夢見た子どもとの生活。「あなたにはパパが2人いるんだよ」FTMイケメンパパ・マサキさんの思う、多様な家族の在り方。

清潔感のあるショートカットに映える金髪、すらっとしたスタイルに合わせたオシャレなコーデ。イケメンのイメージそのものであろうマサキさんは元女性のFTMでバーの経営者。そして二児のパパでもある。

「まさか自分が理想として思い描いていた、自分の家族を持つ未来が来るなんて考えていもいなかった」と話す彼がトランスジェンダーであると確信したのは、中学生から高校生になるまでの思春期真っ只中。当時、両親に全く受け入れてもらえなかったにも関わらず、潔い性格から「自分の道は自分で切り拓く」と、自分らしく生きるための準備をスタートさせた。
今回はマサキさんの生き方や奥さんとの出会い、子どもに恵まれたことを通して「愛」「家族」の多様なあり方を考える。

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ーー自分に正直に生きてきたマサキさん。一目惚れをしたという奥さんとの出会いによって、幼い頃から抱いていた「自分の家族」を持つ一歩へ。

小学生の頃からなんとなく女性を恋愛対象として見ていることには気づいていましたが、思春期にその違和感が確信に変わりました。自分は男性として女性のことが好きであると。僕自身はすんなり受け入れることができたこともあって、18歳の時、母親にカミングアウトしました。長文のメールを母に送ったのですが、正気ではいられなかったようで…そばにいた兄から「お前は何のメールを送ったんだ!」と怒りの連絡が来ました。

ともあれ母親が受け入れてくれないからといって、自分の道を諦めるという気もなく、ホルモン注射や乳房の切除、性同一性障害の診断書を取りに行ったりと、男性として生きていくための行動をしていきました。それから性別適合手術を受けて戸籍上においても男性として生きていけるようになったのは、10年前の26歳の時。当時は受け入れることが出来なかった母も、今では99.9%受け入れてくれているような気がしています(笑)。

そして僕が中高生の時に夢見ていた「自分の家族」を持って幸せな毎日を送れているのは、今の奥さんとの出会いが全て。当時、女性との出会いを主とした新宿二丁目のバーで働いていたのですが、たまたまFTMスタッフだけが接客する日に、今の奥さんが来店したんです。一目惚れでしたね。初めて新宿二丁目に来たという話を聞き「女の子と出会えるお店をもっと紹介してあげる」と、ちゃっかり連絡先を交換しました(笑)。

それから結婚するまで、約4ヶ月。短い期間のように思いますが、過ごした時間の中で彼女の自立した生き方や白黒はっきりした正直な性格にますます心惹かれていきました。付き合って3ヶ月目でプロポーズをしたんですが、「サラリーマンをやめて自営業すること」「僕が名字を変えること」「入籍届を出すと同時に離婚届けにもサインをすること」「エイプリルフールに結婚すること」という4つの項目をクリアしないとできませんと言われて…。一見すると少し変わった条件かもしれませんが、僕からしたらその全てをクリアすれば結婚できる!という目に見える形で結婚の条件を提示されたので良かったです。この4つの条件のおかげか、今も喧嘩することなく日々楽しく過ごせていますしね(笑)。

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ーー「1年間、トライしてみる!」40歳目前にして子どもを産む決断をした妻。人工授精を試みての苦悩。そして7ヶ月目に初めての妊娠、出産。

出会った当初は子どもの存在について深く考えて来なかったのですが、身体的に妊娠・出産が難しくなってくる40歳を目前にした妻から改めて子どもについて話し合おうと切り出してくれて。正直、僕自身も欲しくないわけじゃなかったんです。夢はありつつも自分に子どもができるということに現実味を感じることが出来ず、半ば諦めに近い感覚というか。話し合った末に「1年間だけチャレンジしてみる」と妻が決断をし、僕も全直でサポートすることにしました。

僕たち、夫婦はAID(非配偶者間人工授精)という治療を用いて妊娠を試みました。はじめは「シリンジ法」というセルフで行う人工授精を僕の兄に精子提供をしてもらいつつ7ヶ月間行ったのですが、なかなか難しくて次のステップである病院での人工授精へと段階を移しました。正直少し諦めもあったけれど、本当に幸いなことに切り替えてすぐの1回目で妊娠をしたんです。メールで妊娠したという報告を受け、添付されていたエコー写真を見た時は本当にびっくりして。人工授精の妊娠率は確率的に7パーセントと聞いていたので、驚きとともに嬉しさがこみ上げてきました。

その後、すくすくとお腹の中で赤ちゃんが育ち、陣痛が始まったのが2016年のクリスマスイブ。僕はその時お店に立っていたのですが、急いで準備してタクシーで病院へと向かいました。電話で話をしている時も奥さんの「ギャー!」という悲鳴が聞こえてきたのですが、気分を変えたかったのか「クリスマスのチキン、みんな喜んでた?」「バーの今日の売り上げはどうだったの?」と、あえて普通の会話ばかりきりだしてきていたのを覚えています。結果的に言うと1時間30分ぐらいで生まれて、結婚もそうでしたけど出産もスピード出産でした(笑)。

