自分探しの先に。セックスワーカー映画「SEBASTIAN」にみる揺れ動く心象風景。

映画ライターのよしひろまさみちが、
今だからこそ観て欲しい映像作品をご紹介するコラム
「まくのうちぃシネマ」第76回目


今回はドンズバでゲイ映画。しかもセックスワーク……そうです、ウリセンの話です。

映画『SEBASTIAN セバスチャン』は、ロンドンを舞台に、将来を嘱望された作家の卵マックスは小説家デビューとなる作品のリサーチを考えます。そこで彼はセバスチャンと名前を変えて男性相手のセックスワークを開始。未知の世界に足を踏み入れて、妙な心地よさを感じつつも、出版社からはめっちゃプレッシャーをかけられ……すると、次第にマックスとセバスチャンの境界線が曖昧になっていって……っていうお話。ね、ドンズバでゲイ映画でしょ。

Netflixの『10DANCE』を観たときも、『国宝』の田中泯気分で「んまぁ、きれいなお顔だこと。でもあれですよ……」ってセリフを脳内リフレインしていたんですが、この映画もそう。

ルックスがよくて性格も申し分なく、でも自分のアイデンティティが確立していない方ってほんっとーに大変よね。マックスはお顔はもちろんボディなんて「ギリシア彫刻かよ!」って言いたくなるほどパーフェクト。そりゃウリを始めたら、太客がつきますわ。

となると、果たして自分は夢追い人でいいのか、それとも若い今しかできないウリセンをするべきか、って考えますよね(両方やればいいじゃんってツッコミはなしよ)。その揺れる想いを描いて、欧米のゲイの間ではかなり話題になった作品なんです。

いや、これ、半年以上前にあるアメリカン知人に薦められて観たんですが、内容と描写がアレすぎて日本では公開できねーだろーなー、って思ってたんですよ。それがまさかのロードショー! ぜひともスクリーンで。もちろんR18+よ。

SEBASTIAN セバスチャン
監督:ミッコ・マケラ
出演:ルーアリ・モリカ、ヒフトゥ・カセム、ジョナサン・ハイド ほか
配給:リアリーライクフィルムズ
公開:2026年1月9日より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
https://www.reallylikefilms.com/sebastian-film

文/よしひろまさみち Twitter@hannysroom
イラスト/野原くろ Twitter@nohara96


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