アンダーウェアブランド「W-MAGIC」デザイナー・五十嵐LINDA渉。 ボーダレスな継ぎ目のない世界を目指して。

常にボーダレスでカワイイ世界観を手がけるデザイナー・五十嵐LINDA渉さん。
男らしさ、女らしさにこだわらない「自分らしさ」を追求したスタイルは多方面で指示を受け、昨今ではLGBT活動にも力を注ぐ。
そんなLINDAさんが今年「RASHIKU YOURSELF」をコンセプトとしたアンダーウェアブランド「W-MAGIC」を立ち上げ、下着から世界をひとつに繋げたいメッセージを発信。
LINDAさんってどんな人? 彼自身の「らしさ」の秘訣とブランドに込めた想いを伺った。

心のどこかではそうなのかも?と思っていた思春期時代。彼女の一言から、ゲイである自分で生きようと決意。

ゲイかなと気づきはじめたのは15歳くらいの頃です。
ただ、その当時は彼女もいて、19歳くらいまで付き合っていたんです。仲良し親友みたいな感じで、自然と自分の好きな男性のタイプの話しとかもしていたんですよ。それである時「渉ってゲイでしょ?」ってふいに聞かれ、私も自然と「やっぱりそう思う?」ってなって。

この出来事をきっかけに、明確にゲイであるのを自覚したのと同時に、お互いの将来を応援するため、別れる道を選びました。
母親にもそのタイミングでカミングアウトをし、それなりにショックはあったようですが…今では受け入れてもらっています。

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3足の草鞋を履いて走り続けた日々。波乱万丈な道のりで手にしたものと失ったもの。

いつか自分のオリジナルなブランドを発表したい!という夢がありました。
それで、高校卒業後にファッションの勉強をするために専門学校に通い、思い切って24歳でドレスブランドを立ち上げ独立しました。

イブニングドレスを制作していたのですが、なかなか売れず、失敗の連続でした。そこで、当時住んでいた横浜エリアのホテルへ営業をかけ、館内にあるショーウインドウに飾らせていただいたんです。それでそれを偶然見てくださった芸能事務所の方が気に入ってくれて、モデルの衣装として起用していただく機会をいただきました。

あの頃は嬉しくて衣装作りに没頭してはスタイリングしての繰り返し。
同時にドラァグクイーンさんの衣装を手がけたり、自分自身もドラァグクイーンの肩書きでステージに立つようにもなったりと3足の草鞋で目まぐるしい毎日でした。

そんなある日、大事件が起きたんです。家に帰ったら、火事になっていて…。ビックリしましたよ。
生地や衣装、それにミシンなど仕事道具はすべて燃えてしまって、残ったのは財布とパソコンだけ。

そうして全て仕事も失ってしまった時、自分にできることと言えば、イラストを描くことだけでした。ただただ一生懸命、食いつないでいくために無我夢中で小さい仕事から何でも引き受けました。

そんな中で運命を変えたのが、たまたま引き受けた化粧品のパッケージデザインの依頼だったんです。その商品がヒットしたことで、様々な仕事への広がりをもたらしてくれました。
百貨店のショーウインドウ制作や空間芸術など、これまでの仕事の幅を超えたアーティスティックな活動をするようになり、現在はグラフィックもファッションも、空間も扱うアートディレクターというお仕事に就かせていただいています。

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LGBTに向けたファッション展開。「W-MAGIC」が掲げたメッセージ性。

長年描いていた夢のひとつに、LGBTの方々が気軽に着ることのできるブランド展開がありました。

自分自身もそうなのですが、セクシュアリティに素直になって、着たことでハッピーになれるようなファッションへの憧れ、そしてブランドが育つにつれて当事者たちが集い一緒に成長できるような媒体が欲しいと強く思うようになったんです。

それで仕事も定着した今、様々な人たちとのご縁もあって、「W-MAGIC」というLGBTに向けたファッションブランドを立ち上げさせていただきました。

商品には、それぞれセクシュアリティのチェックボックスを設け、様々な人が着用できるようにしています。また、トランスジェンダーの方たちが下着選びに困っているということを聞いたこともあり、パターンはシームレスを採用し、ジェンダーレスで着用できるものを目指しました。

正直、どんなセクシュアリティの人たちでも着れるデザインに試行錯誤する場面はあるのですが、私の思いが少しでもこのブランドから皆さんに届き、ボーダレスな継ぎ目のない世界を目指していけたらと思っています。

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プロフィール / 五十嵐LINDA渉(TWIN PLANET所属)
空間演出、グラフィック、ファッションまで、幅広いジャンルでキュート&モードなクリエイティビティを発揮するアートディレクター。SNSネイティブなジェネレーションと相性が良く、常にボーダレスな活動で多くの著名人やアーティストなど多方面から支持を受ける。「マイナビpresents 第28回東京ガールズコレクション2019SPRING/SUMMER」や「SHIBUYA109」のビジュアルデザインなども手がける。
Instagram @watarulindaigarashi
https://ameblo.jp/wataru-linda

W-MAGIC
https://www.wmagic.jp

記事作成/村上ひろし(newTOKYO)
インタビュー・撮影/新井雄大