自身もHIV陽性者であることを公言している中里虎鉄さんの3人。
生島さんは「テレビというマスメディアにおいても“エイズウイルス”という誤解を生む言葉で、発信しようとしたテレビ局や新聞社は今もある」と、未だに根強く残るHIV陽性者やAIDS患者への偏見の多くは正しい知識のアップデートが為されていないことに起因すると話した。
これを受けて、アキラさんも「HIV陽性者がカミングアウトできる社会が整備されていないがゆえに、当事者が身の回りで生活しているかもしれないというリアリティが持てていない」と2002年にaktaとぷれいす東京がスタートさせた「Living Together」の活動に触れながら、社会全体のHIVに対する意識の開きや低さを指摘。
現に、HIV陽性者であることを告知される場所の割合データを見てみると、病院(外来)35.1%、病院(入院)22.6%と“半数が医療機関で感染が発覚するというケースがおよそ半数以上を占めている。一方で、保健所20.1%、新宿東口検査・相談室のような常設検査施設での発覚は、6.1%と自分でHIV検査を受けて陽性と気づく人はまだまだ低水準。
アートや映像作品にも造詣が深い虎鉄さんは「HIVを扱うエンタテイメント作品の多くが、エイズが死の病、未知の病と恐れられていた時代を舞台としたものが多い。意識を向けるには、最新のデータや知識を取り入れた現代を舞台とした作品も必要になってくる」と、受動的に知識を得られるエンタテイメント作品に期待を寄せた。
ーーその後、設けられた参加者からの質疑応答の時間では、個人レベルでのHIVに対する疑問や経験談をもとにさらに理解を深めた。現在は、例えHIV陽性と診断された場合でも、その段階で適切な治療を継続すれば、体内のHIVウイルスが検出できないほど減少し、感染させることがないU=U(検出限界以下=うつらない)の状態を維持できる。早期発見、治療継続で感染なし。何よりもまず、この事実を社会全体へ浸透させることが偏見や差別を減らすための大きなミッションとなりそうだ。
REING GENDER CLUBは毎月、ジェンダーやセクシュアリティをテーマとしてオンラインで開催中。気になる人はぜひ、チェックしてみて。
◆ REING GENDER CLUB
社会的なラベルイメージを問い直し自分らしさを紡ぐアイデアを発信するREING が、毎回テーマに沿ったゲストを招き、ジェンダーイシューを中心にディスカッションするコミュニティイベント。メディアにおけるトランスジェンダーの表現や、夜の世界のアクティビズムなどジェンダーイシューについての理解を深める場を提供している。
Instagram@reing.living
素材提供/REING
記事制作/newTOKYO
※AIDSはウイルスではなく、HIVウイルスに感染しHIV感染症となった陽性者が、その後病気を発症した状態のことを指します。