日本社会の多様性を阻むステレオタイプの撲滅を目指す「NIKKEI UNSTEREOTYPE ACTION」の一環として発行された「早く絶版になってほしい #駄言辞典」。
古いステレオタイプにより発せられる「人の心を傷つける言葉」を駄言(だげん)と名付けツイッターなどで募集。集まったおよそ1200の投稿から厳選した400の駄言を「女性らしさ」「キャリア・仕事能力」「生活能力・家事」「子育て」「恋愛・結婚」「男らしさ」といった7つにカテゴリ化し紹介している。
無意識の思い込みをなくし、一人ひとりの自分らしさを尊重する社会に近づけたいという思いが込められた本書の中から、駄言の一例をチェックしていこう。
ーーいつになったら、無くなる?これからの時代を生き抜けそうにない人が言いがちな定番の駄言3選
ーー「へェ…それ彼氏の影響?」…好きなものに女性も男性も関係ないから!
特撮ヒーローが好きな女性の投稿者が、好きなものの話になる度に周りから言われたという駄言。幼少期から男の子と言えば「ミニカー・青・仮面ライダー」、女の子は「シルバニア・ピンク・プリキュア」が好きといった、古いステレオタイプを家族や幼稚園、TVCMなどから植え付けられたまま、その価値観だけに水を与え新しい価値観の芽を育てられない人が言いがち。
彼氏がいる、そして男性が好きという前提のもとで話を振っちゃってるのも今の時代ではちょっとナンセンス。どのように言い換えれば話し相手をジャッジせずに会話が成立するか、今一度考える必要がありそう。
ーー「女の子いたら先方も喜ぶから」…言われた当人は全く嬉しくないけど大丈夫そ?
女の子がいないと喜ばない先方との会食へ参加を促す、女の子の気持ちを全く理解していない上司の駄言。「あなたたちの仕事は、女性を引き連れご機嫌取りで仕事を成約するのではなく、培った営業能力で成約することでは?」と、会ったことのない上司に向かい言い放っている自分を想像して勝手にスカッとさせていただきました。
本書で記されたデータ推測では、未だに女性社員を「職場の華」「男性社員のお嫁さん候補」として考えている企業もあるそう…。
ーー「え?男なのに育休取るの?」…父親なのに子育てを母親だけに押し付けるの?
女性の社会進出が当たり前の時代に生まれ社会人として働いている人も多い中、「男は仕事、女は家事・育児」という固定観念を継承し続けちゃった人の駄言。
愛し合って生まれた子どもへたっぷりの愛情を注ぎたいと思うのは、母親、父親関係なく親であれば当然のこと。0歳から1歳になるまでの大切な時間を共に過ごしたい、そんな会社員以前に人としての幸せを阻むような人が会社にいるのって、生きづらい…。
子育てや家事の大変さを父親が身をもって知ることは、ジェンダーバイアス起因の家庭内トラブルも減るだろうし、社会に生かせる経験もたくさんあるはず!
ーーどんな発言が「駄言」なのか。発言の何が問題なのか。世の中の常識や価値観が時代とともにどう変化しているのかを一人ひとりが知ることで、自分らしさを尊重する社会に近づく。
条件反射的に「気持ち悪っ!」と思わず声が出る駄言もあるが、そんな発言に付箋をしたり(貼り過ぎてすぐ無くなる)、駄言エピソードを仲間内で話し合うきっかけとしても、もってこいの一冊だ。この他にも「駄言」はどうして生まれるのかをテーマに、各分野のキーパーソンへのインタビューなども収録。
会社や学校、家庭といったコミュニティ全体でジェンダーバイアスに対する問題意識の芽を育てる上でも、気付きの多い内容となっているから、ぜひ手にとってみて。
◆ 早く絶版になってほしい #駄言辞典
#駄言辞典サイト
2021年6月10日発売/定価:1540円(税込)
日経xwoman(クロスウーマン)
日経BP公式サイト
イラスト/『早く絶版になってほしい #駄言辞典』より
取材・写真/芳賀たかし
記事制作/newTOKYO