偏見にさらされた青春時代。戦後初のゲイバーで働き始めた吉野ママの足跡を語る――。
昨年『あいち国際女性映画祭2019』で上映され、コロナ禍の影響で延期になっていた、はるな愛による初監督ドキュメンタリー映画『mama』の劇場公開がいよいよスタート。劇場はもちろん、全国どこでもオンラインでの視聴が可能。
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舞台は名古屋市中川区の架空のバー。店を任されている吉野ママから、若い客が話を聞き出す形での展開。
ものまね、タレント、歌手、女優、実業家、構成作家、レースクイーン、ミス・インターナショナル・クイーン、ベストジーニスト、観光大使…など、様々な才能と経歴を持つ、はるな愛。そのマルチな才能に映画監督が加わって、もはやリアル・キューティーハニー♡と呼びたいくらい。
今作『mama』は、現在89歳という現役最高齢の「伝説のゲイボーイ」吉野ママが立つバーに訪れ、その半生を伺うゲイバー体験型ドキュメンタリー。戦前戦後のゲイの歴史を生き抜いてきた吉野ママが語る歴史には、様々な真実が込められているんです。
若かりし頃の吉野ママ。伝説のゲイボーイと言われるのも納得。今でも通用する時代を超えたイケメン。
90年代のニューハーフショーパブという華やかながらも厳しい世界に身を捧げて生き抜いてきたはるな愛もまた、異なる時代の伝説を目の当たりにしてきた当事者。劇中ではピーター主演の映画『薔薇の葬列』(1969年)をリスペクトした演出を盛り込むなど、はるな愛ならではの感性が光ってます。
ドキュメンタリーだから、もしかしてちょっとお堅い内容なのかな?と思うかもしれませんが、そんなことはございません。「吉野ママ、フェンディ着こなしてるwおっしゃれー」「つらかったこともユーモアにできるパワー、見習いたい!」とほっこり元気を貰えちゃう場面や満載な下ネタなども。
同時上映の、メイキングオブ『mama』では2日間の撮影を通して垣間見えた、吉野寿雄(吉野ママ)の魅力と真実が映し出されています。こちらも必見です。映画は劇場または「CINEMA DISCOVERIES」からオンラインでの視聴も可能。ぜひ、自分に合ったスタイルで後世に残したいメッセージを受け取ってみてください。
――はるな愛さんからのコメント
初めて映画監督をしないか、というお話をいただいた時に正直、私、すごい(監督)したい気持ちが強かったんですけど、本当にできるのかと思いました。今回決められた限りの中で何を題材にと考えた時に、一番身近にいる吉野のママのことを、次の、そしてまたその次の世代へと残したい言葉を映画にしたいと思いました。
吉野のママに出てもらうオファーをしてからいろんなセットなどあらゆるシーンが頭の中に浮かんできてそれからはすごく早かったです。何といってもシンプルに吉野のママの戦前、戦後を生き抜いた初めてのゲイであるママの生き様を、ストレートにお話してるのをお客さんに聞いてもらう、っていう気持ちを大切にしました。
私自身トランスジェンダーで、もちろん今この世の中に生きて不安なこともたくさんあります。でも間違いないのはやっぱり一日一日を楽しく、ポジティブに、自分らしく嘘のない日々を送れること、それが人生に繋がるってことをママに教わったような気がします。ぜひ皆さん、映画『mama』ご覧になってください。
■はるな愛 第一回監督作品『mama』
名古屋シネマスコーレにて連日15時より公開
※UPLINK吉祥寺にて予定されていた公開は現在未定です。詳細は公式ツイッターをご確認ください。「CINEMA DISCOVERIES」からオンライン視聴も可能です。
■ CINEMA DISCOVERIES
■ mama公式ツイッター
■ はるな愛インスタグラム
本編監督/はるな愛
メイキング監督/木全純治
脚本/いとう菜のは 企画・プロデュース/木全純治 プロデューサー/伊藤成人
キャスト/吉野寿雄、田中俊介、ゆしん、たけうち亜美、重富大己、とおやま優子、ナカムラルビイ
上映時間/本編34分(メイキング44分)
製作国/日本 配給/シネマスコーレ
ストーリー/吉野ママこと、伝説のゲイボーイ・吉野寿雄は現在89歳。各界の著名人が訪れた東京・六本木のゲイバーを閉め、今は名古屋・中川運河沿いにあるバーを任されている。そこへママを慕ってトランスジェンダーの亜美とゆしん、俳優の田中俊介が訪れる、ママの戦前、戦後のゲイの歴史を引き出していく。
記事制作/みさおはるき(newTOKYO)