そして先日、「兄弟を作ってあげたい」という気持ちから第2子を産むために始めた妊活からおよそ2年半、次男が誕生しました。この子を授かるために遠方に転勤していた兄の元へ妻が毎月新幹線で通う生活をしていて、時間も、体力も、お金もかかっていただけに、唯一残っていた卵で妊娠した時は喜びも一塩でした。また高齢出産というもあり、リスクを考えると怖い気持ちもあったので、今、母子ともに容体も安定して自宅で一緒に過ごせていることにホッとしています。実を言うと一時、母子ともに危険な状態に陥ったんです。室内には危険を煽るような電子音がピーピーになっていたし、見るからに先生たちも慌ただしくなった。奥さんも意識が朦朧しているのが見えて…。結果的には緊急帝王切開での出産となり赤ちゃんはすぐにMICU(集中治療室)へ、奥さんも入院することに。あの時は本当に怖かったですね。

そんな次男の出産には長男も立ち会っていたのですが、ナースさんやお医者さんを応援したり、妻の名前を呼んで「頑張れ、頑張れ」と言い続けたりしていました。生まれてきた赤ちゃんに対してもMICUのガラス越しから「可愛い!」と言っていたので、弟であることは認識しているようです。妻と次男が入院してる間だけ、長男との2人きりの生活の中で、率直に一人で子育てをしている親御さんを本当に尊敬しました。炊事や洗濯、お掃除などの家事全般はもちろん、幼稚園や保育園への送り迎え、子どもを寝かしつける…そして休むことなく自分の仕事もこなす人もいる。わずかな期間でしたが、このような生活の中で親への感謝の気持ちを改めて実感しました。

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ーー「僕たちのような家族の在り方を知ってもらって、子どもを持つ可能性がゼロではないことを知ってもらえれば」未来を見つめる夫婦がもたらした愛の形。

まさか自分が男性として結婚、ましてや子どもと生活する未来が待っていたなんて中高の時の自分は想像もしていなかっただろうな…。

今は親としてどう子どもと向き合うかが課題でもあるのですが、今年4歳になる長男には自分と精子提供をしてくれたパパが2人いることは伝えています。そしてパパの性についても。僕自身FTMバーを経営しつつLGBTQの存在や活動を発信している立場にあるし、成長したらインターネットなどで僕の経歴を調べられなくもないからです。記事や本などで色々な事例を調べたのですが、物心ついたあとに自身がAIDで生まれた子どもという真実に直面した時、「親へ裏切られた」とマイナスなイメージを持つ子も少なくないみたいで。だったら自分たちの口から言おうって決めました。

子育てって正解がないし、育児本などを読んでいても「これってどうなの?」と疑問に思うこともたくさんある。親と子の関係がうまく行かないという事情を抱えた一般的なご家庭も少なからずあるわけだし、セクシュアルマイノリティだからうまくいかないというのは理由にはならない。今はただ全力で生きて、全力で愛してあげる、それだけですね。

また僕たちが与えるだけじゃなくて、子どもたちから人として学ぶこともたくさんあるんですよ。子どもを叱る時なんかも、その瞬間に「息子に対して叱ったことを、今の自分はちゃんとできているだろうか?」と。日々の生活の中で「自分はどうか」と振り返る機会は多くなりました。

とにかく、まず子どもたちには健康に育ってもらいたい、願うのはそれだけですね。強いて言うのであればLGBTQ当事者として生きている中で、いろいろな人とのたくさんの出会い、そして多様な愛の形を見てきた僕個人の願いとしては、色々なモノやコトに対して広い心で全て受け止められる人になってくれると嬉しいです。2人の息子にカッコいいと思われるパパであり続けれられるように、今まで以上に頑張って生きていきます。

そして、同じ境遇にある人たちに僕たちのような家族の在り方があるということが届けば良いなと思うし、こういったインタビューや記事を通して家族、子どもを授かる可能性はゼロではないということを伝えていきたいです。現にこうした妊活をはじめとするLGBTQに関連の活動を発信し続けている中で各方面から連絡が来ることが多くなってきているし、僕たちもパワーをもらっているから。

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マサキ
1984年 東京都生まれ。2012年5月、FTMの仲間たちと日本初のFTMが主役となるクラブイベント「GRAMMY TOKYO」を立ち上げ、現在も企画運営を行うと共にDJを務めている。2015年4月に結婚。2016年3月、新宿三丁目にFTMバー「2’s CABIN」をオープン。現在二児のパパとして子育てに奮闘中。

Twitter@GRAMMY_DJMASAKI

記事作成/芳賀たかし(newTOKYO)
撮影/新井雄大 Twitter@you591105

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