感染症と人類が闘う映画「コンテイジョン」。新型コロナウイルスが世界中に猛威をふるう今だからこそ、観て欲しい理由。(その2)

映画ライターのよしひろまさみちの映画レビュー

映画ライターのよしひろまさみちが、今だからこそ観て欲しい映画をご紹介するコラム「まくのうちぃシネマ」。
日本でも新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」が出されました。そんな時にこそ、落ち着いた対応こそ必要だと説いてくれる映画『コンテイジョン』。今回も前回に引き続き観るべきポイントをご紹介していきます。#おうち時間 の有効活用としてぜひ観てほしい作品です。

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映画ライターのよしひろまさみちのコンテンジョンの映画レビューのイラスト

さて、第2弾。『コンテイジョン』を観るべきポイント2つ目です。このところ、さんざんこの作品がネット媒体で取り上げられてますが、どれひとつとして権利元はOK出してませんので、そこも含めてお話ししましょう。
前回申し上げましたポイントはこちら。

1:ウイルスがどうやって感染するか
2:集団パニックが起きるときのきっかけ
3:未知のウイルスがどうやって生まれるか


この2ですが、これが一番厄介です。こういう不測の事態で何が起こるかといえば、集団パニック、集団ヒステリー。直近の身近なところでいえば、薬局やスーパーでマスクなどでゴネまくってる人とか。店員を責めてもどうしようもないことくらいは、落ち着いてみれば明らかですよね。映画の中でも「この未知の病の特効薬はレンギョウだ」と、有名欲高過ぎ自称ジャーナリスト・アランがデマを流し、それが一気に拡散したことで、薬局で暴動が起きるシーンがあります。

人って、あまた流れる情報から、自分にとって有益な情報だけをみてしまう習性があるので、でたらめな情報でもその時に有益だと思ったら信じちゃう。それじゃダメ。しかも、そういう情報の拡散速度はあっという間なので、広めるならば確度の高い情報を選り分けることが必要です。しかも、今を生きる日本ではそれを一度経験して、「デマを拡散すな!」とか「まず疑え」って分かってるはずなんですけどね……2011年に。ただ、広める人の大半は「よかれと思って拡散した」という、人の良心からくることだからさらに厄介なの。だから、この映画の権利元は、この渦中では「パニックを煽る書き方されても困るのよ」ということで、写真の貸し出しとか一切していないの。ごもっともでござんす。

映画ライターのよしひろまさみちのコンテンジョンの映画レビューのイラスト

じゃ、フェイクとリアルをどう見分けるか。2011年よりもネットメディアが発達したおかげで、その検証を媒体側がやってくれるようにもなりました。が、ついリツイートがくせになっている人は、まずは個人で見極めないと。あなたもメディアなんですから。
それにはまず、目に留まった情報の情報源を確認すること。有名人の発言だから、とか、海外の学者が言ってる、とか、そういうのもまずは信じちゃだめ。だって、その人たち、パニックのもとになっていることの専門家じゃないでしょ? ツイートでもネットのニュースメディアでも、正しい情報だったらたどっていけばだいたい分かります。逆にたどっても個人の勝手な発言しか出てこない場合は、ほぼ9割がたフェイク。また、たどった先にあったのがニュースメディアだったとしても、そこの名前を検索してみたら「詐欺(Scam)」という評判が大量に出てきたらフェイクと思っていいでしょう。とにかくまずは落ち着け。甘い情報には嘘がある、と思っていい。

この映画の中では、デマの出元のアランが専門知識ゼロで実データに基づかず、いかに勝手なことを言うか、ということが最初から描かれてます。彼は、香港で発生したとおぼしき謎の感染症にかかったであろう(推測だらけ)、日本のバス内で倒れた男の動画を新聞社に持ちこみます。その動画を見つけるのが速かった、というだけで、彼は何も知識がないわけですね。でも、持論で「謎の病気だ。(日本だから)水俣病か?」などと言います。当然新聞社は突っぱね、アランは独自に動画サイトで持論を展開。のせられた人たちがパニックを起こすという流れです。彼の目的は、自分にパワーがあることを知らしめ人を動かすことと、動画サイトの収益だったというわけ。
フェイクが生まれる構図はこれだけじゃありませんが、まずはこの映画では分かりやすく描かれてますので、学びとってくださいね。そして冷静に。

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映画:コンテイジョン
ストーリー/香港出張からミネアポリスに戻ったベスは、旅先でひいた風邪が悪化し急死。それはただの風邪ではなく、未知のウイルスによる感染症と分かり、CDCが動き始めるのだが……。

監督/スティーブン・ソダーバーグ
出演/マット・デイモン、ジュード・ロウ、ケイト・ウィンスレット、グウィネス・パルトロウ ほか
DVD・Blu-ray販売・発売/ワーナー・ホーム・ビデオ
配信/Netflix、YouTubeムービー、Googleプレイ

文/よしひろまさみち Twitter@hannysroom
イラスト/野原くろ Twitter@nohara96