農学博士号取得を目指して大学院に通うSho(右)さんと、図書館司書として働く傍ら大学教授を目指し学術論文などの執筆に励むJosko(ヨシコ)(左)さんの恋が400kmの距離を超えて実ったのは、今から二年前のこと。共にドイツに滞在していたことをきっかけにメッセージのやり取りをスタートさせた二人はゆっくりと気持ちを育んでいった。
現在は、鳥取県と神奈川県にそれぞれ拠点を置き、お互いの目標に向かって忙しい日々を送っている。付き合った当初から遠距離恋愛中である今までにインスタグラムへ投稿された写真は600枚以上、どれも微笑ましい日常が伝わってくるものばかりだ。
今回はそんな二人の出会いやお互いのこと、自身がインスタグラムでオープンリーなゲイカップルとして発信する意義について伺った。
――片道400kmの距離を行き来することでゆっくりと愛情を育んだShoさんとJoskoさん。
Josko:初めて出会ったのは二年前。それまでは京都に二年間ほど住んでいたものの、就職運に恵まれなかったことも含め色々な事情を理由にドイツへ帰ることになったんです。傷心の中、インスタグラムを眺めているとShoのプロフィールが目に入ってきて…その瞬間、恋に落ちてしまいました。
Sho:JoskoからDMで「Ich bin(私は)ヨシコ!」と自己紹介のメッセージが届いたんです。その時、僕は研究インターンに参加するためにドイツで初めての海外単身生活を送っていて日々分からないことの連続だったのですが、Joskoが色々と相談に乗ってくれたことで助けられた場面がいくつもあり、メッセージを重ねるうちに会うことに。
Josko:国内とはいえShoは僕の地元・フランクフルトから400kmほど離れたドレスデンに留学中で気軽に会えるような距離ではなかったのですが…思いきって彼の元へ。初めて会った時は天真爛漫で相手を思いやることのできる温厚な人柄、加えて少年のような自由な感覚と遊び心を持つ彼がとても魅力的で、一緒にいると胸の高鳴りが抑まりませんでした(笑)。
Sho:それからは遠距離ではあったものの、頻繫にお互いの家を行き来する関係になり、次第に僕もJoskoの優しさやユーモアのセンスに惹かれ交際がスタート。ただ、彼がドイツへ帰国した二ヶ月後に就職が決まり、再び日本へと戻ってしまったんです。
Josko:日本へ戻れるという喜びの反面、Shoと離れ離れになることが本当に寂しく、当時は様々な感情が入り乱れて大変でした(笑)。
――博士号の取得を目指して、勉学に精進する多忙な日々。そんな中でもお互いに尊敬する点は?
Sho:現在は、農学博士号取得を目指して大学院へ通い、主に農業問題を解決するための研究を行っています。博士号を取得することは決して簡単なことではないので日々忙しくしていますが、将来的には専門性を生かした業界で研究者として活躍できればと思って励んでいます。
Josko:僕は夢の一つである大学教授になるためにドイツ語や日本語、英語、そして大学院までに習得したインドネシア語などの多言語を用いた学術論文の投稿や学会や勉強会での発表に積極的に参加しています。近い将来、博士取得を取得したいので興味のある分野の研究者との交流を行い情報収集に取り組んでいます。
Sho:そういった日々の中で尊敬している点…そうですね。寛容で常に良心に従った行動をするところ。あとは本人の前向きな姿勢と面倒見の良さも一緒にいる心地の良さに繋がっているんじゃないかな。彼ほど僕を理解し、幸せにしてくれる人間は世界中どこを探しても見つからないです。
Josko:たくさんの夢を持っていることです。こう言うと生真面目なイメージを持たれてしまうかもしれないですが、知的でユーモアに溢れていて、日々、色々な話を聞かせてくれるので飽きることがありません。友達、家族、僕に対して最大限の愛情を注ごうと努力してくれる姿は見習おうと思っています。今の幸せがあるのはShoに出会えた良運のおかげだと思ってます。
――「Sho&Josko」としてインスタグラムでオープンに日常を発信するワケと日本の将来に望むこと。
Sho:僕たちのアカウントがLGBTQへの理解や認知の広がりに貢献できていれば嬉しいですが、きっかけは僕たち二人の写真を見て少しでも多くの人が優しい気持ちになったり、ほっこりしてくれたら良いなという思いで始めたんです。
Josko:そうだね。彼の言う通り、インスタグラムはすごくシンプルな考えで、同性であろうが異性であろうが愛は自然に生まれてくる感情だと楽しく伝えられたら良いなと思って投稿しています。LGBTQへの理解と認知を広げていければという気持ちもありますが、それは側面的な考えに近いと思います。
Sho:留学中に滞在したドイツやイタリアでは、ごくごく自然に同性カップルが街中を歩いています。「なぜ、カップルと分かるのか」と思われる人もいると思いますが、単純に異性間のカップル同様、仲睦まじい愛情表現をしているから。オープンな彼ら彼女らを見ても誰もが当たり前という認識でいられるのは、学校教育で全てのセクシュアリティに対しての性教育が行われてるからなんです。
一方、日本の学校教育における性教育は消極的でセクシュアリティをはじめPEP・PrEPはおろか、避妊具の付け方すら知らない若者がSTDやHIVに感染する事例が増えていると聞きます。こうした現状から目を逸らさずに直視した上で早急に手立てを打つことで、LGBTに限らず包括的に「性」について知る機会を増やす、あるいは濃度を高くすることで、正しい理解に繋がっていくのではないでしょうか。同性婚については日本でも2021年3月に札幌地裁で判決が出ます。まずは同性婚実現に向けた第一歩を踏み出せることを強く望んでいますね。
Josko:日本人であるShoの生まれた日本に望むことは、やはり同性結婚が認定されることへの推進運動の強化ですかね。LGBTQに限ったことではないですが、義務教育課程における性教育の改革は一刻も早く進めるべきだと思っていて。正しい性の知識を育む環境を整備することで、次世代を担う子どもたちがより自分らしく生きられる時代に一歩近づくと思っています。そのような時代に進む一端として、僕たちのインスタグラムが一人でも多くの方に届くように、これからも発信し続けていきたいです。
■ プロフィール
名前:Sho/年齢:27歳/誕生日:8月10日/職業:学生/身長:163cm/体重:68kg/出身地:兵庫県/最近ハマっていること:野生植物の採取とその利用/恋人の好きなパーツ:くりくりの目ともじゃもじゃの髭/恋人といて一番幸せを感じる瞬間:外出して冷えた手をしっかり握って温めてくれる時
名前:Josko/年齢:28歳/誕生日:1月22日/職業:図書館の司書/身長:174cm/体重:96kg/出身地:ドイツ/最近ハマっていること:お香作り・漢方・修験道/恋人の好きなパーツ:ふわふわの髪とほっぺた/恋人といて一番幸せを感じる瞬間:サムギョプサルを食べに行く時
■ Instagram@Shoandjosko
■ Instagram@Josko
インタビュー・取材/芳賀たかし
写真提供/Sho&Josko
記事制作/newTOKYO