映画ライターのよしひろまさみちが、
今だからこそ観て欲しい映画をご紹介するコラム
「まくのうちぃシネマ」第58回目
アメリカ発のプライド月間、6月! ということで、今回はハリウッドのクィア映画新作。し・か・も、下ネタ上等なぶっ飛びロード・ムービー『ドライブアウェイ・ドールズ』。20世紀末を舞台にしたレズビアン2人のコメディでーす。控えめに言って最高。
ヤリ○ンのジェイミーとカタブツのマリアンが、息抜き旅行でレンタカーを借りてフロリダへ。その車を次の借り主に届けるというていで安く貸してもらったら(ドライブアウェイ)、トランクには謎のスーツケース。そのスーツケースはギャングの持ち物で……っていう、それほど珍しくない物語。なのにおもろいのよ。それは、レズビアンの2人のキャラ設定のおかげ。凸凹コンビのドライブ旅行っていうだけでも、コメディ要素は完璧なんだけど、問題はスーツケースの中身。
ネタバレになるので観てからのお楽しみではあるものの、これがとんでもなくアホなもの。しかもこれを巡って、2人の下ネタが爆発するんです。そんなもんのために人殺す!? と、ツッコミ入れてね〜(ちなみに最初に殺されるのは、今飛ぶ鳥落とす勢いで人気上昇中のペドロ・パスカル。この無駄遣いもポイント)。
人の命に代えてでも守り抜かないといけないものの正体と理由が、まじでくだらない。ところがね、これをくだらないと思えない人がいるんですよ。それは……古い価値観の男。しかも、90年代末っていう時代設定もそこで生きてくるという仕掛けで、この物語に笑うか笑わないかで自分の価値観のリトマス試験紙になるという。すげーわ、イーサン・コーエン。てっきりマッチョな映画しか作らないと思っていたのに。
そこで重要なのが、イーサンのパートナーで本作のプロデューサーのトリシア・クック。彼女、自分がクィアであることを公言しているんですね。クィア映画で観たことがない楽しいものを作りたい、ということがきっかけで生まれたのが本作ってわけ。正直、最初に観たときは「これ、当事者からクレーム出るんでは……」と不安だったんですが、試写をご覧いただいたビアンさんからのご感想は「90年代舞台でマイノリティが勝つストーリーで最高に面白い」とのこと。ホッ。
■ドライブアウェイ・ドールズ
監督:イーサン・コーエン
出演:マーガレット・クアリー、ジェラルディン・ヴィスワナサン、ペドロ・パスカル、コールマン・ドミンゴ、マット・デイモン、マイリー・サイラス ほか
公開:現在、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー中
文/よしひろまさみち X@hannysroom
イラスト/野原くろ X@nohara96
記事制作/newTOKYO